「ムチャしやがって」
スッと木場谷に差し伸べられた手。
その手と共に添えられたディーノの言葉は、咎めるような口調であったが、どこか心配と優しさを含んでいた。まるで兄が弟を諭すような、それ。
木場谷はフッと目を細めて笑い、その手を握り立ち上がった。
「これくらいやらないと、意味ないからね」
「お前はいつも限度がないんだよ」
「それが強くなるって事でしょ。…雲雀君はちゃんと解ってたみたいだけどね」
「なにっ!?」
ギクリとして雲雀を見れば、その腕に幸子を抱いたまま、こちらを睨んでいるではないか。ディーノは苦笑いを返すのが精一杯だった。
「恭弥、お前気づいてたのかよ!?」
「当然だよ。木場谷氷里が応接室で幻術を使った事を、あなたも赤ん坊も黙認した。それがあなた達が共謀者だという証」
そう、雲雀は最初から気づいていた。
一連の事柄が全てリボーンとディーノが仕組んだものであると。
「リボーン君とディーノさんが木場谷君の共謀者!?」
「つまり、今回の件は全部リボーンが指示したって事さ」
頭をカリカリと掻いたディーノが自白する。
「リ、リボーンが…!? なんでだよ!? 何の為にこんな…!?」
「その理由は木梨さんなら解ってるんじゃないかな」
「幸子さんが!?」
「へっ？わ、私っ!?」
突然木場谷に名指されて、幸子は考える。そして行き当たったのは美術室での木場谷の台詞。
「ボンゴレの…為？」
幸子が答えると、木場谷は満足そうに頷いて、沢田を振り返る。
「沢田君。君のカテキョーは、君を立派なボンゴレ10代目に育て上げる為に、守護者の底上げを計りたいと思ったみたいだよ」
「守護者の底上げ…？」
それこそが今回の専任試験の核であり全貌だった。
ボンゴレ最強守護者である雲の守護者 雲雀恭弥を挑発し、強者と競わせる事により、その潜在能力を更に引き出し守護者自体の能力の底上げを計る。
Ｄ・スペードやシモンファミリーとの戦いを通し、ボンゴレ10代目ファミリー強化を狙ったリボーンの策だったのだ。