雲雀は逸早く幸子の異変に気づいた。
白蘭が姿を現した途端、彼女がハッと息を飲むのが分かったからだ。
呼びかけてみても、彼女は食い入るようにその男を見つめるだけだった。それが面白くなくて雲雀はしなやかな指で幸子の指をつついた。
「ねえ」
「あっ、な、なに…？」
ようやく気づいた幸子に苛立ちを覚え、八つ当たりしてしまう。
「それはこっちの台詞だよ。なにボケッとしてんの？」
「う、うん…。ごめんなさい…」
「？」
恐怖とは違う。
なぜか幸子は激しく動揺している。
白蘭とかいうあの男が姿を現した途端に。
それが導き出す結論まで辿り着くのは容易だ。
「幸子。君、彼を知ってるのかい？」
「…！」
ギクリとしたように幸子が雲雀を見た。
「図星みたいだね」
「……っ」
押し黙る幸子に更なる疑問をぶつけようとする雲雀であったが、突き刺さるような殺気を感じてキッと視線を向けた。
視線の先には白蘭。
その男は、和やかさとは正反対の不敵な笑みを雲雀に浮かべたあと、柔らかい笑顔で幸子を見た。
「久しぶりだね♪木梨幸子チャン」
「ひばり…さん…」
「!?」
反射的に雲雀は幸子を見るが、彼女の視線はしっかりと白蘭に向けられていた。
己ではない、"ひばり"――それが意味するものとは!?