優しいって君は言うけど、誰にでもこんなことしてる訳じゃないんだよ。
>>煉獄杏寿郎
やっと先日
丙(上から三番目!)になったばかりの私、
雨草は有難いことに
炎柱・煉獄杏寿郎となんと、今日で通算二十四度目の合同任務を承ることとなった。今まで数々の鬼を大きな怪我もなく倒すことが出来たのは、
偏に炎柱のご配慮と采配のおかげである。
「…炎柱さま!」
自分の
鎹鴉にせっつかれ、一晩お世話になった藤の家から転がる様に…とはいえ、待って!と大声で鴉に静止をかけながら、髪を結い上げ、軽く粉を叩き、紅を薄ら付けたけれども。…飛び出し、鬼を倒す事に増やしていった藤の刺繍の白い羽織を翻しながら駆けること二時間と少々、町の入口へと続く一本道に、炎柱さまが立っているのが見えたので、より一層脚に力が籠った。
「来たか!」
「お待たせしてしまい、申し訳ありません…」
今日も今日とて、お元気そうな良く通る声が私の耳朶を震わす最中、滑り込むように止まった私は、息を整えながら何とか返事を絞り出す。…どうやら、炎柱さまは私が遅れてきた事をお気になされていない様子で、炎柱さまには悪いが、内心安堵した。
「そういえば、
雨草。
君は丙に上がったそうだな!」
「…はい、先日の任務にて運良く鬼を倒すことが出来、それにて階級が上がったようです。
偏に、炎柱さまのご助力のお陰でございます!」
にっこりと笑んだままの炎柱さまのお声を聴きつつ、一呼吸おいて、上がった経緯を簡単に伝え、日頃の感謝を込めて頭を下げた。
「本当に、炎柱さまのお優しさには助けられてばかりです…」
ぐっ、と頭を下げたまま、そう言い告げると、苦笑と共に頭を少々乱雑に撫でられた。折角綺麗に結い上げたのに、とも思うが、それ以上に炎柱さまに褒められているようで嬉しい。
「実はな、優しいと君は言ってくれるが、誰にでもこんなことしてる訳じゃないんだ」
思わず見上げた炎柱さまの顔は、いつもより優しげに見え、自分の顔が紅くなるのが分かった。
2021/09/19