短編
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*書いている人は方言がわかりません。ご容赦ください。
*名前付きのモブ(比江島 :19歳男、狙撃手)がよく出てきます。
「名字ちゃん、泣き顔もめっちゃカワイイな」
「は? 泣いてねーし」
*
「B級ランク戦8日目夜の部! 今シーズンの試合もいよいよこれが最後となりまーす!
実況はわたくし武富桜子、解説席には昼の部を終えて駆けつけてくれたこちらのお二方!」
「生駒旋空でおなじみ、生駒隊の生駒隊長!
そしてスコーピオン手裏剣の使い手、名字隊の名字隊長です!」
「「どうぞよろしく」」
「昼の部をご覧になれなかった方のために振りかえりますと、生駒隊、弓場隊、名字隊、鈴鳴第一による四つ巴の混戦になりました。最終スコアは——」
「名字隊長はいかがでしたか?」
「え、っとそうですね。やはり狙撃の援護が無いと苦しい場面が多かったですね。今回はうち以外狙撃手がいたこともあって対策は出来る限り打ったつもりだったのですが、後手に回ってしまったことが一番の反省点です」
「やっぱそれな。ヒエ辞めて隠岐も寂しがっとったわ」
「名字隊の狙撃手だった比江島 隊員は先日ご家庭の都合で脱退されました。そこが勝敗の分かれ目だったということでしょうか?」
「甘ったれるなって怒られそうですけどね。次のシーズンまで時間がありますし、当面は中距離支援の射手とも相談してフォーメーションを考え直してみます」
「名字隊は攻撃手2、射手1、狙撃手1の非常にバランスの良いチームでしたからね。今後の新戦術にも注目です!」
「でもようやった思うわ。鋼とやり合ってたときのスパイダーとグラスホッパーで擬似乱反射 。普通に感動したし」
「……シーズン終わるから言うけど、あれ本来は対生駒旋空の技なんだけどね。援護がないとコストの割に合わないし、今回は水上と神田にいいように動かされた感あるなー」
「えっそんな名字ちゃん、俺のために……?」
「言ってろ。次はぜってー落とす」
「さあさあ解説席もバチバチに盛り上がってきたところで、夜の部の準備ができたようです!
対戦カードは二宮隊、影浦隊、東隊…………」
「あ、マリオちゃん」
「名前さんや、さっきはどうも」
「何? 名字さん?」
「名前ちゃん先輩おつかれっす!」
「あれ、イコさんは?」
「トイレ。生身に戻った瞬間ダッシュしてた」
「夜の部終わるの待ってたのかー、生駒隊仲良いね。これから打ち上げ?」
「先輩もどうっすか!?」
「なんでやねん、さっき名字隊も見かけましたよ」
「うちはこれから反省会。お疲れ会と送別会は週末なの」
「送別会ってヒエさんの? 聞いとったけど寂しくなりますわ」
「隠岐と比江島さん、仲良かったもんな」
「私は明日報告がてら比江島に怒られに行くけど。隠岐も来る?」
「エンリョしときますー」
「え、なんで俺抜きで盛り上がってるん?」
「トイレダッシュのイコさんや!」
「よっ浪速の尿意」
「大の方や」
「最悪」
「イコさんすんません、明日から俺ら名字第二隊のメンバーです」
「何やと、名字ちゃんの泥棒猫ぉ!」
「もう行っていい?」
「うちのアホどもがほんますんません」
「また稽古つけてくださいねー!」
「マリオちゃんが謝ることないよ。海もまた今度」
……という会話をしたのが約一時間前。
チームに高校生もいることだし試合の振り返りもそこそこに切り上げ、自宅のワンルームマンションまであと数メートル。異変に気付いてしまった。
私の部屋の窓から、光が漏れている。
出る前に確認したから消し忘れは絶対にない。唯一合鍵を持ってる親も必ず連絡を入れてから来る。何かの点検とか? いやいや、家主が不在のときに断りもなく入るなんてありえない。
認めたくなくても、どこからどう見てもあの窓は私の部屋だ。角部屋、ベランダに出てる洗濯ハンガー、掛けてある布巾。間違いようもない。
どうしようどうしようどうしよう。
警察? ご近所さんに知られなくないし、万が一親が抜き打ちで来てたりしたら赤っ恥だ。管理人はこの時間ならとっくに帰ってる。今22時過ぎとかだよ? ボーダー本部も夜勤と泊まり込みの技術者以外いないだろうし、そもそも今日はB級ランク戦最終日。残ってたとしてもどのチームも今頃どんちゃん騒ぎ。ののは弓場と神田と飲み会(ノンアル)って言ってたし、羽矢はなんだっけ、深夜アニメリアタイのために会議後直帰って言ってた気がする! 楽しそうでいいなあいつら! 加古さん……はダメだ。こんなことで迷惑かけられない。
誰か、まだ帰ってなくて、すぐ来てくれそうで、二人っきりでも気まずくなくて、割と迷惑かけても大丈夫そうな人。そんな人いるわけ——
『生駒隊仲良いね。これから打ち上げ?』
『先輩もどうっすか!?』
『名字ちゃんの泥棒猫ぉ!』
「……もしもし。こんなときに申し訳ないんだけど、ちょっと」
「わ。マジで来た」
「いやいやいや、あんなん言われたら秒で店飛び出すに決まっとるやろ。え、ナニ? もしかしてドッキリ?」
「大マジ。助かった」
近くのコンビニで待っていると、赤い隊服にゴーグル姿。臨戦態勢の生駒が来てくれた。電話かけたときは生身だっただろうに。トリガーの私的利用は隊務規定違反だよって言おうとして、いや誰のためだよと反省する。
「なんや、えらい落ち着いとるやん。俺なんか動揺のあまりウーロン茶溢してうっかりお茶漬け作っとったわ」
「なんか生駒の顔見たら冷静になった。もしかしたら泥棒じゃないかもしれないしね。とりあえず今日は本部の仮眠室か隊室で寝泊りするつもり」
「隊室にしとき。冬島さんのイビキめっちゃやかましいで」
「今シーズン終わりとかヒエの脱退とか、ただでさえドタバタしとったのにそれどころちゃうな」
「……ごめん。往復分のタクシー代出すよ。5000で足りるよね?」
「名字隊長男前! ってアホか。すごすご店戻ったらマリオちゃんと海にどつかれるわ。本部まで送りますぅー」
「ええ……どうも……」
「嫌がってる顔もカワイイな」
「トリオン体回復まであとどれくらいかかるかな」
「ヒエ留学やろ? すごない?」
「シャクだけどすごいよ。最終戦まで出る! って粘ってくれてたっぽいけど手続きの都合で出られなかったんだよね」
「名字隊といえば名字ちゃんとヒエの二枚看板やったもんな」
「狙撃手どうしよう。隠岐ちょうだい」
「それはあかん」
「そうだ、明日報告に行かなきゃいけないんだった……。中位落ちしたなんて言ったら絶対怒られる」
「俺も一緒に行ったろか」
「なんでよ」
「比江島クンがいなくても名字ちゃんは僕が守りますーって」
「……泥棒から?」
「生きとし生けるすべてのものから?」
「じゃあ隠岐ちょうだい」
「顔か、やっぱりイケメンがええんか」
「は? 隠岐と比江島って戦法 が似てるから戦りやすいかなって」
「色々あって疲れたやろ、泣いてええで。イコさんの胸で」
さっきからこいつマジかと思って思わず見上げるが、ゴーグル越しの表情は窺えない。いつまでトリオン体なんだよ、昼にベイルアウトしてまだトリオン体が復活してない私へのマウントか? ……いや、そもそもゴーグル無しでも鉄仮面だった。やめやめ、マリオちゃんも言ってたけど、生駒は女の子なら誰にでもカワイイって言うし本気にするだけ無駄だ。
「……初めて生駒旋空に手も足も出ずボロ負けしたときみたいに?」
「名字ちゃんはどんな顔しててもカワイイけど、あん時が一番グッと来たわ」
「誤解してるみたいだけど泣いてないし。目にゴミが入っただけ」
生駒は始終いつもの感じで、いいって言ってるのに隊室の前まで送り届けてくれた。「貴重品は鍵掛けて、自分とこの隊員以外入れんように設定しとくんやで」と念押しされた。「あ、俺の枕使う?」と本当にどこからか枕を取り出したときには、流石にお腹抱えて笑ってしまった。朝起きてすぐ換装したから、持ってた枕まで格納されてたらしい。借りるのは丁重にお断りしたけど。
今思うとランク戦や防衛任務なんかよりよっぽどブルってた気がするけど、生駒が笑わせてくれたお陰か寝つきは早かった。
起きてから知った話だけど、その後生駒が警察と忍田さんに事を説明してくれたらしい。特に警察に対しては被害者本人じゃなくていいのかって思ったけど、B級3位部隊を率いる生駒隊長の社会的地位は私が思ってるより高かったようだ。
朝イチで警察署に向かい、調査に応じた。目撃証言と照らし合わせて犯人はあっさり特定され、捕まるのも時間の問題らしい。ちなみに犯人は数週間前から家の周りをうろついていて、泥棒だけでなくストーカーでもあったという。気配に全然気付かなかったのには少し凹んだ。生身だったから仕方ないって、誰にでもなく言い訳しておく。
結局比江島には怒られた。B級上位の座を守れなかったことよりも昨夜の泥棒騒ぎでしこたま怒られた。曰く、「まずは通報だろうが!」。軽くパニックだったとはいえその通りである。
忍田さんへの報告と自主練のためにその足で本部に行ったら珍しく迅に会った。「このネタで拗らせるとめんどくさいから」と有望そうな狙撃手の女の子を紹介してくれた。奴のやることは毎回よくわからないが、今回ばかりはありがたかった。
「あ、生駒っち。援護射撃しといたから今度なんか奢ってよね」
「おん、ラッキーアイテムの枕もよう役に立ったわ。おおきに」
*名前付きのモブ(
「名字ちゃん、泣き顔もめっちゃカワイイな」
「は? 泣いてねーし」
*
「B級ランク戦8日目夜の部! 今シーズンの試合もいよいよこれが最後となりまーす!
実況はわたくし武富桜子、解説席には昼の部を終えて駆けつけてくれたこちらのお二方!」
「生駒旋空でおなじみ、生駒隊の生駒隊長!
そしてスコーピオン手裏剣の使い手、名字隊の名字隊長です!」
「「どうぞよろしく」」
「昼の部をご覧になれなかった方のために振りかえりますと、生駒隊、弓場隊、名字隊、鈴鳴第一による四つ巴の混戦になりました。最終スコアは——」
「名字隊長はいかがでしたか?」
「え、っとそうですね。やはり狙撃の援護が無いと苦しい場面が多かったですね。今回はうち以外狙撃手がいたこともあって対策は出来る限り打ったつもりだったのですが、後手に回ってしまったことが一番の反省点です」
「やっぱそれな。ヒエ辞めて隠岐も寂しがっとったわ」
「名字隊の狙撃手だった
「甘ったれるなって怒られそうですけどね。次のシーズンまで時間がありますし、当面は中距離支援の射手とも相談してフォーメーションを考え直してみます」
「名字隊は攻撃手2、射手1、狙撃手1の非常にバランスの良いチームでしたからね。今後の新戦術にも注目です!」
「でもようやった思うわ。鋼とやり合ってたときのスパイダーとグラスホッパーで擬似
「……シーズン終わるから言うけど、あれ本来は対生駒旋空の技なんだけどね。援護がないとコストの割に合わないし、今回は水上と神田にいいように動かされた感あるなー」
「えっそんな名字ちゃん、俺のために……?」
「言ってろ。次はぜってー落とす」
「さあさあ解説席もバチバチに盛り上がってきたところで、夜の部の準備ができたようです!
対戦カードは二宮隊、影浦隊、東隊…………」
「あ、マリオちゃん」
「名前さんや、さっきはどうも」
「何? 名字さん?」
「名前ちゃん先輩おつかれっす!」
「あれ、イコさんは?」
「トイレ。生身に戻った瞬間ダッシュしてた」
「夜の部終わるの待ってたのかー、生駒隊仲良いね。これから打ち上げ?」
「先輩もどうっすか!?」
「なんでやねん、さっき名字隊も見かけましたよ」
「うちはこれから反省会。お疲れ会と送別会は週末なの」
「送別会ってヒエさんの? 聞いとったけど寂しくなりますわ」
「隠岐と比江島さん、仲良かったもんな」
「私は明日報告がてら比江島に怒られに行くけど。隠岐も来る?」
「エンリョしときますー」
「え、なんで俺抜きで盛り上がってるん?」
「トイレダッシュのイコさんや!」
「よっ浪速の尿意」
「大の方や」
「最悪」
「イコさんすんません、明日から俺ら名字第二隊のメンバーです」
「何やと、名字ちゃんの泥棒猫ぉ!」
「もう行っていい?」
「うちのアホどもがほんますんません」
「また稽古つけてくださいねー!」
「マリオちゃんが謝ることないよ。海もまた今度」
……という会話をしたのが約一時間前。
チームに高校生もいることだし試合の振り返りもそこそこに切り上げ、自宅のワンルームマンションまであと数メートル。異変に気付いてしまった。
私の部屋の窓から、光が漏れている。
出る前に確認したから消し忘れは絶対にない。唯一合鍵を持ってる親も必ず連絡を入れてから来る。何かの点検とか? いやいや、家主が不在のときに断りもなく入るなんてありえない。
認めたくなくても、どこからどう見てもあの窓は私の部屋だ。角部屋、ベランダに出てる洗濯ハンガー、掛けてある布巾。間違いようもない。
どうしようどうしようどうしよう。
警察? ご近所さんに知られなくないし、万が一親が抜き打ちで来てたりしたら赤っ恥だ。管理人はこの時間ならとっくに帰ってる。今22時過ぎとかだよ? ボーダー本部も夜勤と泊まり込みの技術者以外いないだろうし、そもそも今日はB級ランク戦最終日。残ってたとしてもどのチームも今頃どんちゃん騒ぎ。ののは弓場と神田と飲み会(ノンアル)って言ってたし、羽矢はなんだっけ、深夜アニメリアタイのために会議後直帰って言ってた気がする! 楽しそうでいいなあいつら! 加古さん……はダメだ。こんなことで迷惑かけられない。
誰か、まだ帰ってなくて、すぐ来てくれそうで、二人っきりでも気まずくなくて、割と迷惑かけても大丈夫そうな人。そんな人いるわけ——
『生駒隊仲良いね。これから打ち上げ?』
『先輩もどうっすか!?』
『名字ちゃんの泥棒猫ぉ!』
「……もしもし。こんなときに申し訳ないんだけど、ちょっと」
「わ。マジで来た」
「いやいやいや、あんなん言われたら秒で店飛び出すに決まっとるやろ。え、ナニ? もしかしてドッキリ?」
「大マジ。助かった」
近くのコンビニで待っていると、赤い隊服にゴーグル姿。臨戦態勢の生駒が来てくれた。電話かけたときは生身だっただろうに。トリガーの私的利用は隊務規定違反だよって言おうとして、いや誰のためだよと反省する。
「なんや、えらい落ち着いとるやん。俺なんか動揺のあまりウーロン茶溢してうっかりお茶漬け作っとったわ」
「なんか生駒の顔見たら冷静になった。もしかしたら泥棒じゃないかもしれないしね。とりあえず今日は本部の仮眠室か隊室で寝泊りするつもり」
「隊室にしとき。冬島さんのイビキめっちゃやかましいで」
「今シーズン終わりとかヒエの脱退とか、ただでさえドタバタしとったのにそれどころちゃうな」
「……ごめん。往復分のタクシー代出すよ。5000で足りるよね?」
「名字隊長男前! ってアホか。すごすご店戻ったらマリオちゃんと海にどつかれるわ。本部まで送りますぅー」
「ええ……どうも……」
「嫌がってる顔もカワイイな」
「トリオン体回復まであとどれくらいかかるかな」
「ヒエ留学やろ? すごない?」
「シャクだけどすごいよ。最終戦まで出る! って粘ってくれてたっぽいけど手続きの都合で出られなかったんだよね」
「名字隊といえば名字ちゃんとヒエの二枚看板やったもんな」
「狙撃手どうしよう。隠岐ちょうだい」
「それはあかん」
「そうだ、明日報告に行かなきゃいけないんだった……。中位落ちしたなんて言ったら絶対怒られる」
「俺も一緒に行ったろか」
「なんでよ」
「比江島クンがいなくても名字ちゃんは僕が守りますーって」
「……泥棒から?」
「生きとし生けるすべてのものから?」
「じゃあ隠岐ちょうだい」
「顔か、やっぱりイケメンがええんか」
「は? 隠岐と比江島って
「色々あって疲れたやろ、泣いてええで。イコさんの胸で」
さっきからこいつマジかと思って思わず見上げるが、ゴーグル越しの表情は窺えない。いつまでトリオン体なんだよ、昼にベイルアウトしてまだトリオン体が復活してない私へのマウントか? ……いや、そもそもゴーグル無しでも鉄仮面だった。やめやめ、マリオちゃんも言ってたけど、生駒は女の子なら誰にでもカワイイって言うし本気にするだけ無駄だ。
「……初めて生駒旋空に手も足も出ずボロ負けしたときみたいに?」
「名字ちゃんはどんな顔しててもカワイイけど、あん時が一番グッと来たわ」
「誤解してるみたいだけど泣いてないし。目にゴミが入っただけ」
生駒は始終いつもの感じで、いいって言ってるのに隊室の前まで送り届けてくれた。「貴重品は鍵掛けて、自分とこの隊員以外入れんように設定しとくんやで」と念押しされた。「あ、俺の枕使う?」と本当にどこからか枕を取り出したときには、流石にお腹抱えて笑ってしまった。朝起きてすぐ換装したから、持ってた枕まで格納されてたらしい。借りるのは丁重にお断りしたけど。
今思うとランク戦や防衛任務なんかよりよっぽどブルってた気がするけど、生駒が笑わせてくれたお陰か寝つきは早かった。
起きてから知った話だけど、その後生駒が警察と忍田さんに事を説明してくれたらしい。特に警察に対しては被害者本人じゃなくていいのかって思ったけど、B級3位部隊を率いる生駒隊長の社会的地位は私が思ってるより高かったようだ。
朝イチで警察署に向かい、調査に応じた。目撃証言と照らし合わせて犯人はあっさり特定され、捕まるのも時間の問題らしい。ちなみに犯人は数週間前から家の周りをうろついていて、泥棒だけでなくストーカーでもあったという。気配に全然気付かなかったのには少し凹んだ。生身だったから仕方ないって、誰にでもなく言い訳しておく。
結局比江島には怒られた。B級上位の座を守れなかったことよりも昨夜の泥棒騒ぎでしこたま怒られた。曰く、「まずは通報だろうが!」。軽くパニックだったとはいえその通りである。
忍田さんへの報告と自主練のためにその足で本部に行ったら珍しく迅に会った。「このネタで拗らせるとめんどくさいから」と有望そうな狙撃手の女の子を紹介してくれた。奴のやることは毎回よくわからないが、今回ばかりはありがたかった。
「あ、生駒っち。援護射撃しといたから今度なんか奢ってよね」
「おん、ラッキーアイテムの枕もよう役に立ったわ。おおきに」