*chamomile*
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自室の扉を開けば
晋助は、窓際で煙管をふかせ
沈みきった太陽が未だ生み出しているグラデーションを見つめている
「おはよう、起きてたんですね」
ブーツを脱ぎ座敷にあがり
洗面台で手を洗って
薬箱を取り晋助の前に座り
ニコニコして待っていれば
仕方ないと言わんばかりに煙管の灰を落とす
「こっちに来い」
優しく微笑むので、愛おしくなり
晋助の膝の上に跨り、ぎゅっと抱き締めれば
軽く抱き返し頭を撫でる
顔をあげ晋助の左頬に触れ
目にかかる髪を耳にかける
数束はサラサラと戻ってきてしまうが
縫い閉じられた左目の消毒するには充分になった
膝の上に乗ったまま、後方にある薬箱を引き寄せ
消毒液と包帯を取り出す
消毒液を準備している間
晋助は私の結った髪を指で弄ぶ
私達はあまり言葉を交わさないし
常にそばに居る訳でもない
ほんの一時、こんな風に寄り添い合う
お互い何も発することのないまま
包帯は巻き終わる
巻き終わった包帯の上から
膝立ちし、左目に願いを込め口付ける
(今宵も晋助が無事で帰って来ますように)
耳にかけていた髪を下ろしてやれば
そっと抱き締められ、ドキッとする
どちらともなく唇を交わす
深く浅く、離れている時を埋められるよう
満たされるまで
半刻ほど経てば
扉の外から声がかかり
食事が運ばれる
私は夕食だが、
晋助は朝食に当たるので、軽い物
向かい合って違うものを食べる事は少なくはない
もちろん、朝からともに同じ物を食べる事だって一応…ある
先に食べ終えた晋助は
煙管に火をつけ 時計を見やる
ふぅーっと煙を吐き
立ち上がり、立てかけてあった刀を腰に差す
「優、俺は明後日の昼まで戻らねぇ
いつも通り頼んだ」
私は箸を起き
その場で晋助を見送る
「いってらっしゃい」
短い返事を返し部屋から出ていってしまう
1人先程までそこに居た晋助を想い
箸をすすめる
1人寂しく食べ終えた後 二人分の膳を廊下へ出し
桜のお香を取りだし 炊く
「またしばらく1人ですか…」
窓際から
甲板にいる晋助達の姿を
居なくなるまで眺めていた