苧環の花束
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そんな事情があり、幸子は結局本を読んでいない。
「まだ……読んでないんです」
「へえ。そうなんだ」
幸子の胸中を知る由もない青年がにこやかに応えた。それから二言三言会話を交わし、2人は別れた。
偶然は偶然だ。青年とはもう会う事はないだろう。幸子はそう思っていたが、違った。
それから街へ出る毎に青年に偶然出逢い、いつしかこうして短い立ち話をするのが当たり前になっていた。
この9日で四度。今日が五度目ともなれば、もう偶然では済ませられない。
「これだけばったり会えば忘れませんよ」
「ホーントよく会うよね。運命感じちゃうな♪」
「あははっ」
おどけたように冗談を言ってくる青年に、思わず笑ってしまった。
交わす会話は平凡で時間は短い。それでも幸子は、青年との何気ない立ち話から元気をもらっていると感じずにはいられなかった。
「あーもしかして信じてない?ホントにあるんだよ、運命って」
「ふふっ。そうかもしれないですね」
頷きながら、頭に浮かぶのは愛しい人の横顔で。
「せっかくだからさあ、ティーブレイクしない?」
「えっ…!?」
「変なコトしないから大丈夫だよ。話をするだけ」
「あっ、でも…っ。恋人がいるんです」
自意識過剰な気もするが、隠すのも気が退ける。しかし青年はにこやかな笑顔のまましれっと言った。
「どこにいるの?」
「えっ?」
「君の恋人。僕には見えないけどな」
これは青年なりの冗談だったのかもしれないが、ついつい幸子は真面目に返答してしまう。
「えっと、今ここにいる…って意味じゃなくて…」
「なら問題ないよね。行こうか?」
青年は再びにこやかに言い歩き出した。
完全に青年のペースだ。社交的な柔らかい物腰なのに押しが強い。
(結構強引な人なんだな…)
思いながら青年の後を追いかけた。
「まだ……読んでないんです」
「へえ。そうなんだ」
幸子の胸中を知る由もない青年がにこやかに応えた。それから二言三言会話を交わし、2人は別れた。
偶然は偶然だ。青年とはもう会う事はないだろう。幸子はそう思っていたが、違った。
それから街へ出る毎に青年に偶然出逢い、いつしかこうして短い立ち話をするのが当たり前になっていた。
この9日で四度。今日が五度目ともなれば、もう偶然では済ませられない。
「これだけばったり会えば忘れませんよ」
「ホーントよく会うよね。運命感じちゃうな♪」
「あははっ」
おどけたように冗談を言ってくる青年に、思わず笑ってしまった。
交わす会話は平凡で時間は短い。それでも幸子は、青年との何気ない立ち話から元気をもらっていると感じずにはいられなかった。
「あーもしかして信じてない?ホントにあるんだよ、運命って」
「ふふっ。そうかもしれないですね」
頷きながら、頭に浮かぶのは愛しい人の横顔で。
「せっかくだからさあ、ティーブレイクしない?」
「えっ…!?」
「変なコトしないから大丈夫だよ。話をするだけ」
「あっ、でも…っ。恋人がいるんです」
自意識過剰な気もするが、隠すのも気が退ける。しかし青年はにこやかな笑顔のまましれっと言った。
「どこにいるの?」
「えっ?」
「君の恋人。僕には見えないけどな」
これは青年なりの冗談だったのかもしれないが、ついつい幸子は真面目に返答してしまう。
「えっと、今ここにいる…って意味じゃなくて…」
「なら問題ないよね。行こうか?」
青年は再びにこやかに言い歩き出した。
完全に青年のペースだ。社交的な柔らかい物腰なのに押しが強い。
(結構強引な人なんだな…)
思いながら青年の後を追いかけた。