グレー・コラージュ・ソング
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
魔女が消滅したことで結界も消え、グリーフシードがからんと音を立てて落ちた。
「大砲ぶっ放すと疲れるけど気持ちーですね!」
「お疲れ。助かったよ」
「えっへへ、もっと褒めてくださ〜い」
「すごいすごい」
しがらみの魔女は柵を足止めしないと本体に近付けなかったので、今回は本当にイチカのお手柄だ。グリーフシードはせんぱいにあげます、と言ってくれたので遠慮なく使わせてもらう。……以前よりも穢れが溜まってるかな?気の所為だといい。ソウルジェムの穢れを吸い取ったそれは、どこからともなく現れたキュゥべえが持って行った。
褒められてふふん、と胸を張っていた彼女は思い出したかのように手をぱちんと合わせた。
「そうだ、スーパー寄らないといけないんでした!」
「お使い?」
「違いますよせんぱい!もうすぐ女子の一大イベントがあるじゃないですか!」
今日は確か2月9日。節分はもう終わったし特に思い当たるイベントもない。そう伝えると彼女はハアと深い息を吐いた。
「バレンタインですよ、バレンタインデー!」
あ。
「せんぱいは誰かにチョコあげたりしないんですか?」
「……先輩はね、彼氏もいないし大学にも行ってないからあげるような人がいないんだよ」
「悲しい!イチカ、せんぱいにもチョコ作りますからね!」
「アリガトウ……」
高1に気を遣われる19歳……。流石に挫けそうだ。わたしの普段の生活は、バイトと魔女退治で回っているので浮ついた話が一つもないのは仕方のないことだと思う。バイト先もおじちゃんばっかりだし。
「あっせんぱい、あの人にあげないんですか?前言ってたボーダーの人!」
「迅くんか……。迅くんねえ……」
迅くんには出会った当初に魔女を倒すの助けてもらったりとか、奢ってもらったりとか何かとお世話になっている。感謝の意を込めて、簡単なお菓子くらいあげてもいいかもしれない。イチカは、その人カッコいいんですか?!どうなんですか?!好きなんですか?!とずいずい迫ってくる。近い。
「うーん、顔とか普通に格好いいと思うよ」
「でもイチカの彼氏には及びませんけどね!」
お前それ言いたかっただけでしょ。
「うーむ、トリュフ、ブラウニー、クッキー、カップケーキ……」
迅くんにお菓子をあげようと決意したものの、何を作るかを決め切れずにいた。あげるのは迅くんとイチカだけの予定だから、あまりにも簡単すぎるものを作るのもアレだし。そもそも迅くんって甘いものとか、人の手作りとか大丈夫なのかな。バレンタイン、奥が深い。
本人に聞けばいいんだ、と思いついた。何のための連絡先だ。迅くん宛に“甘いものとか、人の手作りのものとか食べられる?アレルギーとかない?”とメッセージを作成した。……時期が時期だけに、流石に露骨な感じがするな。でも他にどう聞けばいいのか分からない。別に疚しいことはないし、ええい、送信。
「じん!しょくじちゅうに けーたいをみるのは ぎょうぎがわるいぞ!」
「迅さんが固まってる」
「むしをするなじん!」
「……ほんとさぁ……ずるいでしょこれ……」