一方 雲雀に姿を変えたＤ・スペードは、幸子をその腕に抱き至福の一時を過ごしていた。
「幸子」
呼べば幸子は応える代わりにぎゅっと甘えるようにすがりついてくる。
ヌフフフ…幸子が自らの意志で私に抱かれる様を、しかと己が目に焼き付けるがいい 雲雀恭弥。
デイモンは優越感に口許を歪ませた。
「恭弥」
ふと顔を上げた幸子がおもむろにデイモンの頬に触れた。ドクン―‥と一瞬、デイモンの心臓が跳ね上がる。
その動揺を隠しながら彼は幸子に応えた。
「なんだい？」
「傷…大丈夫？」
幸子の指先に触れたのは、すべすべとしたデイモンの頬。
「あ、あれ…っ？」
雲のボンゴレギアがコピーされた時、デイモンのトンファーから伸びたチェーンが、確かに雲雀の頬を切り裂いたハズだ。
なぜだろう。
心が…ざわつく…。
「……」
「どうしたんだい、幸子？」
「ううん…なんでもない。恭弥が怪我してないか気になってたから…」
その言葉に 雲雀の姿を借りたデイモンは微笑みを浮かべ、己の頬に触れている幸子の指先を取り、ちゅっ…とキスを落とした。
「心配だったかい？僕が負けてしまわないか」
「!?」
大きく目を見開いた幸子が、その唇をワナワナと震わせた。
「幸子？」
デイモンは幸子の様子がおかしい事に気づく。
「……ない…」
「？」
「…恭弥じゃ…ない…」
先程と違い、彼女の目に浮かんでいるのは……恐怖の…色……。
「あなたは…誰…？」