胸を押さえ苦しそうに呻く沢田の側で、古里の姿がゆっくりと変わっていく。
「危なかった…実に危ない所でした…。あと少しで、取り返しのつかない所だった」
デイモンが顔を上げ、その瞳に倒れた沢田を写す。
「私をここまで疲弊させ追い詰めるとは……許しませんよ、沢田綱吉」
ゆっくりと沢田に近づいていったデイモンが、その漆黒の髪を沢田の首に巻き付けた。
「恭…弥…っ！」
先程の鈍い音、それにデイモンの声に不安を覚えたのだろう。幸子の雲雀を呼ぶ声が僅かに震えていた。
「幸子は僕の事だけ考えていればいい」
耳許で囁くと、まるで幸子の耳を塞ぐように彼女の後頭部に手を回して己の胸に強く抱いた。
もう片方の手は幸子の背中に回し、更に密着するように抱き寄せる。
これからどんな光景が繰り広げられるのか、雲雀には検討がついていた。そんな凄惨な場面を幸子に見せたくはない。
「砕けろ!!」
デイモンの怒号と共に、その拳が無防備な沢田に炸裂する。
ベキャバキャとイヤな音が辺りに響き、沢田の全身の骨が粉々になっていった。
「っ！」
そのイヤな音は幸子の耳にもしっかりと届いていた。思わず身を竦めて目を瞑る。
雲雀がこうして守ってくれていなければ、あまりにも酷いその光景に耐えられなかったかもしれない。
幸子の中で、沢田を心配する気持ち、何も出来ない自分の無力さ、そしてデイモンに対する恐怖が渦巻いていた。そんな幸子を抱きしめながら、雲雀はその光景から目を逸らさずにいた。
沢田綱吉が…壊れていく…。
震える拳を握りしめ、今にも沢田の救出に向かいそうになったリボーンを復讐者が制した。
その行動には、デイモンとは関わりあいのない理由が存在するという。沢田を散々に痛め付けたデイモンは、死神を思わせる鎌を取り出した。
鎌で狩るは…沢田の命。
「ゆっくりご覧になって下さい。哀れな10代目ボス候補 沢田綱吉の最期を」
それを止めようとした古里を蹴り上げ、デイモンは残忍な表情を顔に貼り付けたまま、鎌を振り上げた。
「終わらせよう」