無理に聞く気はなかった為話題を変えようとした所で、珍しく雲雀から話し出してくれた。
「並中の生徒が数人行方不明になっているんだ」
「えっ?!」
寝耳に水とはこの事か。
思ってもみなかった内容に幸子はすっとんきょうな声を上げてしまった。
「２、３日前からね」
集団で行方不明？益々あり得ない話だ。
「誰が行方不明になってるの？」
幸子が尋ねると雲雀は一瞬だけ沈黙し、質問に答えてくれた。
「沢田綱吉、獄寺隼人、山本武…それに笹川京子だ」
「！」
名前を聞いた幸子はハッと口許を押さえた。口に出しそうになった言葉を言うか言うまいか悩み、一度飲み込んだ。
「？……」
そんな幸子の様子を眺めていた雲雀は ある違和感を感じる。
幸子のリアクションが極めて薄いのだ。特に友人絡みの内容に対して幸子は過剰なほどに反応する。
沢田達といえば、いつも幸子を誘いにくる質の悪い"群れ"だ。
そんな彼らが行方不明になり……しかも今回は幼馴染みである京子も加わっているというのに、この反応はおかしい。
「あんまり驚かないんだね」
「あ、いや……そんな事ない、けど…」
指摘すれば幸子はしどろもどろの返事。
「幸子。君、彼らが何処にいるか知ってるの？」
何気ない一言に幸子がギクリと反応した。
知っている訳じゃない。
予感、とでも言うのだろうか。
こんな事言うのは馬鹿げてる。
そう思いつつも幸子は口を開いた。
「未来…に、いるかな。…なんて」
雲雀が眉間にシワを寄せて幸子をまじまじと見た。完全に呆れている。
「あのね。夢で見たんだ。沢田君達が未来に…いるのを」
「幸子…寝惚けてるの？」
「ち、ちが…」
「完全に白昼夢だね」
ああ。やはり言うんじゃなかった。