グレー・コラージュ・ソング
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「おー!フォンダンショコラ!ありがとうございます〜!」
迅くんに渡した数日後、イチカにもバレンタインでチョコを渡した。迅くんに渡したそれよりもやや形が歪なのは気のせいだ。気のせい。
「で、ボーダーの人にもあげたんでしょ?どうでした!?相手の反応は!」
「喜んでた、と思うよ。冗談で三倍返しねって言ったら十倍にして返すとか言ってたし」
「ほうほう〜!それはよっぽどモテなくてせんぱい以外から貰えなかったか、脈アリかのどっちかですね!」
「うーん。後輩からは一応慕われてるみたいだから全くモテないってことはないと思うんだけど……」
イチカはニマニマしながら紅茶を啜った。少しだけ、一ヶ月後が楽しみになった。
イチカはこの後彼氏とデートなので!と去っていった。彼氏。彼氏かあ……。風とぴゅうとすれ違って、どこか火照っていたような顔の熱が引いた。あれ、と脚が自然と止まる。……わたし、期待、してるの?迅くんと、どうにかなりたいの?……そんな未来はない。恋愛はしない。決めたじゃない、魔法少女の真実を知ったとき。
__つぼみさん、わたしたち、ゾンビなんですか……?
あの時つぼみさんはなんて返したんだっけ。……ああ、そうだ。
__大丈夫よ名前ちゃん、私が付いてるからね。
「……嘘つき」
いなくなっちゃったじゃない。お母さんも、お父さんも、つぼみさんも。きっと迅くんだって。
わたし、何を一人で盛り上がっていたんだろう。魔法少女の結末。死ぬか、魔女になるか。迅くんやイチカ。栞ちゃん、林藤さんや桐絵ちゃん、烏丸くん。優しくしてもらって、楽しくって、見ないようにしていたんだ。わたしも、わたしだって普通の女の子になれた気がして。つぼみさんが魔女になるのを目の当たりにしておきながら、のうのうと。
「だめだなあ……わたし」
左手の中指がぱあと光を放った。普段ソウルジェムはこうして指輪の形をして指に収まっている。ソウルジェムが反応しているということは、結界が近い?
万が一のことも考えて、結界を見つけたら互いに連絡し合うのが常だ。イチカを呼ぼうと携帯に触れたが、彼女は今デート中だと思い出した。わたしには無い覚悟で幸せを掴んでいる彼女の、邪魔はしたくない。最近まで一人で活動してたんだ。大丈夫。
「キュゥべえ、いる?」
「呼んだかい?」
「結界が近いみたいなんだけど、詳しく探れる?」
「イチカは呼ばないのかい?」
「……用事があるんだって、あの子にも」
「へえ。……反応の割に魔力が弱い。きっと使い魔の結界だよ。行くかい?」
肩に乗ったキュゥべえがそう尋ねる。効率だけを考えるなら、グリーフシードを落とさない使い魔は倒すだけ魔力の無駄だ。でも使い魔は魔女の手下。十分人々の脅威になり得る。
「行くよ。」
紛い物だってヒーローになりたい。だって、この道しかないんだもの。
_この時、白い悪魔の目が鈍く光ったことにわたしは気づけなかった。
ペンキで塗りつぶしたような顔の使い魔を双剣で切り倒す。数がまあまあ多いが、一体一体は大したものでもない。小ぶりなナイフを宙に召喚して放っていく。あとはおそらくこの結界の主、他より大きめの使い魔だ。
他の雑魚使い魔と同じようにペンキのような液体で攻撃してくる。この液体を掠めたレースが溶けた、近づきすぎると危険だ。薙刀を生成して、構えた。今までの様子を見るに、液体攻撃の直後に隙がある。攻撃をギリギリまで引きつけてから跳んで、頭上から薙刀の先を叩き込んだ。使い魔は頭からぱっくり二つに割れた。動きが鈍くなった。距離を取って、最後に短剣たちを召喚して放って終わり。そう思っていた。
「…………?」
刃物が、思うように召喚できない?
いつもならすぐイメージ通りに取り出せるそれら。今は、そんな何年もやってきたことができない。困惑して頭が真っ白になったものの、華奢なサーベルを一本創り出すことができたので、それでとどめを刺した。
結界の主を仕留めたことで、結界は消滅した。最後の不調はなんだったんだろう。北風が吹き抜けて、鳥肌がぶるると立った。悪寒がする、気がする。
「風邪かな……」
風邪だといい。
迅くんに渡した数日後、イチカにもバレンタインでチョコを渡した。迅くんに渡したそれよりもやや形が歪なのは気のせいだ。気のせい。
「で、ボーダーの人にもあげたんでしょ?どうでした!?相手の反応は!」
「喜んでた、と思うよ。冗談で三倍返しねって言ったら十倍にして返すとか言ってたし」
「ほうほう〜!それはよっぽどモテなくてせんぱい以外から貰えなかったか、脈アリかのどっちかですね!」
「うーん。後輩からは一応慕われてるみたいだから全くモテないってことはないと思うんだけど……」
イチカはニマニマしながら紅茶を啜った。少しだけ、一ヶ月後が楽しみになった。
イチカはこの後彼氏とデートなので!と去っていった。彼氏。彼氏かあ……。風とぴゅうとすれ違って、どこか火照っていたような顔の熱が引いた。あれ、と脚が自然と止まる。……わたし、期待、してるの?迅くんと、どうにかなりたいの?……そんな未来はない。恋愛はしない。決めたじゃない、魔法少女の真実を知ったとき。
__つぼみさん、わたしたち、ゾンビなんですか……?
あの時つぼみさんはなんて返したんだっけ。……ああ、そうだ。
__大丈夫よ名前ちゃん、私が付いてるからね。
「……嘘つき」
いなくなっちゃったじゃない。お母さんも、お父さんも、つぼみさんも。きっと迅くんだって。
わたし、何を一人で盛り上がっていたんだろう。魔法少女の結末。死ぬか、魔女になるか。迅くんやイチカ。栞ちゃん、林藤さんや桐絵ちゃん、烏丸くん。優しくしてもらって、楽しくって、見ないようにしていたんだ。わたしも、わたしだって普通の女の子になれた気がして。つぼみさんが魔女になるのを目の当たりにしておきながら、のうのうと。
「だめだなあ……わたし」
左手の中指がぱあと光を放った。普段ソウルジェムはこうして指輪の形をして指に収まっている。ソウルジェムが反応しているということは、結界が近い?
万が一のことも考えて、結界を見つけたら互いに連絡し合うのが常だ。イチカを呼ぼうと携帯に触れたが、彼女は今デート中だと思い出した。わたしには無い覚悟で幸せを掴んでいる彼女の、邪魔はしたくない。最近まで一人で活動してたんだ。大丈夫。
「キュゥべえ、いる?」
「呼んだかい?」
「結界が近いみたいなんだけど、詳しく探れる?」
「イチカは呼ばないのかい?」
「……用事があるんだって、あの子にも」
「へえ。……反応の割に魔力が弱い。きっと使い魔の結界だよ。行くかい?」
肩に乗ったキュゥべえがそう尋ねる。効率だけを考えるなら、グリーフシードを落とさない使い魔は倒すだけ魔力の無駄だ。でも使い魔は魔女の手下。十分人々の脅威になり得る。
「行くよ。」
紛い物だってヒーローになりたい。だって、この道しかないんだもの。
_この時、白い悪魔の目が鈍く光ったことにわたしは気づけなかった。
ペンキで塗りつぶしたような顔の使い魔を双剣で切り倒す。数がまあまあ多いが、一体一体は大したものでもない。小ぶりなナイフを宙に召喚して放っていく。あとはおそらくこの結界の主、他より大きめの使い魔だ。
他の雑魚使い魔と同じようにペンキのような液体で攻撃してくる。この液体を掠めたレースが溶けた、近づきすぎると危険だ。薙刀を生成して、構えた。今までの様子を見るに、液体攻撃の直後に隙がある。攻撃をギリギリまで引きつけてから跳んで、頭上から薙刀の先を叩き込んだ。使い魔は頭からぱっくり二つに割れた。動きが鈍くなった。距離を取って、最後に短剣たちを召喚して放って終わり。そう思っていた。
「…………?」
刃物が、思うように召喚できない?
いつもならすぐイメージ通りに取り出せるそれら。今は、そんな何年もやってきたことができない。困惑して頭が真っ白になったものの、華奢なサーベルを一本創り出すことができたので、それでとどめを刺した。
結界の主を仕留めたことで、結界は消滅した。最後の不調はなんだったんだろう。北風が吹き抜けて、鳥肌がぶるると立った。悪寒がする、気がする。
「風邪かな……」
風邪だといい。