Another~虚~
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ーーー怒りとも悲しみにも似たような感情のまま
優が出ていった先を呆然と眺めていた
後ろのガラス戸から雨音が聞こえてきて
ようやく目線を外へと移す
虚の元でどれほどの苦痛を与えられ続けているのか
苦笑いを浮かべた優が脳裏をよぎり
自分に腹が立つ
もう虚の元に帰ってしまったかもしれない優を探す為
高杉も屋敷を後にした
主の死も未だ知らぬ使用人に番傘を借り
待ち合わせをしていた万斉の元ではなく
何となくで高杉は森の方へ足を進める
ーーー
絶望感に森の中で雨空を見上げ続けていたが
少し落ち着きを取り戻し
木陰に膝を抱え込んで座り込む
出会わなければ良かった等と色々後悔しては
そうでは無いはずと
ぐるぐると頭の中で自問自答を繰り返す
どれほどそうしていたのかも分からないまま
辺りはさらに暗くなる
「こんな所に居たのですか、優様」
朧の声がして顔を上げる
傘などはさしていないため ずぶ濡れになった朧がそこにいた
「朧…」
「優様、帰りましょう。」
目の前に手が差し出される
その手を掴もうと手を伸ばしたとき
「悪いがそいつを連れて行かせるわけには行かねぇな」
片手に番傘をさしながら もう片手で抜き身の刀を持って後方から高杉が現れる
「どう…して…」
強く目を閉じれば 涙が滴り自分が泣いていたのだと理解する
「高杉
お前はまだ優様を守れはしない」
「あぁ、そうかもしれねぇ。
だとしてもこれ以上コイツが苦しんでいる様を見たくはねぇ」
「晋助…
私の事はどうか忘れて下さい」
ふらりと立ち上がり朧の方へ歩み出す優の手首を傘を投げ出し掴み自分の方へと引き寄せる
「お前がただの女なら忘れられたんだろうよ」
「離して下さい、晋助!!
貴方まで苦しむ必要はありません!!」
掴まれた手を振り払い高杉を睨むように見上げる
睨みつけてくるその瞳には哀しみの色が見える
「そんな顔してるお前に言われたかねぇよ」
振り払われた手をそっと優の頬へと伸ばす
伸ばされた手に怯えるように固く目を閉じる優に心が痛む
固く閉ざされた瞳から流れる雫を指ですくう
ゆっくり目を開ける優と目が合って微笑んで見せる
少し目を見開いて瞼を伏せる
「朧…とか言ったか
お前もこんな姿の優を見たかねぇんだろ」
「…ああ。
優様に対する虚様の仕打ちは余りにも酷すぎる」
朧は戦いの姿勢など見せず
俯き肩を震わせる優と高杉を見つめる
「優様
その者とゆくのであれば 今しかありません。
虚様は明日まで地球には居ない。
それまでに地球を立って下さい。」
優しい声で助言をくれる朧の方を振り向く
優しい顔を見せる兄弟子がそこにはいた
「朧…それでは貴方が…」
「私はなんとでもなります。
知っての通り、貴女と違い私は失敗作。
もとより先は永くありません。」
「優、帰ってこい
皆お前を待ってる」
会話は途切れ降りしきる雨の音だけがただ3人を包んだ
「朧、何度も助けてくれてありがとう。
今度は私が助けに行きます
それまでどうか無事でいてください。」
今出来るだけの笑顔を朧に向ける
ぎこちない笑顔ではあるものの想いは朧の胸に届いた
高杉に手をひかれ
2人ずぶ濡れのまま森を下って行った
その2人をまた朧も優しい気持ちで見つめていた
姿が見えなくなるまで