番外編
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真っ暗な闇の中
ーーー好きだ
誰かにそう言われ 唇に暖かい感触がした
肌寒さに目を覚ますと
膝の上に高杉は居らず、真後ろから包み込むように抱きしめられていた
「…晋助?」
「起きたのか?」
「先に起きたなら起こしてくれれば良かったのに」
目を擦りながら振り返る
ぼーっと高杉を見つめる
「どうした?」
夢の声が 高杉ならばいいのに
そう思った所でハッとして正面を向く
「な、なんでもないです
それより夕食の準備しなくては」
立ち上がろうとするが
高杉の腕が離れない
「心配すんな、夕食は銀時がやってる」
「銀が?」
「ヅラがやるよりマシなもんが出てくらぁ」
「た、確かに…」
「優、銀時の方がいいか?」
「何がですか?」
「なんでもねぇ、気にすんな」
そう言って高杉の腕が離れ立ち上がってどこかへ行ってしまった
「なんだったんでしょう」
その場でんーっと伸びをすれば
やり残したことを思い出して
兵士の治療に戻る
治療を終わらせてから 与えられた自室に戻ると
銀時が作ったであろう夕食が置かれていた
不揃いな大根が入ったみそ汁に口をつける
少ししょっぱい
「またお味噌入れすぎてますね」
銀時が作ると 適当故に 味が無いか濃すぎるかの両極端だった
稀に 程よい味付けものが出来上がる時がある
桂は 見た目は完璧なのだが 味が伴わないことが多い
晋助はまず調理場に立とうとしない
1人寂しく夕食を終え
食器を流しへ持って行ってから
この付近に川があったことを思い出す
「髪、洗いに行こうかな」
桶に入った お風呂セットと 刀を持って
この屋敷の裏口(建物が古いので1部塀がないだけ) から出て川の方へ歩いた
川原が見えてきたところで前方から 濡れた髪で上半身裸の高杉と目が合う
「ッ!!!
服着て下さいっ!」
傷の手当の時は裸を見ても平気なのに
普段だと なんだか恥ずかしくなってしまう
おかしなものだなと自分でも思う
「ククッ、変な奴だな
俺の裸ぐらい何度か見た事あんだろ」
「バカっ
いいから早く服着て下さい!!」
ぐるっと高杉に背を向けて待つ
少しすると後ろから足音が近付いてくる
「晋助?」
返事が帰ってこない
「着替え終わったんですか?」
振り返って大丈夫なのかどうか迷っているうちに真後ろに気配を感じる
「しん、すけ…」
恐る恐る振り返ると少し肌蹴てはいるが
ちゃんと服を着てることに安堵した
「ククッ
顔、真っ赤だぜ」
「もうっ!からかわないでくださいっ」
高杉の胸を軽く叩く
「俺以外は
誰も居ねぇからさっさと入ってこい」
「ぜったい見ないで下さいよっ!ぜったいですからねっ!」
「はいはい」
3m程の大きな岩陰で
着物の帯を緩め 裸になる
シャンプーとタオルを入れた桶を持って
川の中へ足を踏み入れれば少し冷たい
ゆっくり深いところへ滑らないように気をつけながら足を踏み入れる
ある程度の深さまで来たところでしゃがみこんで髪を川につけ湿らせてゆく
髪が洗い終わりそろそろ上がろうと思って立ち上がる
「綺麗になったな」
離れた所に居たはずの高杉が川辺に座っていた
「なっ?!なんでそこにいるんですかッ!?」
とっさにその場にしゃがみこみ 膨らみかかった胸を隠す
「早くあがらねぇと風邪ひくぞ」
「あっち行ってください!!」
「断る
拭いてやるから早く来いよ」
「自分で拭けま、クシュンッ!!」
「諦めて早く来い
人が来ても知らねぇぞ」
強情な高杉の性格を分かっているだけに
こちらが折れるしかないのだが
優の羞恥心が勝る
「目瞑っててやるからその間に早くあがれ」
「絶対ですよ!絶対目、閉じててくださいね!」
かなり念を押してそろりと立ち上がって川から上がり桶を置いてから慎重に高杉に近付く
「まだダメですからね!!」
高杉の膝の上に置かれているバスタオルにそーっと手を伸ばし奪い取れる所で
伸ばした腕を掴まれ 引き寄せられる瞬間 ニヤニヤと笑う高杉と目が合った
そのまま2人体型を崩して 高杉を押し倒す形になる
自分でも分かるほど顔が熱くなる
「俺はお前が望まねぇ限り襲いやしねぇ
優、お前が望むなら別だが」
この状況はまずい離れなくては
と思った時に冷たい手が頬に触れる
心地いい冷たさに つい行動を停止してしまう
「優、俺が嫌いか?」
「いいえ。 時々意地悪で、最近余り口を聞いてくださいませんが…なんだかんだでとても優しいので…嫌いじゃ、ないです」
自分で言ってて少し恥ずかしくなって
そのまま高杉の上に倒れるように抱きついた
「そりゃあ、兄としてか?」
冷たい手が 冷えた背筋を撫でる
「んっ、わかりま、せんっ
でもっ…晋助が、そばに居ると、安心します」
細々と高杉の胸に顔をうずめながら想いを伝える
「優、1人の女としてお前が好きだ」
「な、にを…」
「俺のそばに居ろ」
自分でも高鳴る鼓動が聞こえる
目の前にいる彼からも
恋愛なんてまだよく分からないけれど…
「…はい」
きっと両想い…だと思うから
「そろそろ離してください
…寒いです」
「そうだな
部屋に戻るか」
優に続いて高杉も起き上がる
「着替えるまで 目閉じててください!!」
高杉の膝の上にあったバスタオルを顔面に投げつける
「痛…ったく。」
とりあえず着替えを終えて 2人手を繋いで拠点に戻った
自室に戻って拭き直し 寝間着に着替えて床に着いた時には 自室前の廊下に高杉が戻って来ていたので
「そんな所に居ないで、入ってきたらどうですか」
「優がその気なら構わ「違います!!」
喉で笑いながら障子を開けて中に入ってくる
変えが無かったのか珍しく着物姿で
布団の真横に寝転がってこちらを見つめてくる
「もーっ
寒いんですから布団入ればいいじゃないですかっ!!
変な事したら大声で叫びますからねっ!!」
「何もしねぇよ」
高杉を布団へ招き入れれば すっと引き寄せられる
心臓がまだうるさいけれど
抱きしめられ髪を撫でられているうちにいつの間に眠りについた
翌朝の朝食 配膳時
鼻の下を伸ばして優に群がる男共に見つけるように
後ろから抱きしめ 唇を奪い
「俺の女だ 手ぇ出したら殺す」
唖然としていた優が我に返って
「ば、バカァァァっ」
恥ずかしさの余り涙目で叫んで広間を飛び出し
廊下でぶつかった銀時に慰めて貰った
数日間 高杉と目が合わせられない優だった
馴れ初め 02 END