このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

風紀委員長の日常

Target.07 二人乗りした件について


 応接室で書類の処理をしてた途中に鳴った電話は、それなりに物騒な内容だった。


「死体の処理を頼む。沢田家で待ってるゾ」
「貸しひとつね」


 電話を切られる。あーなるほど。原作の話だな。たしか、ボンゴレの特殊工作員が出るん、だっけ?


「(面倒だが行かなきゃな)」


 バイクの鍵をデスクから取り出したりと、出かける準備をする。


「でかけるのか?」


 来客用のソファに座り、ボクシング雑誌を読んでいた笹川が声をかけてきた。おい、今日は学校休みのはずだぞ……なんか、こいつが応接室に居るの違和感なくなってきちまったな。


「少しね。草壁が来たら僕は出かけてるって言っておいて」
「いや、オレもついてくぞ?」


 雑誌を閉じた笹川がキョトンとした顔でそう伝える。は?


「ついてこないでよ」
「別にいいではないか。それに、オレも久しぶりにバイクに乗りたい!」
「やだ」
「なぜだ!!」
「そうやって耳元で叫ぶから」


 笹川は抗議の声を繰り返す。いや、だって、原作にお前居なかったやん。


「むぅ……」
「むくれてもダメ」


 しばらく駄々こねてたけど、急に静かになったかと思ったら応接室から出ていった。諦めたか。まったく、駄々とかまるで子供だ。いや、中学生だし子供なのも当たり前か。


「(さて、邪魔は居なくなったな)」


 さっさといかないと話が終わってしまう。所々の戸締まりをしてから応接室を出て、駐車場まで歩く。


「遅かったではないか!」


 ……笹川が良い笑顔でバイクの後部に座ってた。おい、いい加減にしろ笹川。なんでこういうときだけ知恵がまわるんだ。


「降りろ笹川」
「極限に! 嫌だ!!」


 笹川のパーカーを掴んで引きずり下ろそうとするが、笹川はバイクにしがみついて降りようとしない。


「なんでそんなについて行きたがるの」
「そ、それは……ヒヒヒヒマだからだ!」
「嘘だね」
「ぐっ」


 なにを意地になってるのだか。我慢しなさい。そのうち未来で乗れるんだから。ぐいぐいと笹川のパーカーを引っ張る。顔を伏せた笹川が、ポツリとなにかを呟いた。


「なに?」


 聞こえなかった。なんて言った? 笹川の顔を覗き見ようとしたが、ふいと逆方向に反らされた。


「ねえ、こっち見なよ」


 そう言った次の瞬間、バッと笹川はこっちに勢いよく振り向いた。


「~~っ!! だから!! オレはお前と、ヒバリと一緒に居たい!!」


 笹川は耳まで赤く染めて、そう吠えた。羞恥心で目が少し潤んでいる。


「(速報 推しが最高に尊い)」
「……文句あるか!」


 そんな顔で睨んでも可愛いだけだぞ笹川。あーかわいい。


「そんなに一緒に居たいなら好きにすれば?」


 そうクールに伝えるが内心すげえことになってます。推しの尊さのせいで脳内ファンファーレ鳴ってるわ。

 まあ、沢田家に上がらせずに外に待たせとけば良いだろ。そう自己解決した。笹川に予備のヘルメットを被せてバイクに跨がる。


「ヒバリは被らないのか?」
「窮屈だからいらない」
「なっ!? 危ないからお前もかぶ「口閉じないと舌噛むよ」ぅお!?」


 バイクを急発進させる。慌ててしがみついてきた笹川に笑みがこぼれた。


「バイクはいいな! 風が極限に気持ちいいぞ!」


 笹川がはしゃぐ。耳元で騒ぐなうるさいぞ……用事が終わったらちょっと遠出でもしようかな。別に笹川のためではない。僕が風を感じたいだけだ。断じて笹川のためではない。
7/8ページ
スキ