彼
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そうしてクコと出会ったのだが、再び会って名前を知るまでに2週間ほどかかった。
電車の中で彼女を見かけたのだ。その時は―――
「あっ…」
最近、彼女が何処かに居ないかとついつい探してしまっていたが、中々見つからなかった。そんな彼女をついにを見つけることが出来、思わず声が漏れた。慌てて両手で口を抑えたが、時すでに遅く、丁度電車の時間が被り一緒に大学に向かっていた甘露寺の耳に入ってしまったようだ。その前既に、誰か探してるんですか?と聞かれ、図星だったので黙り込んだ矢先だったので…これは不味い。
「まぁ、もしかして探してらっしゃる方が居たのかしら?!
でしたらお誘いして、一緒にお話しましょう!
それで、どの方なんですか??」
頬を染め…いや、甘露寺はいつだって頬を染めて楽しそうに話す娘だが……、あっ。そう言えば今日一緒の電車に乗っている事を伊黒に言わねば…あいつは何故だか知らないが、甘露寺と共にいる時に一言でも連絡をしないと後でネチネチと煩いからな。前世姑だったのだろうか?いや、鬼殺隊の柱をしていたのだから、それは無いだろうが…。後で連絡しよう。そう心に決め、そんなことより彼女は……見知らぬ男となにやら話し込んでいる様子だ。
…みしり。と何かが軋んだ。
「あっ、もしかしてあの女性かしら?
あら?彼女……クコちゃんだわ!
まぁ!これって運命なのかしら…?
素敵だわ!キュンキュンしちゃう!!
――クコちゃん!」
軋んだ音に顔を顰めたのと同時に、甘露寺が彼女に気がついてしまったようだ。そんなに見詰めてしまっていただろうか?反省の意味も込めて目線を逸らした瞬間、甘露寺は信じられない事言い、信じられない事をした。
「……あっ!」
甘露寺の声に気がついた彼女は、一緒に居た男に一言二言なにか告げ、こちらに近づいてきた。
一緒に居た男と共に来なかったことに何故か安心を覚えた自分に疑問を覚えたが…そんなことより、彼女と甘露寺は知り合いなのか、俺のことを覚えているだろうか?
「クコちゃん、おはよう!
今日は一緒の電車だったのね、嬉しいわ!
あ、でもお話しの邪魔しちゃったかしら?」
「蜜璃ちゃん、おはよう!
ううん、全然、全く、どうでもいい話だったから大丈夫だよ!
…むしろありがとう!!」
なにやら俺には分からない話だが、彼女――クコというのか――が問題ないなら、問題ない。むしろ先程の男より、俺と甘露寺を選んだ事が嬉しい、、嬉しい?なぜ俺は嬉しいと思った???
「良かったわ!
…それで冨岡さん、クコちゃんに何の御用なのかしら?
私、気になるわ〜!」
「えっ。私に御用、ですか…?」
楽しそうに甘露寺と話していたかと思うと、急に彼女がキョトンとした表情でこちらを見ているのに気が付き、慌てて思考をもど…?いや、俺は彼女を見ていただけで、声をかけるつもりは…あったが、なにも話の邪魔をしてまで声をかけようとは思っていなかった。ただ、甘露寺が気を利かせて…あぁ、そんなことより、この間の件のお礼をきちんとせねば。見ず知らずの俺が落としたパスケースを態々声をかけてまで届けてくれて――
「…すまなかった」
「え?
…もしかして、この前の落し物の件ですか??
大したことじゃないですし、気にしなくても全然いいんですよ!」
そう彼女は言うが、そういう訳にも行かないだろう。何かお礼がしたい。そのためには…そうだ連絡先を教えてもらおう。だが、その前に甘露寺は彼女の事をクコと言っていたが、彼女の口から直接聞きたい。あぁ、俺の名前も教えていなかったな――
「…冨岡 義勇だ」
「…ううん?
あっ、私は雨草 クコです…?」
何故か困った顔の――クコ、いや俺が勝手に名前を呼ぶのは良くない。雨草と呼ぶべきだろう。――クコを不思議に思ったが、そんなことより連絡先だ。たぶん錆兎達と連絡する際に使っているSNSアプリで良いだろう。ポケットからスマホを取り出し、滅多に使わない友達登録画面を開き、雨草に見せた。
「…冨岡 義勇だ」
「えっ?
……あっ、ハイ!
…友達登録、させてもらいますね?!」
画面を見ると、可愛く首を傾げたかと思うと、突如あわあわと慌てながら何回もスマホの操作を間違え、少し手間取っていたが…出来ました!という雨草の声と同時に手に持っていたスマホが震えた。
画面を見ると、雨草の名前と女子が好みそうな兎の絵と"よろしくお願いします"の文字のスタンプが表示されていた。ちらりと雨草を見ると、どこか恥ずかしそうに頭を下げた。…俺もスタンプで返信しなくてはいけないな。そう思い、いつも錆兎に了承の意味で送っているスタンプを送信して、スマホをポケットに仕舞った。