*chamomile*
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日が沈みきって1時間ほどしてから
鬼兵隊の船がとまる港へ着いた
ずいぶんと遅くなってしまった 晋助はもう起きているのだろうか
そう思って 船を見上げれば 自室に灯る明かりが見える
(起きてはいるみたいですね……)
おかえりなさいと船の警備に当たっていた隊士達に声をかけられる
ただいま と返しながら甲板へとあがる
自室に居ると思っていたその人は
船首の方から睨みつけるようにこちらを見ていた
「こんな所にいらっしゃるとは、客人をほっておいて良いのですか、晋助?」
「かまわねぇよ、見られて困るもんは今はねぇからな。」
「そうですね、2日前に片しておいてよかったですよ」
近寄りもせず 遠ざかりもしない距離で話していた
「で、珍しく帰りが遅かったじゃねぇか。
どこ行ってた、優。」
(不機嫌な原因は私でしたか……)
「江戸へ来るのも久しぶりでしたから、街をみて回っていただけです。
心配おかけしたなら、ごめんなさい。」
「本当に街歩いてただけか?」
「えぇ、ずいぶん賑わっていて楽しかったですよ」
(銀や小太郎に会ったと言ったらどんな反応をされるやら…)
そんな事を考えているうちに 近づいてきた高杉に抱きしめられ 顎を掴まれる
「誰に会った」
冷たく言い放つその様に 背筋がゾクリとする
(とてもいい感覚です…昂ってしまいますね)
「銀と小太郎にお会いしましたよ」
その真実により一層睨みを利かせ
顎にかかっていた手は首筋にうつる
「近状報告を少ししただけです、何もありませんよ」
「そいつはどうだろうな
あいつらは俺の元に[#ruby=優_おまえ#]を置いておきたくはないバスだ」
首筋にかけられた手の力は少し強くなる
「そうやって脅迫しているおつもりなら悪いのですが、その場所では絞め殺せませんよ?」
高杉の手は首筋にかかっているものの
絞め殺すのであれば少々位置が悪い
狙ってのことだと分かっていながら、優は挑発する
「ククッ…いい度胸してんじゃねぇか」
首筋をさらに強く握られると同時に
優は手に持っていた薬箱から手を離す
高杉は優を片手で軽く持ち上げ前方へ投げると同時に薬箱が音を立てて転がる
2人は同時に刀を抜く
体制を整えようとする優に容赦なく高杉は切りかかる
ギリギリの所で攻撃を阻止する
体制を整えるためにひいた高杉に
走り込み切り込む
両者の剣は互いの皮膚へは届かず
激しくぶつかる刃の音だけが響く
「晋助様!」
船内からの扉が開き 簪の鈴の音を響かせ玉菊が現れる
「何で歩いてるっすか!晋助様に怒られるっすよ、待つっす!!」
予期せぬ登場人物達に
鍔迫り合いをしていた2人は剣をひく
「優さん?
晋助様、何を…」
「し、晋助様、優様!?」
「部屋にいろと言ったはずだが」
その場で呆然と立ちすくむ玉菊とまた子の方を見てきつく言う
「興ざめですね……」
優は刀を手にしたまま 高杉に背を向ける
「おい、優。」
背後から近付く高杉の気配を感じ刀を持つ手に力を込める
(きます…)
刀をまっすぐ真上に向け
後方から首筋に切りかかる刀を防ぐ
「決着はまた今度に致しましょう、晋助」
後方から未だ殺意を向ける高杉に伝えながら
高杉の刀を押しのけ 転がったままの薬箱の元へと歩みを進める
それ以上高杉は攻撃してくることも無く
互いに刀を鞘に収める音が静まり返る甲板に響く
薬箱を拾い上げ 心配そうにこちらを見るまた子に
小さく 大丈夫よ と告げ
その横を通り過ぎ研究所へ足を進める