10年前から来た沢田とリボーンの師弟愛溢れる？再会を、幸子はソファーの脇に立って眺めていた。
昔は日常の中で当たり前にあったそのやりとりが、今はとても懐かしく映る。
命を落としたと聞かされたばかりの沢田が10年前の姿で現れた事にも驚いたが、沢田に会うと出ていった獄寺が昔の彼として帰って来た事にはもっと驚いた。
半日の間に何が起こったのか。
大きなマントをつけた女性を担いで最後に部屋に入ってきた山本が現在の彼のままだという事実が、幸子を安心させた。
(あっ、手を貸さなくちゃ)
ボーッと考え込んでいたせいで反応が遅れてしまったが、山本の連れている女性は気を失っているらしい。怪我などしていなければ良いのだが。
「やまも……っ、!?」
動き出そうとした幸子は、痛いくらいに感じた視線にそちらを向いた。
ドア前に立って沢田とリボーンのやりとりを眺めていたはずの獄寺が、眉を潜めてこちらを見ている。本人にその気はないのかもしれないが、睨みつけられているようだ。
「テメーはもしかして…」
ポケットに手を突っ込んだまま前屈みにヅカヅカと歩いてきた中学生の獄寺は、幸子の前で立ち止まり、上から下までその鋭い視線を走らせた。
その獄寺の瞳が、幸子の顔を見つめたまま大きく開かれた。
「お前…幸子か!?」
「う、うん」
「えっ、幸子さん!?」
獄寺の大声に、沢田も驚いたような声を上げて幸子を見た。
「ハハハ。獄寺、お前って相変わらず幸子先輩には敏感だよな」
「う、うるせー山本ッ。幸子があんまり変わってねーから気づいただけだ！」
山本がからかうように言うと、獄寺は少々赤面しながら視線を外した。
そんな獄寺をニヤニヤと見てから、山本は幸子に声をかけた。
「幸子先輩、手伝ってくれるか？」
「うん。…この人は？」
「ラル・ミルチ。俺が迎えに行ってきた門外顧問からの使者だ」
部屋の奥に置かれていたソファーに女性を寝かせながら山本が答えた。
外傷は見当たらないものの、女性…ラル・ミルチは酷く疲労しているように見える。
「呪いは順調に解けてるみてーだな」
「？」
ラル・ミルチの寝ているソファーまで歩いてきたリボーンが、彼女の顔を覗きながらボソッと言った。
知り合い…なんだろうか。
「しばらく寝かせとけ。その間にこの世界で起きてる状況を伝えるぞ」
座っていたソファーに戻りながら、リボーンが沢田と獄寺を交互に見て言った。