霧の狂宴
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夜が深さを増した。
焚き火をおこした雲雀は、立ち上がって河原のある方を見つめた。暖色系の灯がそんな雲雀の黒髪を柔らかく照らしている。
この時期の水はまだまだ冷たいはず。これは幸子が戻って来た時に寒くないようにという雲雀の配慮なのだ。
もちろんそんな事を告げて幸子に恩をきせるつもりもないが。
まあ、寒さで震えていたら、さっきのように自分が幸子の身体を温めてやればいい。
それにしても…。
「遅い」
誰に言うでもなく雲雀が呟いた。もう10分は経過しているはずだ。
元来、人に待たされるなど言語道断な雲雀である。そのイライラは頂点に達していた。
いやイライラとは少し違うか…。焦り、という方が適切かもしれない。こんな状況でなければもう少し気長に待っていられただろう。
「僕を待たせるなんて、いい度胸」
さっと学ランを翻すと、雲雀は足早に河原へと向かった。
川のせせらぎを頼りに林を抜けると、あっという間に河原へ到着した。
そこに幸子の姿はなかった。
「幸子」
呼んでみるが応える声はなく――‥
代わりに暗闇の中に浮かぶ桃色が視界に入る。
「ん…?」
近寄って拾い上げてみるとそれはハンカチだった。しっとりと濡れたこのハンカチには見覚えがある。
紛れもなく幸子のものだ。
しかも濡れている所をみると、間違いなく幸子はここで身体を洗ったようだ。
「………」
雲雀は辺りを見回した。
幸子の気配はない。
まさか川に落ちた…!?
それはない。川と呼ぶにはあまりに浅く、流れもかなり緩やかだ。
デイモンと対峙した時、己も浸ったのだから間違いない。
もう一度辺りを見回した雲雀はそこである異変に気づいた。
「霧?」
前方数百メートルくらいの場所から急に霧が濃くなっている。
空を見上げれば満天の星と孤高の月。そんな中にあってあの霧は異常だ。
「くっ……」
雲雀は奥歯をぎりっと噛み締め、弾かれたように走り出した。いつも涼しげで滅多な事では変わる事のないその表情は、今や完全に焦燥に支配されていた。
例え僅かな時間といえど、なぜ一人にしてしまったのか。
己から離れた幸子に腹が立つ。
幸子を離した己に腹が立つ。
「幸子…!!」
禍々しく立ち込める霧を前方に見据えながら、雲雀が絞るような声を出した。
焚き火をおこした雲雀は、立ち上がって河原のある方を見つめた。暖色系の灯がそんな雲雀の黒髪を柔らかく照らしている。
この時期の水はまだまだ冷たいはず。これは幸子が戻って来た時に寒くないようにという雲雀の配慮なのだ。
もちろんそんな事を告げて幸子に恩をきせるつもりもないが。
まあ、寒さで震えていたら、さっきのように自分が幸子の身体を温めてやればいい。
それにしても…。
「遅い」
誰に言うでもなく雲雀が呟いた。もう10分は経過しているはずだ。
元来、人に待たされるなど言語道断な雲雀である。そのイライラは頂点に達していた。
いやイライラとは少し違うか…。焦り、という方が適切かもしれない。こんな状況でなければもう少し気長に待っていられただろう。
「僕を待たせるなんて、いい度胸」
さっと学ランを翻すと、雲雀は足早に河原へと向かった。
川のせせらぎを頼りに林を抜けると、あっという間に河原へ到着した。
そこに幸子の姿はなかった。
「幸子」
呼んでみるが応える声はなく――‥
代わりに暗闇の中に浮かぶ桃色が視界に入る。
「ん…?」
近寄って拾い上げてみるとそれはハンカチだった。しっとりと濡れたこのハンカチには見覚えがある。
紛れもなく幸子のものだ。
しかも濡れている所をみると、間違いなく幸子はここで身体を洗ったようだ。
「………」
雲雀は辺りを見回した。
幸子の気配はない。
まさか川に落ちた…!?
それはない。川と呼ぶにはあまりに浅く、流れもかなり緩やかだ。
デイモンと対峙した時、己も浸ったのだから間違いない。
もう一度辺りを見回した雲雀はそこである異変に気づいた。
「霧?」
前方数百メートルくらいの場所から急に霧が濃くなっている。
空を見上げれば満天の星と孤高の月。そんな中にあってあの霧は異常だ。
「くっ……」
雲雀は奥歯をぎりっと噛み締め、弾かれたように走り出した。いつも涼しげで滅多な事では変わる事のないその表情は、今や完全に焦燥に支配されていた。
例え僅かな時間といえど、なぜ一人にしてしまったのか。
己から離れた幸子に腹が立つ。
幸子を離した己に腹が立つ。
「幸子…!!」
禍々しく立ち込める霧を前方に見据えながら、雲雀が絞るような声を出した。