第1章 どん底の街
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俺は異人町の骨董品屋兼鑑定士だ。店は構えてなく、電話で呼ばれればすぐに鑑定に伺うし、買い取れる物ならその場で払うという商売をしている。
このやり方がかなーり異人町にあってる商売らしく、キャバクラからパブ、ソープやホストクラブまで引っ張りだこなんだ。え? ナゼかって? 悲しい話しだが、嬢やホストに貢がれた高いブランド物のバッグや時計、果ては車などを買い取っているのである。
繁華街のとあるキャバクラ店に入る。カランコロンと来店の鐘が鳴り、奥からボーイが歩いてきた。
「やぁ、お疲れさま」
「お疲れさまです多々良さん。どうぞこちらに」
用件はもう知られているのでいつものように事務所に通される。部屋に入ると鏡に向かって化粧直ししていた女性が振り向き、笑顔を輝かせた。
「たらちゃん、いらっしゃい!」
「どうも紗栄子さん。品物の買い取りに来ました」
彼女は向田紗栄子。この町に始めてきたときからのお得意様だ。えぇ、分かってるわと、そう話して紗栄子さんは奥にある段ボールを来客用の机の上に置いた。
「これまた、多いですね」
ソファに座って品物を手に取る。いつもは一箱くらいなのに今週は二箱もある。
「まあね。今週は景気がよかったみたい」
「……ふむ、この量だと時間がかかるのでしばらく事務所に居ていいでしょうかね?」
そう聞いてみると紗栄子さんは頷いてくれた。ありがてえ。家で鑑定するために持ち歩くと変なのに絡まれるんだよね。
「あっ長居するならお茶でもいる?」
「わぁ、ありがたいです。お願いします」
紗栄子さんがお茶を用意している間に、持参したジュラルミンケースから鑑定用の小道具を取り出す。白い手袋を両手にはめ、さっそく品物をルーペで覗いた。
「…………」
しばらく無言で鑑定に没頭する。半分くらいに差し掛かった頃だろうか。その時、紗栄子さんから声をかけられた。
「ねえたらちゃん。今日、なんか良いことでもあった?」
ルーペを覗くのをやめ、正面のソファーに座ってる紗栄子さんに目を向ける。
「なんでそう思ったんですか?」
「んー? 女の勘!ってヤツかな?」
そんな曖昧なことで自分の気持ちを悟られるとは。
「だとしたら、女の勘というのは恐ろしいですね」
「やっぱそうなんだ!」
勘が的中したことにきゃっきゃっと紗栄子さんは嬉しそうに笑うが、申し訳ないことに俺はあまり嬉しくなかった。
職業柄、分かりやすい態度を取るとやれもっと買い取り額高くしろとか、もう少し安く売れやら言われたりして、足元を見られるからポーカーフェイスを演じてるのに。そんなに顔に出てたとは。
「……今日、おもしろい人たちに会いましてね」
「えっだれだれ?」
もしかしてタイプの人?? 恋?? そう早く解釈する紗栄子さんに苦笑いする。
「話しますから落ち着いてください。そうですね、実はーー」
その時のことを思い出しながら語ったりして、紗栄子さんは俺を助けてくれた二人に感心したり。今日の鑑定は少しいつもと違う、賑やかな取引になった。
このやり方がかなーり異人町にあってる商売らしく、キャバクラからパブ、ソープやホストクラブまで引っ張りだこなんだ。え? ナゼかって? 悲しい話しだが、嬢やホストに貢がれた高いブランド物のバッグや時計、果ては車などを買い取っているのである。
繁華街のとあるキャバクラ店に入る。カランコロンと来店の鐘が鳴り、奥からボーイが歩いてきた。
「やぁ、お疲れさま」
「お疲れさまです多々良さん。どうぞこちらに」
用件はもう知られているのでいつものように事務所に通される。部屋に入ると鏡に向かって化粧直ししていた女性が振り向き、笑顔を輝かせた。
「たらちゃん、いらっしゃい!」
「どうも紗栄子さん。品物の買い取りに来ました」
彼女は向田紗栄子。この町に始めてきたときからのお得意様だ。えぇ、分かってるわと、そう話して紗栄子さんは奥にある段ボールを来客用の机の上に置いた。
「これまた、多いですね」
ソファに座って品物を手に取る。いつもは一箱くらいなのに今週は二箱もある。
「まあね。今週は景気がよかったみたい」
「……ふむ、この量だと時間がかかるのでしばらく事務所に居ていいでしょうかね?」
そう聞いてみると紗栄子さんは頷いてくれた。ありがてえ。家で鑑定するために持ち歩くと変なのに絡まれるんだよね。
「あっ長居するならお茶でもいる?」
「わぁ、ありがたいです。お願いします」
紗栄子さんがお茶を用意している間に、持参したジュラルミンケースから鑑定用の小道具を取り出す。白い手袋を両手にはめ、さっそく品物をルーペで覗いた。
「…………」
しばらく無言で鑑定に没頭する。半分くらいに差し掛かった頃だろうか。その時、紗栄子さんから声をかけられた。
「ねえたらちゃん。今日、なんか良いことでもあった?」
ルーペを覗くのをやめ、正面のソファーに座ってる紗栄子さんに目を向ける。
「なんでそう思ったんですか?」
「んー? 女の勘!ってヤツかな?」
そんな曖昧なことで自分の気持ちを悟られるとは。
「だとしたら、女の勘というのは恐ろしいですね」
「やっぱそうなんだ!」
勘が的中したことにきゃっきゃっと紗栄子さんは嬉しそうに笑うが、申し訳ないことに俺はあまり嬉しくなかった。
職業柄、分かりやすい態度を取るとやれもっと買い取り額高くしろとか、もう少し安く売れやら言われたりして、足元を見られるからポーカーフェイスを演じてるのに。そんなに顔に出てたとは。
「……今日、おもしろい人たちに会いましてね」
「えっだれだれ?」
もしかしてタイプの人?? 恋?? そう早く解釈する紗栄子さんに苦笑いする。
「話しますから落ち着いてください。そうですね、実はーー」
その時のことを思い出しながら語ったりして、紗栄子さんは俺を助けてくれた二人に感心したり。今日の鑑定は少しいつもと違う、賑やかな取引になった。