デイモンと幸子の間に流れる刹那の静寂。その静寂を突き破ったのはデイモン。
「何を言い出すんだい、幸子」
「離して…っ」
幸子はデイモンに取られた手を振りほどこうとする。思わず逃がすまいとデイモンはその腕を強く掴んだ。
「幸子！」
「いやっ…」
目の前にいるのは己の愛する男ではない。
確信した幸子は、雲雀の姿をしたその男に一気に捲し立てた。
「私は恭弥が負ける心配なんてしない。恭弥と恭弥の強さを信じてるから。それは恭弥も知ってる」
「……！」
「だから、そんな事を聞くあなたは恭弥じゃない!!」
一瞬の間。
状況には似つかわしくない笑顔を顔に貼り付けたデイモンは、掴んだ幸子の腕をグイッと己に引き寄せて諭すような声を出した。
「混乱してるんだね、幸子」
「やめて…っ。恭弥の姿で私に近づかないで…！」
これ以上、雲雀を侮辱するのは許せない。
「僕が雲雀恭弥じゃない？……………なぜ 解った」
「!?」
雲雀の姿が大きく歪み、徐々にデイモンの姿へと戻っていく。
「ヌフ。ヌフフ…ヌハハハハッ！大人しく身を委ねていれば良いものを…。やはりマインドコントロールするしか術はないようですね」
「…やっ…」
拒む幸子の顎を再びその手が捕え、視線を合わせられる。
「ヌフフ…今度こそ私のものになりなさい、幸子」
「やだ…っ、恭弥!!」
デイモンが幸子にマインドコントロールをかけようとしたまさにその時。
ピシッ…
異空間に似つかわしくないヒビ割れのような音が聴こえた。
「!!」
「なんです この音は!?」
パリィィン
次いでデイモンの言葉をかき消すように硝子が割れる音が響き、異空間の壁の一部が吹っ飛んだ。
「まさか…!?」
壁が壊れた向こう側から、何者かがゆっくりと歩み出る…。
「さあ、終わりにするよ」
雲雀恭弥が鋭いまなざしでデイモンを見据えた。