*chamomile*
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また子は自室には居ないようで
船内を探すことにした
すれ違う者達に聞いても どうやら入れ違いを続けているようで会えなかった
それよりも隊員達が心配そうな顔をしてこちらを見てくるのが不思議だった
ここには居ないだろうと分かりながら甲板まで出てきた
空はどんよりとしており 今にも降り出しそうな
空を眺めていたら後ろから声をかけられる
「晋助様を知りませんか?」
「あら、玉菊さん。おはようございます
晋助がどうかしたのですか?」
振り向いて挨拶をする
「目覚めたらいらっしゃらなかったので、貴女なら何か知っているかと思ったのですが…」
「残念ですが、知りません。」
「そう、ですか…」
玉菊は顔を伏せる
「あの、昨日はどちらも本気で殺そうとしているようには見えましたが…。」
「えぇ、少し意見が合わなかったもので」
「優さん、ここを発つ事は考えたりしませんの?」
「そうですね…いつかは有りうるかも知れません。」
玉菊に背を向け 遠くで雲間からの木洩れ日を見つめる
「優さん、ごめんなさい」
袖に隠していた短刀で切りつけられる
交わしたつもりだったが 刃は優の左腕を傷つけた
その短刀が自分のものである事が誤算だった
「っ!」
振り返り刀を握るも
上手く力が入らずその場に膝をつく
「ごめんなさい、優さん。
でも貴女は高杉に近い存在のようですし。
この短刀、あの部屋で見つけましたの。
やっぱり何か仕込んであったのですね。」
甲板に出ていた兵に囲まれ
首元に刀を突きつけられる
「見ない顔が多いとは思いましたが、ここまで潜入を許すとはまだまだ私達も甘かったようですね…。」
(自ら仕込んだ毒に足を取られるとは…
誤算だらけです…)
「大丈夫です、優さんを殺す気はありません。
高杉を誘き出すのに役立ってもらえれば充分ですので。」
「晋助を誘き出してどうするのです?
殺すおつもりですか?」
時間稼ぎに質問しながら
腰巾着から解毒剤を探す
「あの男を生かしてはおけません」
玉菊は怒りで震えている
解毒剤を手探りで見つけ
がら空きの後方へ一気に抜けるも
足がもつれ倒れ込む
急いでびんの蓋を開け まだ閉じきっていない傷にかけた
激痛に襲われるも ゆっくりと緩和されていくのを感じ
すぐに体制を整え刀を抜き、駆け寄る男を斬り伏せる
「残念ですが貴方達の刃、晋助には届きませんよ」
呆気ないもので 体の調子が戻る頃には
甲板に残るのは優と玉菊だけだった
「使えない人ばかり寄越してっ!」
短刀を力一杯に握りこちらに向ける玉菊
「その短刀で何が出来るのです?」
「私は
そう言い放ち玉菊は自らの腹へと突き刺した
目の前で倒れ込む玉菊
肩で息をしながら細々とした声で語った
常連客であった 最愛の人を殺されたのだと
その者の名は確かに聞き覚えがあった
攘夷浪士に近付いては 幕府にその情報を売り渡していた連中のトップだった
血を吐きながら 語った玉菊の亡骸を見つめ
刀を手にしたまま曇天を見上げた