開けない常闇

「白状します、私を雇われたのはククール様本人ではなくオディロ院長です…………実は」

「……そう………だったんだ」

事情を聞くやいなや、顔を背けるエイト



「エイトー…っ!!」

いきなり二階に現れたククールにゼシカ達は驚く

「!!……(想像以上に美男子じゃない…これじゃエイトが色々な意味で惚れ込むのも分かる気がするわ)」

と内心、彼の格好良さに惑わされるゼシカ



「〜っ、ムっキィーっ!!

やっぱりイケメンは好かんでがず!こーゆ顔だけ良い奴は大体クズなんでがすよ…!!

(弟分のアッシが兄貴をお守りせねば…っ)」


「(王であるワシには到底叶わんが、そこそこに良い男かもしれんの、…ま、性格は胡散臭うじゃが)」

と、トロデ



「!アンタら、エイトの仲間か
丁度良かった、エイトは…エイトは今どこにいる?」

「!…エイトなら貴女の部屋に……でも今は会わない方が…」

ククールに対しいたたまれない事が多いのか、視線を泳がせながらエイトの居場所を指すゼシカ

「分かった、サンキュ」

「あ、ちょっと!!ねぇってば!」

入らない方がいいと忠告したのに部屋に入っていく彼に、もう知らないんだから…と呆れるゼシカ


扉を開けると共に本物のククールが入ってくる

それと同時に替え玉はエイト達にに頭を下げ出ていく


「で、では私の役目は終わったみたいなのでこれで」

「…うん、元気で」

そして部屋の中は、エイトとククールのみ




「エイト…その…すまない
不快な物を見せたみたいで…気持ち悪かっただろ?」

空気が重いのか、気を使いながら話すククール

「…大丈夫だよ、最初は驚いたけどククールではなかったし」

「そっか」

「でも、これだけは聞かせて」

「……あ、あぁ……」


とりあえず座ったら?と隣のスペースを叩くエイト
そしてククールも、エイトの真横へ遠慮がちに座る


そんな二人の空気を見てか「扉閉めて」と言われた訳でもないのに、無言で閉めるヤンガス

そして先程変幻したエイトを見てから何時になく無口なトロデに対し、ヤンガスはつめ寄る



「……なぁ、トロデのオッサンよ

兄貴のあの感じアッシらは初めて今見たわけでがすが

冷静なオッサンの様子からして思うに、あんな兄貴を過去に見ていて、何でああなるかも理由……知ってるんじゃねーですかい?」


「そうよ、理由を知ってるなら教えて…!

このままもせずに放っておいたら、何だかエイトがエイトじゃなくなる気がして……私怖いのよ」

「ここでは聞かれる可能性がある、場所を変えるぞ」

二階の片隅へ移動すれば、トロデは昔を振り返る

「…正直に話そう

ワシはあのエイトはザっと七、八回は見てきておる

初めに見たのはアイツを拾い、半年経った頃であった

その頃には、ミーティアと城で一番仲が良くてのぉ…
どこに行くにもいつも一緒。正に双子のようであった


それが祟ってか、アヤツの姫に対する独占欲が日に日に強くなり……事件は起きたのじゃ

とある日の午後

姫の幼馴染の男の子が遊びにきて、最初は三人仲良く遊んでおったんじゃが…急にその子が姫を独り占めした事がきっかけで」

「兄貴はさっきみたいになっちまったんでがすか」

「……うむ」

「っていう事は、執着心と独占欲がエイトの変身のトリガー」

「…おそらくはの

その後もエイトが変幻するキッカケは、アヤツにとって大事な者が他者に奪われた時」


「!じゃあエイトが恋人関係になった子と長続きしなかった大きな理由って…」

「本人も気付かぬうち付き合っていた恋人の前であの姿になり相手が恐怖し逃げ出した…という所じゃろ」 

「……そんな、あんまりだわ……」

「兄貴を!兄貴を元に戻す術は分かんねぇのかよ!」

エイトに対し、何もできない現実に苛立つヤンガス

「………すまぬ」




一方エイト達のいる部屋
 
「ククール
本当に君は、自分の意思でこんな事をしていたの?」

「……俺はエイトから拒絶されたら…」

「…大丈夫、僕は君を突き放したりは絶対にしないよ

本当の事を聞いて僕なりに理解した上で、君と一から作って行きたいんだ」

「……エイト」

「君のペースでいい」
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