Teardrop
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雲雀は数時間ぶりに幸子のぬくもりを感じながら、その頬を伝う涙をそっと指先で拭ってやった。
「幸子」
「………」
雲雀の呼びかけに幸子は応えることなく、ただ虚ろな目で雲雀の背後に迫るデイモンの姿を捉えていた。
既にデイモンから驚愕の表情は消えており、冷酷な笑みを浮かべて雲雀を見下ろしていた。
「ヌフフ……驚きました。まさか雲の守護者のあなたが霧の結界を突破してくるとは。…しかしリブは私のものだ。返してもらいましょうか」
そう、まだ終わってなどいない。依然として彼女は私の手中にあるのだ。
「リブ…?」
「アラウディといい雲雀恭弥といい、お前はいつも浮雲のようにふわふわと雲の許へ引き寄せられる……」
デイモンは、眉を潜めた雲雀の問いかけを意図的に無視して幸子に手を差し伸べた。
「お前にはお仕置きが必要ですね。来なさい幸子」
「…はい、デイモン様」
デイモンの手を取る為に立ち上がろうとした幸子を阻止するように、雲雀は腕を背に回し後頭部に手を添え抱きしめ、同時に幸子が伸ばした五指に己の指を優しく絡めた。
「……デイ…モン…さ…」
「怖がらないで」
幸子の耳許に唇を寄せ、雲雀が穏やかな声音を吹き込む。
低く甘い声が幸子の耳から脳内に響いていく。
「もう離さないから。だから安心して帰っておいでよ……僕の許に」
「……あ……」
「愛してる幸子」
瞬間、幸子の身体がびくりと反応した。塞き止められていた感情が一気に溢れだす。
この声…この匂い…このぬくもり…
私は全て知っている。
ずっとそれに守られてきたのだから…。
「…恭弥……」
その声はか細く、今にも消え入りそうであった。しかしどんな深い谷間をこだます声より強く、雲雀の胸に響いた。
「幸子」
光を宿した幸子の瞳が自分の名を呼ぶ雲雀の顔を映した。
それに気づき、雲雀は優しい笑みを浮かべた。幸子にしか見せない雲雀のその表情は、幸子が雲雀の『特別』である証。
「きょう…や……っ」
雲雀の名を呼んだのと、雲雀によって唇を塞がれたのがほぼ同時であった。
みんなに見られている…
その恥ずかしさも全く感じなかった。
今は雲雀の事しか考えられない。
その温かく柔かな感触に心も身体も満たされ安心したのか、そのまま幸子はフッと意識を失った。
「私のマインドコントロールを破っただと…!?」
数時間のマインドコントロールでは、幸子の心を完全に縛る事はできなかったという事か…。
しかしクロームにかけたマインドコントロールは完璧だった。……これが愛の力などとは断じて信じはしない。
更にその驚きとは別の感情がデイモンを支配していた。
あの忌々しい雲が、己の愛する女を腕に抱きその唇を塞いでいる。
抑えきれない憎しみと嫉妬心が、デイモンの端正な顔を歪ませた。
「雲雀恭弥、幸子をこちらに渡しなさい」
「覚悟はいいかい?」
雲雀は片腕で幸子を抱いたまま己の肩に幸子の頭をもたれさせると、ゆっくりとデイモンを振り返った。雲雀のまなざしは鋭い。
「咬み殺す」
言い様のない激しい怒りが雲雀を支配していた。
幸子を怖がらせ、苦しめ、泣かせた罪…その身を持って償え。
「待てよヒバリ」
片膝をついて幸子を抱いたままデイモンにトンファーを向けた雲雀を山本が制した。
雲雀は、構えたトンファーはそのままに視線だけを山本に投げる。
「山本武」
「あんたは幸子先輩を守れ。この亡霊はオレが斬る!」
水野を、シモンを、そして今、関係のない幸子まで苦しめたデイモンを許す訳にはいかない。
山本は静かなる怒りを燃やしながら、デイモンを睨み付けた。
「幸子」
「………」
雲雀の呼びかけに幸子は応えることなく、ただ虚ろな目で雲雀の背後に迫るデイモンの姿を捉えていた。
既にデイモンから驚愕の表情は消えており、冷酷な笑みを浮かべて雲雀を見下ろしていた。
「ヌフフ……驚きました。まさか雲の守護者のあなたが霧の結界を突破してくるとは。…しかしリブは私のものだ。返してもらいましょうか」
そう、まだ終わってなどいない。依然として彼女は私の手中にあるのだ。
「リブ…?」
「アラウディといい雲雀恭弥といい、お前はいつも浮雲のようにふわふわと雲の許へ引き寄せられる……」
デイモンは、眉を潜めた雲雀の問いかけを意図的に無視して幸子に手を差し伸べた。
「お前にはお仕置きが必要ですね。来なさい幸子」
「…はい、デイモン様」
デイモンの手を取る為に立ち上がろうとした幸子を阻止するように、雲雀は腕を背に回し後頭部に手を添え抱きしめ、同時に幸子が伸ばした五指に己の指を優しく絡めた。
「……デイ…モン…さ…」
「怖がらないで」
幸子の耳許に唇を寄せ、雲雀が穏やかな声音を吹き込む。
低く甘い声が幸子の耳から脳内に響いていく。
「もう離さないから。だから安心して帰っておいでよ……僕の許に」
「……あ……」
「愛してる幸子」
瞬間、幸子の身体がびくりと反応した。塞き止められていた感情が一気に溢れだす。
この声…この匂い…このぬくもり…
私は全て知っている。
ずっとそれに守られてきたのだから…。
「…恭弥……」
その声はか細く、今にも消え入りそうであった。しかしどんな深い谷間をこだます声より強く、雲雀の胸に響いた。
「幸子」
光を宿した幸子の瞳が自分の名を呼ぶ雲雀の顔を映した。
それに気づき、雲雀は優しい笑みを浮かべた。幸子にしか見せない雲雀のその表情は、幸子が雲雀の『特別』である証。
「きょう…や……っ」
雲雀の名を呼んだのと、雲雀によって唇を塞がれたのがほぼ同時であった。
みんなに見られている…
その恥ずかしさも全く感じなかった。
今は雲雀の事しか考えられない。
その温かく柔かな感触に心も身体も満たされ安心したのか、そのまま幸子はフッと意識を失った。
「私のマインドコントロールを破っただと…!?」
数時間のマインドコントロールでは、幸子の心を完全に縛る事はできなかったという事か…。
しかしクロームにかけたマインドコントロールは完璧だった。……これが愛の力などとは断じて信じはしない。
更にその驚きとは別の感情がデイモンを支配していた。
あの忌々しい雲が、己の愛する女を腕に抱きその唇を塞いでいる。
抑えきれない憎しみと嫉妬心が、デイモンの端正な顔を歪ませた。
「雲雀恭弥、幸子をこちらに渡しなさい」
「覚悟はいいかい?」
雲雀は片腕で幸子を抱いたまま己の肩に幸子の頭をもたれさせると、ゆっくりとデイモンを振り返った。雲雀のまなざしは鋭い。
「咬み殺す」
言い様のない激しい怒りが雲雀を支配していた。
幸子を怖がらせ、苦しめ、泣かせた罪…その身を持って償え。
「待てよヒバリ」
片膝をついて幸子を抱いたままデイモンにトンファーを向けた雲雀を山本が制した。
雲雀は、構えたトンファーはそのままに視線だけを山本に投げる。
「山本武」
「あんたは幸子先輩を守れ。この亡霊はオレが斬る!」
水野を、シモンを、そして今、関係のない幸子まで苦しめたデイモンを許す訳にはいかない。
山本は静かなる怒りを燃やしながら、デイモンを睨み付けた。