「自分と名字クンは御剣検事のためならたとえ火の中山の中ッス！」
「それを言うなら水の中だろう……」
「同じことッス！」

　糸鋸刑事と名字刑事は、私の信頼できる部下だ。糸鋸刑事はそそっかしい面もあるが志のある、真っ直ぐな男だ。そして彼をときに支え、ときに導く冷静な名字刑事。そんな二人を私は次第に頼るようになっていた。……こんなにも早く、そして突然にこのコンビと働けなくなるとは夢にも思わなかった。

「つまりは同期ということか？」
「刑事歴ならそうッス！　名字クンは確か御剣検事と同い年ッスから」
「コンビならいつも一緒に行動していたのだろうか」
「そりゃ同じ課の刑事ッスから、同じ現場に回されるのがほとんどだったッス。でもプライベートとなると……。今思えば自分、名字クンの私生活についてはサッパリッス……。」

　糸鋸刑事と刑事歴が同じということは、私が検事になったのもほとんど同じ時期だ。つまり彼女は二十歳のときに刑事課へ異動になった。
　そして糸鋸刑事は大きく肩を落とした。何年も共に働いてきた仲間について、何も知らない自分を不甲斐なく感じているのだろう。……それは私も同じだ。

「 "マコクン" とは——」
「マコクッ、すっ須々木クンはただのコウハイッス！」
「……まあいいだろう。彼女の、そのようなアレに心当たりはないか？」
「交友関係……。シゴトシゴトばっかりだったスからねえ」
「ううム……」

　今のところ糸鋸刑事に心当たりはないようだ。別の切り口で彼女についてもっと深掘りしてみよう。