Short Story
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…僕の名前は「コイツがどうなってもいいなら、好きにするんだな!」…何?」
ふっ、と目を覚ますと、口が勝手に動いて何か口上を述べようとしていたが、自分以外の声に遮られた。
遮ったのは脂ぎったオッサンで、尚且つ腹立つ表情で笑った…そいつの視線の先には宗三兄様と江雪兄様。
…え?なんで目の前にとうらぶのキャラがいるのっていうか、なんで兄様って思った??
私は確かに兄が居るけど…それはこんな美形じゃなくてもっと残念な男だったはずだけど?なんて思った瞬間、怒濤に記憶が流れ込んできた。
それは、小夜左文字としての記憶で…私は小夜三文字だと理解したと同時に、目の前のオッサンに兄様達が虐げられている事も理解した。
そして瞬時に眼だけで辺りを見回す…どうやらここは密室のようで、今が昼か夜かは分からないが…上に明々と灯る電灯を潰せば、この部屋は真っ暗になると判断した。
うっそり笑いながら暗闇に備えて片目を瞑り、脂がノリノリなオッサンの気を引くべく口を開く。
私とオッサンとの間に、主従関係はないのだから…兄様の敵(かたき)、討ってあげるね?
「…あなたは何がしたいの?」
「あぁ?」
不機嫌そうにコチラを睨み付けてきたオッサンを視界に入れつつ、鞘からゆっくりと刃を出し…天井の電灯に向かって投げつける。すると電灯は甲高い音を立てて砕け散り、あたりは黒に塗りつぶされる。それと同時に瞑っていた目と開けていた目を入れ替え、驚き慌てふためいているオッサンの後ろに素早く回り込み…手元に残っている鞘で思いっきり後頭部に叩込む。
どさり。と音を立ててオッサンが地面に倒れたのを見届け、念のため片足をオッサンの背中に乗せると…ドタバタと足音が聞こえ、勢い良く空いた扉から外の光が差し込んだ。
「どうした!?何が…、お小夜……?」
逆光で見えにくいが、どうやら扉を開け放ったのは歌仙、その人だった。
足元のオッサンが微動だにしないのを確認して、念のためにギュギュッと踵で踏みつけてから、目を見開いて固まっている歌仙に近寄る。
このオッサンに与える罰は、死なんていう生ぬるい方法ではつまらない。もっと、ジワジワと長く痛みを受ければ良い。…ということで通報しよう。
通報するには…こんのすけを使い通報する。と、オッサンが持っているであろう端末?から勝手に通報する。の二択だろう。とりあえず、こんのすけについて聞いてみるか。
「ねぇ、歌仙。こんのすけは何処?」
「え?こんのすけ、かい…?そう言えばここ数ヶ月見てないな…」
まだまだ困惑した表情の歌仙だったけど、ちゃんと返事をしてくれた。
こんのすけは失踪、か。じゃあ、端末かなにかを拝借するしかないね。
「…じゃあ、コイツの部屋を教えてよ」
そう言いながら、逃がさないぜ!と袖をガッシリ鷲掴んだ。もちろん、いまだに歌仙は混乱を極めている。
「主の部屋、かい…?」
「早く」
鷲掴みした袖を引っ張り急かすと、何か考える様子を見せた歌仙だったが、こちらだ。と案内してくれた。
▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
無言で連れてこられた部屋の襖を勢い良く開け放つ。…開ける寸前、歌仙が結界とか言ってた気がするけど、気のせいだろう。
ともかく、オッサンの部屋は思ったより物が少なく…机の上にパソコンと思われる物体が乗っているのが見えた。さすが2200年代…オシャレなパソコンだ。
「お小夜、一体何をするつもりなんだい?」
「これで通報する」
「僕たちにそれは使えませんよ」
「宗三兄様…使えないって、誰か試したの?」
パソコンの前に正座すると、歌仙が私の隣に座り…いつの間にかやって来ていた兄様たちも私の後ろに座り込んで興味深そうにコチラを見ている。
それらを無視して、丸に一本毛が生えている感じのマークをグッと押す。すると、想像通り電源が付き…パスワードなにもなく、ログインに成功した。…大丈夫か、色々と。
謎の不安を感じたとき、押し入れから謎の音が聞こえた。
「私が見ましょう」
全員で押し入れを凝視したと同時に江雪兄様がスッ、と立ち上がり躊躇いもなく押し入れを開けると…こんのすけが転がり落ちてきた。それをキャッチした江雪兄様は、思ったより男らしく掴んで…これが元凶のようですね。としれっと告げた。
江雪兄様に鷲掴まれたこんのすけは、お札だらけの顔を涙で濡らしながらプルプル震えていた。
「こんのすけ…封印されてるね」
「なんていうことを…!」
目を見開いて震えだした歌仙を余所に、こんのすけに貼られたお札を引っぺがす。…毛が何本か犠牲になったが、全て取ることが出来た。…途中、歌仙や兄様たちが、あぁっ!とか、やめ…!とかいっていた気がするが、きっと気のせいだろう。
「ぷはーっ!ありがとうございます、小夜左文字様!!おかげさまで助かりました」
深呼吸を繰り返すこんのすけに、そんなことより通報したいんだけど。そう告げる。
「もちろんでございますよ!この、こんのすけ、通報する寸前で審神者さまに掴まってしまった次第でしたので…。では、さっそく!」
ぴろん。という気の抜ける音と共に宙にパソコンの画面のようなものが浮かび上がったかと思うと、物凄いスピードで文字が並んで…消えた。
「これで、終わるのですね…全てが」
「えぇ、終わるのです」
後ろに立つ兄様たちはどこかホッとしたように呟いているのが聞こえた。
これで兄様たちが無駄に虐げられることもなくなるはずだと、私もそっと息を吐いた。
▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
小夜左文字になった人
何だかとっても復讐したい気分w丁度目の前に兄様たちの敵もいるし、復讐しちゃえ!
Lv1だけど、前世が人だったお陰か動きがスムーズで素早い。
口上どころか、名前を名乗らなかったため…脂ギッシュなオッサン審神者と契約されていないし、主だと認める気はサラサラない。
実は6振目の小夜左文字。
左文字兄's
また小夜を人質に取られるのか、と思ったら予想外の展開に驚きを隠せない。
でも、流石我等自慢の弟。と思っている。
歌仙兼定
オッサン審神者の初期刀。短刀達を盾にわがまま放題な主に、このままじゃ駄目だと一念発起擦る寸前にお小夜がやって来てああなった。
お小夜を盾にされて無理難題をさせられたことは数知れず、何度折れる姿を見てきたことか…。
誰も堕ちることなく、事が済んだことに安堵している。
オッサン審神者
審神者歴数年の脂ののりきったオッサン。少しはげ散らかしている。
弱くて使えない短刀を使い潰し、時には脅しの道具として使ったりしていたが…頭は少々残念。色んな意味で。
こんのすけをネットで調べ、作った呪いのお札で頑張って封印していた。