グレー・コラージュ・ソング
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こちらは「end2:0時に解ける魔法」の続きです。先にそちらをお読みになってから、お進みください。
名字は姿形残らず消滅してしまったため、墓を作ることも葬式をすることも叶わなかった。天涯孤立で、大学も通っていなかった彼女。高校までの友達ともあまり連絡を取っていなかったようだ。……名字は自分のことをゾンビだと言っていた。諦めていたんだろう。家族団欒を、友情を、人間関係を、……恋を。おれは、名字なら、生きて隣にいてくれるなら、なんだってよかったのに。
彼女の消滅を知るのは、おれと名字の後輩の朱村ちゃんだけだ。誰にも言わないようにしよう、と朱村ちゃんと示し合わせた。
「せんぱい、もう見えなくなっちゃいましたけど、また会えます。イチカは、いつか召されて同じところへ行くんです。だから……だから、さよならじゃ、ないんです」
いつか名字と再会できる彼女を、純粋に羨ましいと思った。
それでも時間は止まってくれない。名前ちゃん最近来てくれないね、と零した宇佐美たちには名字は引っ越したんだと伝えた。特に感情を出さずに言えたはずだったが、小南には怒りや呆れが混ざったような複雑な顔で、溜め息をつかれた。遊真は、何も言わないでくれた。……そんなにおれ、気遣われる感じだったっけ。
悲しんでも時間は待ってくれない。あれから時間は経った。メガネくんたちも確実に力をつけ、成長している。ヒュースも隊に加わった。未来ある若者たちの成長は恐ろしい。
__未来ある、若者。おれらだってその“未来ある若者”のはずなんだけどな。
進まなきゃいけない、名字の分まで。いつか死ぬとき、あいつと同じところへ行けるか分かんないけど。あいつに会えたとき、胸の張れる自分であるために。
「はあー……」
それでも動けなくなるときは、あいつの声が聞きたくなる。
人を忘れるとき、まず声から忘れていくらしい。なるほど道理で母さんの声が思い出せないわけだ。なあ、おまえの声を失わないうちに、
__会いに来てくれよ、名字。
「じーんくん」
水色のフリフリワンピース、じゃない。ただのワンピース。紺色の。年相応の。でもその身体は15歳で止まっていて、小さい。おれの、大切な女の子。
「迅くんがどこにいるか分かんなくてとりあえず玉狛に行ったら、栞ちゃんと桐絵ちゃんにすっごい歓迎されちゃったよ」
「…………どうして……」
「説明すると長くなるよ。色々あったの」
「いいよ」
「円環の理がね、一部剥がれ落ちてね、その時巻き込まれたみたい。自分でもよく分かってないんだけど」
その口から発せられる単語をうまく飲み込めないまま、彼女の言葉を聞く。
「ずっと“迅くんにもう一度会わせてください”って祈ってたから、女神様が叶えてくれたのかも。……ねえ迅くん」
名字の瞳に涙が籠る。ただの女の子になった彼女は、震える声で言った。気付いたら腕の中に閉じ込めていた。彼女は、おれのところに帰って来てくれたのだ。
「頑張ってる迅くんに、ご褒美、だよ」
元魔法少女と迅悠一
「あっ迅くん迅くん、再会ついでに聞きたいんだけど」
「なーに」
「この歳からボーダー入るのってやっぱキツいかな?」
「…………え?」
名字がスコーピオンを振り回してる未来が見えた。