苧環の花束
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雲雀が留守にしてから9日が過ぎた。
相変わらず雲雀からの連絡はない。
仕事が立て込んでいるのか。あえて連絡を取らずにいるのか。その両方かもしれない。
思いきって自分から連絡を…とも思ったが、あえて幸子を連れて行かなかった雲雀の考えを思えばそれも気が退けた。
便りがないのが元気な証拠…といえばそうなのだが、やはり寂しさは拭えず。
(恭弥…早く帰って来て)
目じりに溜まった涙をそっと指先で拭った。
―――――‥‥
「また会ったね♪」
気分転換に外出してみればかけられた声。
振り向くと、見覚えある笑顔が立っていた。幸子に手を振っていない方の手には花束を抱えている。
「あっ、あの時の…!?」
「思い出してくれた?嬉しいな」
彼とは数度面識がある。
最初に会ったのは雲雀が出張に出かけた日。
並盛中まで道案内をした。
その2日後に買い物の途中でばったり出逢い、こんな会話を交わした。
「一昨日はありがとね」
「いえ。お役に立てて良かったです」
「それよりさあ。本読んだ?」
「本?」
「うん。君が大事そうに抱えていた本」
「あっ…」
並盛書店で購入した "雲雀の詩(うた)"――‥
"雲雀"の名が嬉しくて選んだのだが、実は読んでいない。
青年と別れ帰路に着いた幸子は、途中自分の手の中から本が消えている事に気づき、慌てて来た道を戻った。そこで…無惨にも破かれた本とくちゃくちゃの紙袋を発見したのだ。
「酷い…」
拾い上げ思わず涙ぐむ。誰がしたイタズラか知らないが、雲雀への心配が極限に達している今の幸子には覿面すぎた。
破かれた"雲雀"の文字が幸子の心をも引き裂いてしまいそうだった。
「恭弥……早く帰って来て…っ」
何度目かの心の呟きを絞り出すように口に出した途端、幸子の瞳から雫が零れた。
相変わらず雲雀からの連絡はない。
仕事が立て込んでいるのか。あえて連絡を取らずにいるのか。その両方かもしれない。
思いきって自分から連絡を…とも思ったが、あえて幸子を連れて行かなかった雲雀の考えを思えばそれも気が退けた。
便りがないのが元気な証拠…といえばそうなのだが、やはり寂しさは拭えず。
(恭弥…早く帰って来て)
目じりに溜まった涙をそっと指先で拭った。
―――――‥‥
「また会ったね♪」
気分転換に外出してみればかけられた声。
振り向くと、見覚えある笑顔が立っていた。幸子に手を振っていない方の手には花束を抱えている。
「あっ、あの時の…!?」
「思い出してくれた?嬉しいな」
彼とは数度面識がある。
最初に会ったのは雲雀が出張に出かけた日。
並盛中まで道案内をした。
その2日後に買い物の途中でばったり出逢い、こんな会話を交わした。
「一昨日はありがとね」
「いえ。お役に立てて良かったです」
「それよりさあ。本読んだ?」
「本?」
「うん。君が大事そうに抱えていた本」
「あっ…」
並盛書店で購入した "雲雀の詩(うた)"――‥
"雲雀"の名が嬉しくて選んだのだが、実は読んでいない。
青年と別れ帰路に着いた幸子は、途中自分の手の中から本が消えている事に気づき、慌てて来た道を戻った。そこで…無惨にも破かれた本とくちゃくちゃの紙袋を発見したのだ。
「酷い…」
拾い上げ思わず涙ぐむ。誰がしたイタズラか知らないが、雲雀への心配が極限に達している今の幸子には覿面すぎた。
破かれた"雲雀"の文字が幸子の心をも引き裂いてしまいそうだった。
「恭弥……早く帰って来て…っ」
何度目かの心の呟きを絞り出すように口に出した途端、幸子の瞳から雫が零れた。