孤高の浮き雲 雲雀恭弥の心をズタズタに切り裂く事により、幸子は完全に己のものとなる。これはその為の儀式だ。
「………」
「さあ、幸子。早く答えなさい」
デイモンにとって嫌な静寂であった。
マインドコントロールされている幸子が己の命令に抗えるわけがないとは解っていても、つい幸子の言葉の先を急いでしまう。
「…ひ……ばり……」
なんだろう。懐かしい響き…。固まった思考が今にも溶けだしそうだ。
「………」
「どうしたのです、幸子」
デイモンが焦れる。
抗えない運命がまるで蛇のように幸子に絡み付いていく…。
「…雲雀…恭弥……より、Ｄ・スペード様を…愛して…います…」
涙が一筋、その頬を伝って零れた。
「……！」
「ヌフフ……ヌハハハッ！泣くほど私が愛しいのですか、幸子。全くもって可愛い人だ」
何も言わずにただ幸子を見つめる雲雀に勝ち誇ったような笑みを見せると、デイモンは幸子の顎を指で捕えた。
「ご褒美です」
デイモンの唇が幸子の柔かな唇へゆっくりと近づいていく――