「恭弥ぁっ！」
幸子は叫ぶように雲雀を呼ぶ。
デイモンの極限サンシャインカウンターをかわし、異空間に閉じ込められた雲雀が無事であった事に安堵すると共に、どんな時でも、どこにいても自分の許へ駆けつけてくれる雲雀に胸が締め付けられた。
雲雀の青灰色の瞳が優しく幸子を映した。しかしそれは一瞬の事。すぐに鋭いまなざしをデイモンに向ける。
「待たせたね」
「雲雀恭弥…」
憎々しげに吐き捨てると、デイモンは雲雀から隠すように幸子を己の背後に下がらせた。
「まさか私の創り出した異空間を脱出してくるとは、正直驚きましたが……なるほど。そういう事ですか」
チラリと雲雀の両手に目をやる。
「雲の守護者が我が霧の炎をここまで操るとは」
「簡単な事さ。この炎、僕には合わないけどね」
静かに燃えるインディゴの炎が、瞬時に大きく揺らぐ紫の炎へと形を変えた。
トンファーを構える雲雀。
「覚悟はいいかい」
ダッと地を蹴り、跳んだ。
「ヌフフ…そんなに死に急がなくても、どうせあなたは壊れる運命です。雲雀恭弥」
残酷な笑みを浮かべたデイモンも跳んだ。
キイィィン
２人のトンファーがぶつかり合う。そうして激しい攻防が繰り広げられる。
デイモンの攻撃を弾いた雲雀のトンファーが今度はデイモンの腹にヒットした。ゴキッと骨が折れるような鈍い音。
手応えは確かにあった。
しかしデイモンは平然とした様子でニヤリと笑う。
「クリーンヒットと言いたい所ですが……６人に分裂している為、ダメージは６分の１なのです。６人同時に攻撃しなければかすり傷に等しい。ヌフフ…残念でしたね。」
「問題ないな」
しかし雲雀はその表情を変えずに応えた。
「それなら６倍ダメージを与えればいい」
雲雀のまなざしが獲物を仕留める肉食獣の如く光を帯びた。