古城を脱し沢田たちと共にデイモンの待つ古びた建物に駆け付けてみると、そこには六道骸の姿があった。
骸を見た雲雀の目が大きく開かれる。しかしそれは雲雀の隣にいた幸子以外は気づかない程一瞬の事で、すぐに雲雀はいつもの涼しげな表情に戻っていた。
「骸!! クロームの体に憑依してるんだな!!」
自分を認めて思わず声を上げた沢田を見やると、骸は「おやおや。愚かなマフィアがゾロゾロと」と不敵な笑みを浮かべた。
「あっ、加藤ジュリーが倒れてる!!」
「ジュリー！」
再び声を上げた沢田と、ジュリーに駆け寄る古里。
「どーやら守護者同士の戦いに勝利したみてーだな」
「当然です」
山本の肩の上からリボーンが状況を把握すると、骸は至極当然のように笑んで頷いた。場に衝撃が走る。
「で…でもよっ。加藤ジュリーがＤ・スペードだろ？」
「ってことは」
獄寺の言葉の先を察した沢田が、母譲りの澄んだ大きな瞳を更に大きく開きながら続けた。
「Ｄ・スペードを…倒しちゃったの？」
「!?」
その結論を聞いた瞬間、幸子の中に違和感が広がった。
嬉しいはずなのに…なのにこの胸に去来するもの。
あのＤ・スペードが、こんなに簡単に倒されてしまうのだろうか…？
何度か会ってＤ・スペードという人を知った。その限りで言うならば、骸の勝利というこの結果さえ、彼の策であるように思えてしまう。
それともこれは、自分自身が無意識に感じてしまっているＤ・スペードへの脅威の表れなのだろうか。
自分の考えに没頭していた幸子の意識は、隣に立っていた雲雀が骸に向かってトンファーを投げ付けた事により引き戻された。
ガキッ
骸が三叉槍でそれを弾くと、トンファーはカラカラと弧を描いて床に転がった。
「恭弥!?」
「咬み殺そうと思ったが、それだけ体力を使い果たしていては、勝負にならないな」
「ヒバリさん!!」
「あいつ、あらゆる奴にケンカ売ってやがる!!」
この状況での沢田と獄寺のツッコミは適切と言える。