Love me, love my dog.
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ジャスティスタワー内のヒーロー用の食堂で、唐揚げに箸を付けようとした虎徹は手を止めた。
「ご一緒してもいいですか?」
「もちろん! 精が出るな、ドッグ」
「いやあ。まだまだです」
トレーニングウェアの名前が、虎徹の向かいの席にトレーを置いた。その上にはグリーンサラダにヨーグルト、そしてコーヒーがあった。
「それだけか? 身体保たねえだろ」
「ダイエット中なんです」
有無を言わさない笑顔に、オジサンは「そ、そう……」と黙った。
名前はレタスにフォークを突き立てて、口に運んだ。指摘の通り、運動の後にしてはやっぱり味気ないなと感じた。そのまま、上目遣いで向かいの先輩を見つめた。
「折り入ってタイガーさんにご相談があるんですけど……」
「おう! なんだ、なんでも言ってみろ」
「バーナビーのことで」
「バニー?」
名前は周囲を気にしてか、声を潜めて身を乗り出し、虎徹に顔を近づける。
「私について、何か言ってませんでしたか? 飽きたとか地味だとか最近調子乗ってるとか、別れたいとか……」
「言ってねえよ! ったく、お前そんなにネガティブだったか?」
「す、すみません……」
「謝るこたねえけど」
本気で凹み出した名前に、「自分で言って自分でショック受けてたら世話ねえな」と虎徹は内心呆れ顔をした。
「バニーはお前のことちゃあんと好きでいるように見えるけどな」
「でも、ヒーローになってから忙しくてあんまり二人の時間取れてないし、生活が不規則で少し太ったし、ニキビもできちゃったし……」
「んなもん気にしねえよ!」
「タイガーさんじゃなくてバーナビーの声で聞きたい……」
「何気にひどくねえか、お前?」
「バーナビーって、スターなんですよ。ご存知です?」
「はあ」
あ、これなんだっけな。あれだ、デジャブってやつだ。虎徹は泥酔したバーナビーを相手にしたときのことを思い出していた。名前は意にも介さず、熱に浮かれた眼差しで語り出す。
「容姿とか実力とか人気とか、そういうのを抜きにしてなんかオーラ? 雰囲気が別格なんです」
「そういうもんかねえ」
「アカデミー時代に認識してくれていたこと自体奇跡なのに、まさか今付き合えてるなんて自分でも信じられません。長い夢を見ているのかも」
「そういう感じでバニーにも接してんの?」
「まさか! 彼とは対等であろうと心掛けています。たとえ虚勢でも」
「なんつーか、バニーも難儀だな……」
「僕がなんですって?」
食堂の入り口にその人影はあった。虎徹や名前同様、トレーニング後にシャワーを浴びたのだろう、首にタオルを下げたバーナビーが立っていた。
「そんなに顔を近づけて、お二人がそんなに仲が良かったなんて知りませんでしたよ」
「そういうのじゃねえって! なあドッグ!」
「当然です! ねえ待ってバーナビー!」
名前は立ち去るバーナビーを必死で追いかけた。残されたのは虎徹と、二人分のトレーだけだった。
「全然食べてねえじゃねえか、勿体ねえ」
まだ湯気が昇るブラックコーヒーに、虎徹の顔が反射する。若者の恋を憂いながらも応援する、年長者の顔だった。
「バーナビー! タイガーさんとは何もないって!」
「知ってますよ、それくらい」
「へっ?」
廊下の真ん中でバーナビーが足を止めた。名前も続いて立ち止まる。
「あなたはともかく、虎徹さんは隠し事ができませんから」
判断基準は私への信頼じゃなくて相棒の性格かい、と名前はムッとせざるを得なかった。
「どうせ、なにか僕のことで相談していたんでしょう。直接僕に言ったらどうです」
「どうせって! その通りだけど」
「ほら、やっぱりそうだ」
他のヒーローや関係者も通る場所で立ち話なんて、と二人はすぐ近くのドリンクコーナーに移動した。一角にはコーヒーメーカーと自動販売機、丸いカウンターテーブルとベンチが備え付けられている。
バーナビーは名前にエスプレッソを手渡す。その何気ない動きすらスマートで、彼女にとっては虎徹に語った「別格」の「スター」そのものだった。
「バーナビー、最近意地悪ね」
「まさかそんなことを?」
「違います! ただの感想」
名前は紙コップに口をつけた。食堂にトレー置きっぱなしにしてきちゃったな、この後片付けておかなくちゃと半分現実逃避した。
「最近、あまり時間が取れませんでしたから」
「え?」
「あなたにも寂しい思いをさせてばかりで」
「ううん、そんな……」
自分のカップをテーブルに置き、バーナビーは両手を広げた。
「な、なに……」
「どうぞ? 名前の大好きなバーナビー・ブルックス Jr. ですよ」
「は!?」
「雑誌や新聞の切り抜きをスクラップブックにして、僕のサイン入り限定グッズが出る度に何度も応募しているらしいですね」
「うわっ」
「僕がCMを務めた商品は必ず買うとか。自分で言うのもアレですけど、流石にキリがないでしょう。それから」
「ちょっとちょっと! なんで知ってるの!?」
「本当だったんですね」
腕を広げたまま、バーナビーは名前の熱烈なファン活動を暴露し始める。彼女は彼女で顔を真っ赤にしながら「あ、わかった! アニエスでしょう! あいつ!」といない人間に当たり始める。
「で、ファンである名前はハグに応えてくれないんですか?」
「……こんなこと他のファンにもやってるんだ」
「そうしてほしいんですか?」
「う、ううう……」
名前は降参と呟き、両手を小さく挙げたまま彼の胸に収まった。女性の平均身長を越す名前でも、その身体はすっぽりと隠れてしまう。ヒーロースーツに身を包んでいなくても硬い胸板から伝わる鼓動に、自然と口元が緩む。少しでも近づきたくて、背伸びをして体重を預けた。
「ま、待って! 私汗臭くない? シャワーは浴びたんだけど午前中結構動いたから」
「なんです、今更」
「今更!? ずっと臭いって思ってたの!?」
「そんなわけないでしょう。ただ、何度も同じベッドで寝てるのに」
「こんなところで言わないでそんなこと!」
「で、虎徹さんには何を相談してたんです?」
「忘れちゃった」
「そんなわけないでしょう。ね、教えて」
「しつこい〜〜」
「ええ、僕はしつこいんです。ご存知なかったんですか?」
「知ってたかも〜〜」
「ご一緒してもいいですか?」
「もちろん! 精が出るな、ドッグ」
「いやあ。まだまだです」
トレーニングウェアの名前が、虎徹の向かいの席にトレーを置いた。その上にはグリーンサラダにヨーグルト、そしてコーヒーがあった。
「それだけか? 身体保たねえだろ」
「ダイエット中なんです」
有無を言わさない笑顔に、オジサンは「そ、そう……」と黙った。
名前はレタスにフォークを突き立てて、口に運んだ。指摘の通り、運動の後にしてはやっぱり味気ないなと感じた。そのまま、上目遣いで向かいの先輩を見つめた。
「折り入ってタイガーさんにご相談があるんですけど……」
「おう! なんだ、なんでも言ってみろ」
「バーナビーのことで」
「バニー?」
名前は周囲を気にしてか、声を潜めて身を乗り出し、虎徹に顔を近づける。
「私について、何か言ってませんでしたか? 飽きたとか地味だとか最近調子乗ってるとか、別れたいとか……」
「言ってねえよ! ったく、お前そんなにネガティブだったか?」
「す、すみません……」
「謝るこたねえけど」
本気で凹み出した名前に、「自分で言って自分でショック受けてたら世話ねえな」と虎徹は内心呆れ顔をした。
「バニーはお前のことちゃあんと好きでいるように見えるけどな」
「でも、ヒーローになってから忙しくてあんまり二人の時間取れてないし、生活が不規則で少し太ったし、ニキビもできちゃったし……」
「んなもん気にしねえよ!」
「タイガーさんじゃなくてバーナビーの声で聞きたい……」
「何気にひどくねえか、お前?」
「バーナビーって、スターなんですよ。ご存知です?」
「はあ」
あ、これなんだっけな。あれだ、デジャブってやつだ。虎徹は泥酔したバーナビーを相手にしたときのことを思い出していた。名前は意にも介さず、熱に浮かれた眼差しで語り出す。
「容姿とか実力とか人気とか、そういうのを抜きにしてなんかオーラ? 雰囲気が別格なんです」
「そういうもんかねえ」
「アカデミー時代に認識してくれていたこと自体奇跡なのに、まさか今付き合えてるなんて自分でも信じられません。長い夢を見ているのかも」
「そういう感じでバニーにも接してんの?」
「まさか! 彼とは対等であろうと心掛けています。たとえ虚勢でも」
「なんつーか、バニーも難儀だな……」
「僕がなんですって?」
食堂の入り口にその人影はあった。虎徹や名前同様、トレーニング後にシャワーを浴びたのだろう、首にタオルを下げたバーナビーが立っていた。
「そんなに顔を近づけて、お二人がそんなに仲が良かったなんて知りませんでしたよ」
「そういうのじゃねえって! なあドッグ!」
「当然です! ねえ待ってバーナビー!」
名前は立ち去るバーナビーを必死で追いかけた。残されたのは虎徹と、二人分のトレーだけだった。
「全然食べてねえじゃねえか、勿体ねえ」
まだ湯気が昇るブラックコーヒーに、虎徹の顔が反射する。若者の恋を憂いながらも応援する、年長者の顔だった。
「バーナビー! タイガーさんとは何もないって!」
「知ってますよ、それくらい」
「へっ?」
廊下の真ん中でバーナビーが足を止めた。名前も続いて立ち止まる。
「あなたはともかく、虎徹さんは隠し事ができませんから」
判断基準は私への信頼じゃなくて相棒の性格かい、と名前はムッとせざるを得なかった。
「どうせ、なにか僕のことで相談していたんでしょう。直接僕に言ったらどうです」
「どうせって! その通りだけど」
「ほら、やっぱりそうだ」
他のヒーローや関係者も通る場所で立ち話なんて、と二人はすぐ近くのドリンクコーナーに移動した。一角にはコーヒーメーカーと自動販売機、丸いカウンターテーブルとベンチが備え付けられている。
バーナビーは名前にエスプレッソを手渡す。その何気ない動きすらスマートで、彼女にとっては虎徹に語った「別格」の「スター」そのものだった。
「バーナビー、最近意地悪ね」
「まさかそんなことを?」
「違います! ただの感想」
名前は紙コップに口をつけた。食堂にトレー置きっぱなしにしてきちゃったな、この後片付けておかなくちゃと半分現実逃避した。
「最近、あまり時間が取れませんでしたから」
「え?」
「あなたにも寂しい思いをさせてばかりで」
「ううん、そんな……」
自分のカップをテーブルに置き、バーナビーは両手を広げた。
「な、なに……」
「どうぞ? 名前の大好きなバーナビー・ブルックス Jr. ですよ」
「は!?」
「雑誌や新聞の切り抜きをスクラップブックにして、僕のサイン入り限定グッズが出る度に何度も応募しているらしいですね」
「うわっ」
「僕がCMを務めた商品は必ず買うとか。自分で言うのもアレですけど、流石にキリがないでしょう。それから」
「ちょっとちょっと! なんで知ってるの!?」
「本当だったんですね」
腕を広げたまま、バーナビーは名前の熱烈なファン活動を暴露し始める。彼女は彼女で顔を真っ赤にしながら「あ、わかった! アニエスでしょう! あいつ!」といない人間に当たり始める。
「で、ファンである名前はハグに応えてくれないんですか?」
「……こんなこと他のファンにもやってるんだ」
「そうしてほしいんですか?」
「う、ううう……」
名前は降参と呟き、両手を小さく挙げたまま彼の胸に収まった。女性の平均身長を越す名前でも、その身体はすっぽりと隠れてしまう。ヒーロースーツに身を包んでいなくても硬い胸板から伝わる鼓動に、自然と口元が緩む。少しでも近づきたくて、背伸びをして体重を預けた。
「ま、待って! 私汗臭くない? シャワーは浴びたんだけど午前中結構動いたから」
「なんです、今更」
「今更!? ずっと臭いって思ってたの!?」
「そんなわけないでしょう。ただ、何度も同じベッドで寝てるのに」
「こんなところで言わないでそんなこと!」
「で、虎徹さんには何を相談してたんです?」
「忘れちゃった」
「そんなわけないでしょう。ね、教えて」
「しつこい〜〜」
「ええ、僕はしつこいんです。ご存知なかったんですか?」
「知ってたかも〜〜」