僅か数分のその拷問は恐ろしい程に長く感じられた。
既に言葉を発する事もなく荒い息だけを繰り返す獄寺の出血は相当に酷い。
早く手当てをしなければ 命に関わるだろう。それは倒れたままの山本にも同じ事が言える。
「そろそろ吐かねーと取り返しがつかねーぞ」
右手で獄寺の首を締め上げるようにして彼の体を頭上高く持ち上げながら、γは何度目かのその言葉を獄寺にかけた。
彼の状態は拷問している張本人であるγが一番理解している。だが どれだけ体がボロボロになろうとも、獄寺の心が折れる気配はなく。
「だ…が……」
「何か言ったか？」
漸く話す気になったと思い顔を近づけてみれば、獄寺はγに向かって血の混じった唾を吐きかけた。
ペチャッと頬に付着した血混じりの唾。それはγに残っていた僅かな慈悲を消し去った。
「………なるほど。そうかい」
バッと右手を放すと、キューを振るい獄寺を思いきり地面に叩きつけた。
衝撃の強さに息が詰まり、反動でガハッと血を吐いた獄寺は もう限界だった。
「ならここで死んでいけ。お前らをうちの白い連中にくれてやるつもりもないんでね」
「獄寺君!! お願いです…もう止めて下さい!!」
遠くで己を呼ぶ幸子の悲痛な声が聞こえる。
「心配しないで待ってな。すぐにアンタも後を追わせてやるよ」
非情なγの言葉。
10年後の沢田の仇を討ちたいのに…幸子を守ってやりたいのに…
体がちっとも言うことを聞かない。
「雨の守護者も今 楽にしてやる」
γの両隣に浮かぶ雷狐から強い雷の炎が放出される。
拷問はお終いだ。
彼は獄寺と山本を始末する事に決めたのだ。