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「人が落ちている…だと!?」
本日、珍しく別のルートで帰宅中…全身真っ黒な服で長い白髪の男性が俯せで倒れている。…しかも何やら呟いていて、気になったので恐る恐る男性に近づき耳を澄ます。
「…マグロぉ」
聞き間違い?と首を傾げる。…よく見てみると凄くイケメンだった男性の口元に耳を近づけてもう一度聞いてみたけど、やっぱりマグロって言ってる。
なんだコイツ、どれだけマグロ好きなの?道路に倒れてるってだけで不審なのに、マグロって言ってるとか…超不審者。
不審者だけど、もうここまできたら助けるしかない。とマグロの人の肩を揺する。
「お兄さん、大丈夫ですかー?
起きて~」
少しの間揺すりながら声をかけ得ると、うぅ…。と声を漏らしながら起き上がった。
ので…お兄さん、倒れてましたけど…どうしたんですか?と尋ねると、マグロの人は顎に手を当てて何かを考えはじめたかと思うと…、ポツリと呟いた。
「…なにも思い出せねぇ」
「倒れてた時にマグロって言ってましたが、心当たりは?」
「それは俺の好物だ」
うわぁ、どうでもいい。なんて思いながら、具体的に何が思い出せないんですか?と面倒ごとに巻き込まれそうで聞きたくもないけど、聞かなくてはならないので声に出す。
「自分の名前や、どこに住んでたか…思い出せねぇみたいだ」
「それは大変ですね、警察に行きましょう」
「それはダメだ!」
よし、警察に丸投げしよう!と、手を打つと…さっきまで静かだったのが嘘のようにマグロが叫び出す。
本人曰く、警察だけはダメ、ゼッタイ。とのことで…もう、仕方がないのでマグロを連れて帰ることにする。面倒だけど!
「じゃあ、マグロさん…仕方ないので思い出すまで家にいて下さい」
「マグロ…?」
「貴方の名前ですよ、マグロさん。
名前、思い出せないんでしょう?」
だから思い出すまでマグロな。と決めつけ、私の家はこっちです。と案内する。…とはいっても、ここから見える距離にあるアパートだからすぐ着くけど。
ずっと何かを考えている様子のマグロを放置して、階段を上がり部屋の鍵を開ける。
「狭いですけど、文句言わないで下さいね」
「…あぁ、世話になるぜぇ」
パチリとライトをつけながら先に靴を脱いで上がり、振り向いて言うと、困った顔でマグロさんは返事して…そのまま上がろうとした。
「マグロさん、ここは日本です。
靴…脱いでいただけます?」
「そ、そうか…すまねぇなぁ」
マグロさんが玄関でブーツを脱いでいる間に、部屋の明かりをつける。…見られて困る物は、ないな。
さて、お腹も空いたし…晩御飯にしよう。
「マグロさん、晩御飯作りますけど…食べますか?」
「マグロが食いてぇ!」
靴を脱ぎ終わったマグロさんはニッカリ笑って、そう言った。…共食いですか?