立ち上がったγの腹には、山本の剣技から彼を庇うように貼り付く雷狐。
自分を守る死ぬ気の炎が獄寺のフレイムアローに吹き飛ばされる前に 予備の炎を蓄えておける匣を開匣した為、消えずに残った雷狐が山本の一撃を防御したのだ。
「さあ お遊びはここまでだ」
どことなく緩かったγの雰囲気が瞬時に変わった。
「ボンゴレの10代目が生きているとしたら…こいつはただ事じゃあない。奴が射殺される所は 多くの同志が目撃してるしな」
「!!」
幸子はその言葉にショックを受けた。
沢田はこの男の仲間によって命を奪われたのだ…。
「てめ…」
しかし幸子よりも更に大きなショックを受けている者がここにいた。
「てめーらよくも!!」
敬愛する沢田の死を聞かされた獄寺は怒りに我を忘れた。
獄寺にとって沢田の存在は自分の居場所そのものだ。それを奪ったなどと聞かされれば、彼の頭に一瞬で血が上るのは当然の事。
怒りのフレイムアローがγ目掛けて放たれる。
「許さねぇ!!!」
連中にも同じ痛みを味わわせてやらなければ気がすまない。しかしフレイムアローがγに届くより速く、雷狐の電流が獄寺を襲った。
「ぐあ!!」
痺れるような痛みが獄寺の全身を切り裂いた。
仰向けに地面へと倒れた獄寺の喉元に、γは容赦なくキューを突きつける。
「さあ 教えてもらおうか…なぜ10代目が生きている？ そして今何処にいる」
「……だれ…が…てめーなんかに……」
「獄寺君!!」
一気に逆転した形勢。
まるで今まで手加減でもしていたかのようなγの実力を目の当たりにしても、戦う彼らの名を叫ぶ事しか出来ない自分の無力さが恨めしい。
そんな幸子をγはチラリと一瞥した。
「お前が言いたくないのなら……あの女に聞いてもいいんだぜ？吐かせる手段はいくらでもある」
「幸子には……手ェ…だすな…」
すごむ獄寺と幸子を交互に見たγは ある推測に辿り着いたらしい。
「なんだ。お前ら恋仲か？…随分と年の差があるようだが。まあ 俺はそういう偏見は持たない主義なんで構わないがな」
もう一度幸子を見やってから γは残忍なまなざしで獄寺を見た。
「お前の見ている前で あの女を犯してやろうか？」
「……んだと!!?」
「そうすりゃお前ももっと素直になれるだろ」
「てめー!!!」
いきり立ちながら起き上がろうとした獄寺の動きを封じるように その手をその足で踏みつける。グキャッという鈍い音が辺りに響いた。
「ぐあ!!!」
「それともう一つ気になるんだが」
痛みに声を上げる獄寺に構わずγは話を続ける。
「お前らのつけているリングには見覚えがある。どういう冗談だ？」
「あぁあ!!!」
「いやぁっ、もうやめてっ!!」
骨の折れるその嫌な音に幸子が泣き叫んだ。
その悲痛な叫びを聞きつけ、獄寺を助けようとボロボロの山本が竹刀に戻った時雨金時を振る。だがそれはいとも簡単にγのキューに受け止められ、そしてまた彼は雷の餌食となり倒れた。
「拷問には一人いれば充分だ。お前は無用なんだ」
そう これより始まるは"戦い"ではなく 一方的な"拷問"――‥