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山本さん遭遇から数日経ったが…当然のことながら私の連絡先を教えていないので連絡なんぞこなかった。
仕方がないので、マグロさんを連れて…えっと、たけずし?に向かった。
「らっしゃい!」
竹寿司さんに入ると、気前の良さそうな板前さんの声がかかった。
「あの、山本…武さん、いらっしゃいますか?」
「なんだ、武のダチか!
…武ならもうすぐ帰ってくると思うから座って待っててくれ」
ニッコリ笑った板前さんのお言葉に甘えて、入り口入ってすぐのカウンターでマグロさんとお茶を飲みながら待たしてもらうことにした。
マグロさんは何やら唸りながらお茶を飲んでいるが…このお茶、熱いけれど渋くはない。
どうしたの、何か思い出せそう?と声をかけようとした瞬間、ガラガラと誰かが扉を開けて入ってきた。
「ただいまー」
「おう、帰ったか!
…お友達が待ってるぜ」
入ってきたのは、待っていた山本武その人で…他にも数人引き連れてる。
板前さんの言葉を聞いた山本さんは、驚きつつも丁度よかった。とニカッと笑った。
「スクアーロ!
記憶失っちゃったって本当?!」
茶髪で優しげな青年がマグロさんに駆け寄って声をかけた。…山本さんの時も思ったけど、一体どんな関係なんだろうか。
「あぁ…だが大分思い出してきたぜぇ、沢田ぁ」
「おっ、じゃあ一勝負すっか!」
ニヤリと笑ったマグロさんに山本さんが嬉しそうに声をかけているが…勝負とはなんだろう?と思っている間に、山本さんと沢田さん…あと目つきの悪い銀髪の青年、それからマグロさんが店から出たので、慌てて追いかける。
追いかけて着いた先は、剣道場。
「準備は良いかぁ!?」
なんだかイキイキした様子のマグロさんは、どこから出したのか剣を左手に装着してて…真剣を持った山本さんに剣先を向けている。
…勝負って、死闘とかそっち系ですか?
「ちょっと、マグロさん!
なにを始めようとしてるんですか!!?
…色々、説明を求めます!」
ズビシッ!と手を勢い良く上げて自己主張すると、マグロさんは刀を下ろして頬を掻いた。
山本さん達は、私が彼のことをマグロさんって言った事に突っ込みを入れたりして騒いでいる。…たとえなんであっても、この人はマグロさんだ!と自分の中で決定しているので譲れないぞ?
「あぁ、そうだったなぁ。
クコ、俺の名前はスペルビ・スクアーロ。
…実は山本に会って、大体思い出した」
「…そういうのは早く言って下さい。
そして、生活費返して下さい」
はー、やれやれ。と頭を振ってから右手を差し出すと…優しげな青年が、スクアーロになんてこと言ってんの!?と驚いて、銀髪の青年は…あの女怪しいですね、十代目、シメますか?なんて言ってる。
何か間違ったことでも言った?と思わずキョロキョロすると、近づいてきたマグロさんが私の頭を片手で掴んで固定した。…ちょっと指がめり込んでて痛いんですが?
「お前との生活が気に入ってたからなぁ…。
もし思い出したっていってたら、帰れ!って言ってただろぉ?
だから言いたくなかったんだが…、そういうわけにも、いかねぇしなぁ」
困ったように笑ったマグロさんだが…私が気になっている、その左手の剣については一切触れなかった。
「私も気に入ってたけど…そんなことより、その左手の剣についての説明を求めます!
マグロさん、危険なご職業の方なんですか!?」
「…スクアーロだって言っただろうがぁ。
まぁ、暗殺してるぜぇ」
「ちょ、直球すぎー!
もっとこう…オブラートに包んで!?」
ほぅ。マグロ解体業者じゃなかったのか。と頷いていると、沢田さんが超オロオロし始めた。…暗殺とか、湾曲させても優しい感じに変換できないと思うんだけど。
マグロさんが暗殺してる方だっていうのは、まぁ分かった。では、そんな人とお知り合いのこの人達も…?
「なるほど。
では、山本さんも沢田さんも、この人も暗殺者なんですね!」
「ちげぇよ!
…俺たちはマフィア・ボンゴレファミリーだ」
「なんだ、マフィアの方でしたか」
銀髪の青年の発言に、納得する。
それにしてもマフィア関係とは、人は見かけによらないなー。と、沢田さん達から少し離れて頷くと、マフィアになるつもりはないからー!それに、なんでそんなにすんなり納得してんの!?と沢田さんが叫んでいる。…え、結局マフィアなの?そうじゃないの?どっち??
「…マグロさん、私の家にいるのは良しとします。
でも、暗殺のお仕事とかたまってるんじゃないですか?」
「そうだなぁ、ザンザスのやつ、怒ってるだろうなぁ…」
仕事の話をマグロさんにふると、何かを思い出したのか…どんよりと暗い表情になった。
まぁ、仕事さぼってたツケが溜まってそうですしね。
「…とにかく、今は山本と一戦だぁ!」
それから考える!と言い放ったマグロさんは、山本さんと試合を始めた。…見ていて鬼気迫るというか、人間業じゃないものが多かったけど。
そして試合後、晩御飯は竹寿司でお寿司を頂きました。…めちゃくちゃマグロさんがマグロをパクパク食べていて、やっぱりマグロさんはマグロさんだ。と一人頷いた。