賑やかなキッチンに顔を出した途端、感傷に浸っている暇などなくなった。
「おやつーおやつーランボさんのおやつー♪まだかなまだかなー♪♪」
「ランボ食器叩くのダメ」
両手にナイフとフォークを装備したランボが、それを皿に当てて キンキンとうるさい金属音を立てる。その横で行儀よく座るイーピンがランボをたしなめてくれていた。
「はひー！また焦げちゃいました！」
キッチン台ではもくもくと煙が上がっており、火力調節がうまくいかずハルと京子がホットケーキ作りに悪戦苦闘していた。
キッチンに現れた幸子に気づき、京子はすぐに声をかけてきた。
「ホットケーキ…上手く焼けないの」
「じゃあ一緒に作ってみよっか」
ほどよく熱したフライパンに多めの油を引き、生地を流し伸ばす。
「あんまり強火にならないように注意してね。表面だけ焦げて生焼けになっちゃうから」
幸子を挟んで両脇に立つ京子とハルが同時に「はーい」と返事をした。
「幸子まだかー？ランボさん待ちくたびれたもんね」
「うわっ！ランボ、危ないよっ」
突然肩に飛び乗ってきたランボの重みに一瞬バランスを崩した。
火を使っているのだ。火の元でふざけるのは危ない。
「ランボさん一番おっきいのがいいもんね！」
「はいはい、了解っ」
幸子はクスリと笑ってフライパンを振る。ホットケーキが鮮やかにひっくり返った。