「よう、恭弥。調子はどうだ？」
「跳ね馬…」
こちらに気づいた雲雀を見て、ディーノは今の質問が野暮だと悟った。
雲雀の背後には――鋭いトゲを持つ巨大な球体。ディーノはヒューと口笛を吹いた。
「まさか２日で匣をモノにしちまうとはな」
「問題ないな」
「ははっ。相変わらず可愛くねーじゃじゃ馬」
腰に手を充て愉快そうに笑った。
「なるほど。それで幸子は買い物に行った訳か」
「なに？」
幸子の名前を聞いた雲雀の表情が変わった。
「なにって…お前が匣を使いこなせるようになったお祝いに、今日は幸子がご馳走を作るんだろ？」
「違う。幸子が何処に行ったって？」
「だから買い物に……って、おい、恭弥！」
話を聞き終える前に雲雀は走り出していた。嫌な…予感がする。



「買い物に行くのかな？」
急に背後から声をかけられ、幸子の体は一瞬にして硬直した。
忘れかけていた声の主を思い出すより早く、体が反応したのだ。
「……っ」
次に硬直した体が震え出す。
背後からクスッと小さく笑い声が洩れた。
「そんなに怯えないでよ。木梨幸子チャン」
白い悪魔が笑った。