Short Story
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私は雲雀 恭弥の姉である。名前は…言いたくない。
気がついたら赤ん坊していて…名字が雲雀で並盛町で。
もしやと思ったものの5歳まで何も無かったから、え…もしかして転成じゃなくて成り代わり!?とか焦ったのもつかの間、弟が出来ました。
えぇ、ご想像通り名前は恭弥です。
今世の私の家は名家で、護身術として武術を教わっていたんだけど…運動神経が無駄に良い弟は、すぐに無双の強さになった。
で、いつの間にか並盛町を影で牛耳ってた。
…怖すぎる。
――それだけなら、まだ誤魔化せた。
弟と私は身長は違えど、顔がそっくりだった。
しかも私はYシャツにズボン派だから余計に。
まぁ、私も鏡を見る度に、やべぇ…雲雀恭弥だ。と思うくらいには似ていると思ってる。
ので、毎度誰かしらに弟に間違えられちゃう。
そして…怯えられる。
本当に迷惑通り越して…もう笑っちゃうよね!
だからといって髪を伸ばすつもりは無い。
私が先にショートだったんだから、弟が髪型を変えるべきだと常々主張している…心の中で。
弟は強い。物理的に。
そんな弟が姉の言うことを素直に聞いてくれるだろうか。
…正直、聞いてくれる気がしない。
小さい頃は、ねーちゃん、ねーちゃん。とカルガモよろしく後ろをヨチヨチ付いてきていて…天使だった。
…いや、今でも可愛い弟である。
誰がなんと言おうと、やっぱり弟は可愛いものなのである。
◆
季節は流れ、いつの間にか弟は中学生になって…そして、いつの間にか原作が始まっていたのである。
花見をしに行ったはずの弟がフラフラと家に帰ってきたので、ピンと来たのだ。サクラクラ病だな、と。
ということは、もうすぐ黒曜編で…弟とウマが合わないオッドアイ君と出会うのだろう。
我が弟は強い。だけど、上には上がいると気がつくのだろう。
可愛い弟が怪我をして欲しくないが、一般人より少し強い程度の私など何も出来やしないだろうし、邪魔などしたくないのだ。
怪我をして帰ってきた弟に応急手当して、車で病院に連れていく度に私は思うのだ。晴れの活性で治癒してあげたい。と。
まぁ、一般人の私には炎など出せる筈もないのだから…出来ることをするだけなのである。
…そして数日家に戻らなかった弟は、大怪我をして帰ってきたのである。
◆
黒曜が終わったかと思うと、弟に指輪が届いた。
白い封筒に入っていたそれは…どこか歪な形をしたリングだった。
それを受け取ってから程なくして弟は、部下がいないとダメダメな外人の弟子になった。
まぁ、本人は修行してもらってるなんて思ってはいないだろうが。
弟の師匠・ディーノは、可愛い人だった。
私の弟は全く世話のかからない、よく出来た弟だったが…ディーノは逆に手のかかる弟である。
歳上の男性に失礼だとは思うが、ついつい構ってあげたくなる…本当にそんな人なのである。
そんな性格のディーノと、あの性格の弟。ウマが合うのか?と心配になったが、案外相性が良いようで安心している。
今まで私くらいとしか言い争いをしない弟が、ディーノと口喧嘩をしているのだから。
そうして夜な夜な出歩いていた弟も、夜歩きを止め…ディーノもイタリアへと帰っていった。
帰り際ディーノに、イタリアに遊びに来てくれ。と誘われてしまったし…いずれ弟もイタリアに行くかもしれない。
…今更だがイタリア語をおぼえることにしよう。
◆
いつの間にか弟が謎の箱とハリネズミを所持していた。
あれはきっと…匣だろう。
弟のハリネズミはとても可愛くて、時々触らせてもらっては癒されている。
私もなにか可愛い生き物欲しい…。そう思っていたら枕元に黒光りする箱…というか匣と指輪が転がっていた。
恐る恐る匣と指輪を握りしめ、色々知っていそうな弟に話を聞くと…どうやら未来の私が持っていたものだそうだ。
…ってか、未来の私なにやってんの?
とりあえず、今の私がこの匣が開けれるのかが問題だ。
右手中指にジャストフィットな指輪を見つめながら、気合を指輪に注ぐ感じで気張ると、紫色の炎が思ったより大きな感じで揺らめいている。
驚きながらもその炎を匣に突っ込むと、パカッと開いて何かが飛び出した。
…飛び出してきたのは、ちょっと大きな烏だった。
とても可愛いです。
そうやって癒されていたのも束の間で、弟は数日家を開けた。
未来の後は、継承があった気がする。
詳しくはサッパリ覚えてないが、オッドアイ君にそっくりな人が黒幕だったのは覚えている。
不思議な笑い方をしていたと思うが、全く全然思い出せそうにない。
そうして悩んでいる間に弟は無事に帰ってきた。
弟は負けず嫌いで意地っ張りで…並盛最強なのだけれど、可愛い自慢の弟なのだ。
◆
弟が、小さな強者を連れて帰ってきた。
その子というか、その人は私や弟とそっくりの顔をしていた。
小さなその人を見ていると、弟の幼い日を思い出して…優しい気持ちになれるのだ。
小さな強者・風がやって来て、弟が度々汚れて帰ってくる日があった。
きっとアルコバレーノの秘密を知る戦いに参戦しているのだろう。
物腰柔らかな風と自由気ままな弟。
見た目は風が弟だが、私は気まぐれな弟に手を焼く兄のように見えた。
今まで全く他者と関わらずに生きてきた弟が、いつの間にか色々な人と出会い、触れ合って、成長したのだと…心が暖かくなった。
…この子はもう大丈夫だ。
◆
家を出て随分時間が経った。
私は今イタリアにいて、世話の焼ける子供のような人と暮らしている。
旦那はマフィアのボスだから、大変な事も多いけれど…それでも幸せである。
それに、弟が私達の家に時々顔を見せに来てくれる。
弟はいつものように私を呼ぶのだ。
「来たよ…姉さん」
そして私は笑うのだ。
「いらっしゃい、恭弥」
柔らかな日差しが差し込む石造りの家で、大切な人達と過ごす時間…。
それだけで私は――幸せだ。
私の名前はクコ。雲雀 恭弥の姉である。