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風紀委員長の日常

Target.01 ついに主人公がきた件について

 私の名前は雲雀恭弥。察しの良いオタクなら分かるだろが、私は転生して成り代わった人間だ。

 流石に、最初はそんなバカなと否定していた。自分が雲雀恭弥の成り代わりだと理解したのは幼稚園の時だった。


「きょっくげーん!」


 ジャングルジムの頂点で仁王立ちし、両手を突き上げ、高笑いする幼稚園児童な笹川了平を見て分かった。

 そのあと見事に頭から落ちた笹川を助けた。そん時から妙に絡んでくるようになったんだっけな。

 そして、今いる世界がリボーンの舞台だと判明したあと、私は生まれてからずっとあった疑問が晴れた。

 家で父から強くあれだとか、自分の縄張りである並森を守りきろだとか、強くさせるため散々しごかれてた理由が分かった。この父の教育で雲雀恭弥は出来上がってったのだろうか。

 そんなこともあり、なんやかんやあり、私……いや、僕はついに並森中学校の風紀委員長にまで成長した。長かったよほんとここまで来るの! そしてついに、今日が主人公の入学式。


「しみじみするなぁ。やっときたかぁ」


 応接室の窓から校門を見下ろす。看板の前で母親と写真を撮る沢田が見えた。原作が始まるまでゆっくり中学生の日常を楽しみたまえ。

 にしても……うーむ群れだなぁ。入学式だし無礼講だと考えちゃいるが、まあ、一種のアレルギーみたいなもんだ。

 これ以上眺めてたらじんましん出そうだったので窓から目を反らした。さーてと、まだ時間あるし書類ちょこっと進めよう。

 しばらくデスクに向き直って事務をしていると、突然壊れんほどに、勢いよく応接室のドアが開いた。


「邪魔するぞ恭弥!!」
「(邪魔するならかえってー)」


 笹川が遠慮もなく応接室に入ってきた。なんで今日学校に居るんだ。在校生は休みのはずだぞ。

 笹川が応接室に来ることは一年生の頃から何回もあり、こいつが訪れてくたびにこっちが疲れていく。不本意ながら、こいつは僕にとって悪友みたいな関係だ。僕は手に持ってた万年筆を置いた。


「はぁ……で、なに?」


 相手しなきゃ帰ってくれないのでため息混じりに仕方なく話しかけた。よくぞ聞いてくれた!という感じで笹川が喋りだす。


「京子の入学式なのでな。成長した姿を残すために、学校にやってきたのだ!」


 あーそうか。京子も今日入学だっけ。だからか。ったく、そりゃそうだよな。だからって僕の応接室に来るな。


「今日のオレは一日限定、京子の専属カメラマンだ!」


 そういって笹川は良い笑顔でカメラを構えた。


「ふぅん、興味ないね」
「ということで恭弥、お前も入学式に来い!!」
「話聞いてた?」


 てめえついに鼓膜まで筋肉になったか? ここで僕、本日二度目のため息をつく。


「分かったよ。あとで行く」


 あとで入学式に行くのは本当だ。ただし、恐怖を植え付けるためだがな。あのぶちギレ演出有り無しでバカする奴が減るんだよな。


「……なに? まだなにかあるの?」


 これくらい喋ったら帰るだろうと思ってたのだが、笹川がカメラの画面を覗いて微妙だにしない。


「いや、カメラの電源を入れたのだが、画面が写らなくてな。このままじゃ京子の姿を撮れん……」


 笹川が困り顔でそう答える。そりゃおめえ、そりゃそうよ……。故障の原因に気付いた僕は内心爆笑しながら、笹川に手のひらを差し出す。


「ねえ、それ貸して」
「ん? 直せるのか?」


 笹川からカメラを受けとる。僕はカメラのレンズに着いてたフタを取り、笹川へ手元に返した。笹川はついた画面を見てうるさく喜んだ。


「おぉ、恩に着るぞ恭弥!」
「……そう。直ったのなら早く帰りな」


 そう素直に礼を言われるとなぁ。笹川と話していると調子が狂う。

ーーパシャッ


「え?」


 目の前が一瞬真っ白になった。光が収まり、笹川がカメラを覗いて満足げに頷く。


「うむ、写り良好。綺麗に撮れてるぞ!」


 そういって得意気に笹川は画面を僕に見せる。そこには不意をつけられ、目を丸くする僕の姿が写っていた。いや、まてまてまて。


「これで京子の姿もバッチリ撮れるな! 邪魔したな恭弥!」
「待て!! それ消せ!!」


 抗議の声をあげたが、半ば逃げるように応接室を出ていった笹川には届かなかった。

 不味いぞ。あんな写真他人に見られたらイメージ崩壊待ったなしだ。まさかの失態に僕はデスクにふせ、呻いた。おのれ笹川ァ!

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