脱出
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D・スペードの姿が消えた異空間には、雲雀と幸子だけが取り残された。
あれだけ歪んだ愛で執着していた幸子を、憎むべき相手である雲雀と共に置いていったという事は、デイモンにとってもしかしたら生死に関わるかもしれない程の出来事が外の世界で起こったのだろう。
沢田、だろうか…?
幸子を抱きしめながら雲雀はそんな事を考えていた。
「っ、恭弥……っ」
当の幸子は雲雀の名を呼ぶだけで言葉にこそしないが、心には相当の深手を負っているように見えた。
甘えるように、ぎゅっと雲雀にすがりついたままでいる事が何よりの証拠。
離れたくない……
抱きしめた腕に伝わってくる幸子の身体の微かな震えがそう物語っていた。
雲雀自身、この愛しい温もりを手離す事が名残惜しくて堪らない。
しかし まだ終わりではないのだ。
雲雀は抱擁を解くと、その青みがかった灰色の目で幸子を見た。
「脱出するよ」
「……はい」
幸子の瞳には怯えが見てとれたが、それでもしっかりと頷いた。
「下がってて」
雲雀は幸子を後ろに下がらせると、トンファーを構えた。
ふと、己の体力が回復していることに気づく。
それにあれだけ乱れていた呼吸も調っていた。
回復力は早い方であると自負するが、たった数分でここまで回復するとは。
眠った訳でも食事をした訳でもない。幸子と触れあっただけの僅かな時間。雲雀にとってそれは、とても大切な…一番の休息であると認めざるを得ない。
そんな思考に至った自分に驚き、思わず雲雀は自嘲気味な笑みを浮かべた。しかしそんな思考も悪くない。
雲雀はトンファーを構えた。
ボウ…と紫の炎がトンファーを包みこむ。
雲雀らしい生命力に溢れた大きな紫の炎が、静かに燃える藍色へと変わった。
「いくよ」
トンファーが空間を切り裂いた。
あれだけ歪んだ愛で執着していた幸子を、憎むべき相手である雲雀と共に置いていったという事は、デイモンにとってもしかしたら生死に関わるかもしれない程の出来事が外の世界で起こったのだろう。
沢田、だろうか…?
幸子を抱きしめながら雲雀はそんな事を考えていた。
「っ、恭弥……っ」
当の幸子は雲雀の名を呼ぶだけで言葉にこそしないが、心には相当の深手を負っているように見えた。
甘えるように、ぎゅっと雲雀にすがりついたままでいる事が何よりの証拠。
離れたくない……
抱きしめた腕に伝わってくる幸子の身体の微かな震えがそう物語っていた。
雲雀自身、この愛しい温もりを手離す事が名残惜しくて堪らない。
しかし まだ終わりではないのだ。
雲雀は抱擁を解くと、その青みがかった灰色の目で幸子を見た。
「脱出するよ」
「……はい」
幸子の瞳には怯えが見てとれたが、それでもしっかりと頷いた。
「下がってて」
雲雀は幸子を後ろに下がらせると、トンファーを構えた。
ふと、己の体力が回復していることに気づく。
それにあれだけ乱れていた呼吸も調っていた。
回復力は早い方であると自負するが、たった数分でここまで回復するとは。
眠った訳でも食事をした訳でもない。幸子と触れあっただけの僅かな時間。雲雀にとってそれは、とても大切な…一番の休息であると認めざるを得ない。
そんな思考に至った自分に驚き、思わず雲雀は自嘲気味な笑みを浮かべた。しかしそんな思考も悪くない。
雲雀はトンファーを構えた。
ボウ…と紫の炎がトンファーを包みこむ。
雲雀らしい生命力に溢れた大きな紫の炎が、静かに燃える藍色へと変わった。
「いくよ」
トンファーが空間を切り裂いた。