グレー・コラージュ・ソング
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「ぜやぁっ!」
イチカが散弾銃を召喚し、乱射していく。首なし羊の魔女はその場でぷかぷか宙に浮いているだけだ。当たる、と思われた。しかし地面から木で出来た柵が魔女を囲い、全弾を弾き返した。
「この魔女に攻撃しようとするとあの柵が防御するんだ。まず柵を突破しないといけない」
「……せんぱい、あの魔女のこと知ってるんですね」
「まあね」
前から後ろから横から、植物の蔦が襲ってくる。自身を囲むように短剣を創り、すべて斬り落とした。イチカは瞬間移動で攻撃から逃れていたので、周囲の枝や蔦を渡ってそちらに向かう。
「これじゃあジリ貧って感じですー」
「火力を一点に集中させて、あの柵をぶち抜くことってできる?わたしがその間に魔女本体を斬る」
「イチカはやればできる子なので余裕です!何秒で落とせますか?」
「5秒欲しい」
「10秒くらい保たせてあげますよ」
彼女は得意げに笑って見せた。宙に浮かばせた無数の拳銃や散弾銃。そして一列に並ぶ大砲たち。彼女が腕を振ると、空中の銃から一斉に安全装置が外れる音がした。
「なーんか訳アリっぽいですけどちゃんと仕留めて来てください、よっ!」
魔法を帯びた弾丸は一直線に魔女へ向かう。柵はもはや塀のように強固に立ちはだかった。
「大砲よーい!さん、にー、いち!」
ぱちん。イチカが指を鳴らすと地鳴りがした。どがんどがんと大砲は柵の同じ箇所へ撃ち込まれていく。空中の銃の勢いも止まらない。あそこから崩せる。
小さな隙間ができたそこに、投擲の要領で大ぶりのナイフを投げ込んだ。巨大な柵は歪んでしなった。開けた穴から柵の向こう側へと侵入する、あとは、魔女の本体だけだ。
「三年ぶりですね。わたしつぼみさんに沢山お世話になって、沢山迷惑かけて、沢山助けてもらいました。」
三年前、目の前で魔女になったつぼみさんを、わたしは倒せなかった。敵わないから、逃げ出した。後でキュゥべえに聞いても、魔女を魔法少女に戻す術は見つかっていないという。三年間ひとりでずっと考えたけど、その方がいいのかもしれないと思った。だって、魔法少女に戻れたってわたしたちはもう人間じゃないんだ。契約したときから、みんな孤独な存在。だったら__
「すべてのご恩、あなたを倒すことで返したいと思います」
魔女の首だったであろう部分から、蔦がぶああと伸びてきた。一本一本が意思を持つように向かってくる。こういう時、末端よりも根元を叩いた方が早い。イチカにも頑張ってもらってることだし、早めにケリを付けよう。足元を蹴り上げて加速、飛んでくる蔦を避けながら本体に近付いた。狙いは胴体、無防備な背から腹に刀を振り下ろした。
頭が無いから口も無いはずなのに悲痛な叫びが響き渡った。とどめを。サーベルで心臓であろう場所を思い切り突いた。
三年越しの瞬間は、呆気ない幕切れだった。