グレー・コラージュ・ソング
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変身後のレースたっぷりワンピース姿は他人に見られたら恥ずかしいので周りに逃げ遅れた人とかいなくてよかった、と思いながら敵を見据える。とりあえず視界に居るのは一体。
目の前の近界民は、確か4年前の大規模侵攻で見たことがある。白いサソリみたいなやつだ。大きさは車くらい。こいつがシェルターをガンガン叩いてたのね……。
「うーん、どうしたものか……。ってうわっ」
ぎょろりとこちらを認識した白い奴は複数の脚をこちらに向ける。脚一本一本が刃になってるわけだ。見た目よりも攻撃が速い。強度も結構ありそう。でも、見切れない速さじゃない。
魔女はそれぞれが固有の姿と性質を持つ。この4年間、いつだって"初めまして"の相手と戦ってきたんだ。手こずるつもりはない。
こっちの方が小回りが利く。脚を弾きつつ後退し、民家が並ぶ路地に誘導する。狭い一本道で勝負。
脚の刃をいなした勢いで懐に潜り込み、生成した短剣で腹から引き裂いた。駄目押しでもう一発。思いっきり蹴り上げて上空で身動きが取れないところを真っ二つにした。白い奴はズシンと音を立てて崩れた。
これで目の前の危機は回避した。と思っていた。
「あと何匹いるのこれ……」
物音に振り返ると同じ種類の近界民がざっと五匹は集まっていた。魔法少女はモテモテだ。
「はあ……」
これ、増えてきてない?倒せども倒せどもわらわら湧いてくる。
左右から寄ってくるのを上に跳んで避け、かかと落としの要領で一体潰した。着地を狙ってきたもう一体の背中に飛び乗り、急所であろうコアのような目に短剣を刺した。こういう時、飛び道具があると有利だよなあ。
わたしという魔法少女は、剣は出せても銃や大砲を生成することができなかった。他の魔法少女みたいに幻覚使ったりリボンを操ったりビーム撃ったり、ファンタジーじみたことができない。わたしが授かったのは、回復力、大小問わず剣や刀、そして異常な脚力。
何体倒したか、七匹目から数えるのをやめた。とりあえず残っているのはあと三匹。……魔力の消耗を感じる。キュゥべえが言った通り、これ以上は危険かもしれない。同じタイプの敵ばっかりなのが唯一の救いだ。
脚のブレードを横に避けてその根元を斬り落とす。暴れるそれの腹に潜り込んで目に蹴りを入れた、あと二体。そのとき、
急に花火のような大きい音が地面を揺らした。ボーダー基地の方だ。雷のように一筋の光が昇って、ずっと暗かった空が明るさを取り戻した。__きっと、終わったんだ。
基地の方面から人の声が聞こえる。ボーダー隊員が近くに来ている様子だ。人に見られたくないので自慢の脚力で近界民から距離を取って、物陰に身を隠し変身を解いた。
今日のわたし、頑張った、よね。