Short Story
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気がついたら並中生でした。
何の冗談だと何度思ったことでしょうか…でも事実で現実なのです。
前世の記憶が突如戻ってきた、と表現するのが一番しっくりくる感じです。
授業中、突然ハッと思い出し…休み時間中にこれからどうするのか頭を抱えてしまったのも良い思い出です。
どうするもなにもどうもしないのが一番。…たとえ雲雀恭弥と同じクラスで隣の席だったとしても。
雲雀さんはどうせ教室なんぞ来ないだろうし、運の良いこと?に笹川は別のクラス。このまま当たり障りもなく卒業して、しれっと並盛から離れれば万事オッケー!
自分のためにも慎ましやかに校則を破らず、授業も勉強もキッチリしてたのに…これは何の仕打ちですか?
やっと黒曜中問題も済んだと思っていたら、学校がボロボロとか。…いや、少し語弊がある。
正確には、学校はいつも通りだけど…ボンヤリとその向こうのボロボロの壁や、割れた窓が見えるのだ。…えっと、もしかして幻術?
ボンヤリ見える壊れた壁と、それに気がつかない人々。それがどうしても気持ち悪く思えて…昼休み、校舎裏へと逃げ込んだ。
「なんなの、学校ボロボロだし、誰も気がついてないし…気持ち悪っ。
学校休もうかな…」
「…君、もしかして雨草 クコ?
こんな所でなにをしてるの」
誰もいない場所で蹲り、ブツブツと不満を呟いていると、どこかで聞いたことがあるような声が降ってきた。…しかも私の名前を知っているとは、一体誰だろうと驚いて顔を上げると…学ランを肩に羽織った風紀委員長が。
「ふ、風紀委員長!
…何もしてません、サボってません、失礼しまっす!!」
雲雀さんを見た瞬間、勢い良く立ち上がり…脱兎の如く全力で教室に逃げ帰った。
多分大丈夫だと信じたいけど、これ以上目をつけられないためにも…気分が悪くなっても我慢して学校に来よう。と心に決めた。
その後、私の努力の甲斐があったのか雲雀さんに絡まれることもなく、平和な日々を過ごしてたのに…突如未来の記憶を手に入れました。
…まさか私がヴァリアーの霧の部隊に入っているなんて。
どうやら私は偶然、ベル率いる嵐の部隊が並盛に来ている際に幻術を見破ったようで…拉致されて霧の部隊へ…という流れで入隊したようだ。
入隊はしたものの、立場は下っ端。主人公達と会うような機会もなかったし、ほぼ常時視界を広げるゴーグルをつけていたからバレているということもないだろう、多分。
主人公達にはバレないだろうけど、もしかしたらフラン隊長のように直接ヴァリアーにスカウト?されるかもしれない。…まぁ下っ端だったからそんな心配はないと思うけど、やっぱり早急に並盛から離れて安全な生活をしたい。
なんて思っている間に時間は過ぎ、至門中の生徒が並盛中に入ってきて…そして、いつの間にかやって来ていたヴァリアーというか、ルッスーリア隊長にぶつかりました。
曲がり角を曲がって異性とぶつかるとか、どこの少女漫画!?と思ったけれど…思った瞬間、良い笑顔を浮かべた隊長に腕を掴まれ抱え上がられ…拉致されました。
そして連れてこられたのは病院で…途中ルッスーリア隊長の部下が持ってきた、私が未来で愛用していた、いやそれ以上の機能のゴーグルを渋々受け取ったりしたけども。
隊長が、戻ったわよ!と言いながら開け放った病室には、幹部が勢揃いだった。…正確には、-フラン隊長、+マーモン隊長?だけど。
「おかえり、クコ」
ししっ。と唯一見える口元を三日月のように吊り上げたベル隊長を無視して視線をそらす。…だれが元凶なんかと顔を合わせるもんですか。
居心地の悪さを我慢しながら、食べても良いわよ。とルッスーリア隊長に言われたので、ボスの食べ残しの御馳走を摘まんでいると…レヴィ隊長が顔面注射器まみれでふらふらとドアを開けた。
瞬間、ぎゃー!というレヴィではない叫び声が響き渡った。…この声は十代目。
運が良いのか悪いのか、さっきまでいなかったスクアーロ隊長が戻ってきて、一気に部屋が賑やかになって…何故か壁が破壊されて部屋が広くなっていく。
うわぁ。と他人事な感じで見つめていると、視界の端に雲雀さんが見えた。
慌ててゴーグルを装着して、ボスのベッドの後ろに隠れた。…一瞬目が合った気がする。
しばらくして騒動も落ち着いた頃、デーチモが私に気がついて声をかけてきた。…ありがた迷惑だよ!
「そういえば、見たことがない人がいるけど…?」
「あぁ、そいつは…幻術殺しだ。
聞いたことぐらいあるんじゃねぇかぁ?」
私を掴んでデーチモにつきだしたスクアーロ隊長は、人の悪い笑みを浮かべている。…幻術殺しって確かに未来では呼ばれていた気もするけど、それをデーチモが知っているかどうかは別問題だと思う。
「…聞いたことないよ!
でも、並中の制服着てるってことは並中生…?」
「あ、あの…はじめまして、デーチモ…じゃなくて沢田君。
並中3年、雨草 クコです」
ゴーグルを外して名乗らなければならない雰囲気だったので、仕方なく外して名乗る。…物凄く雲雀さんに見られてるけど、気のせいだと思いたい。
思いたいけど、気のせいじゃなかったらしく雲雀さんが近づいてきた。
「これは僕のものだ。あげないよ」
「…えっと?」
まさかの発言にポカーンと雲雀さんを見ると、並盛の物は全て僕のものだ。という俺様発言をくりだして、私の肩を抱き寄せた。
「…ちょっとまてぇ!
そいつはヴァリアー隊員になる運命なんだ、やるわけねぇだろぉ!!」
「知らないね。
そんなの僕には関係ないよ」
何故かスクアーロ隊長と雲雀さんが戦闘態勢になって、それを慌てたデーチモが割って入り止めている。…逃げていいかな?なんて思ったけど、ここには強者が勢揃いしているし、無理な気もする。
「このままじゃ、埒が明かないわね。
…そうだわ、クコちゃんに決めてもらいましょう!」
突然そういって手を打ったのは、ルッスーリア隊長で…で、どっちにするの?と笑顔で迫られる。
まず、ヴァリアー。暗殺部隊で、超過酷な任務も多く…大変だってことは熟知してる。
もうひとつが全く意味が分からないんだけど、雲雀さん。これはデーチモの部下になるって事なのか、それとも雲雀さんの部下になるって事なのか、単に並盛市民も俺の物。的なヤツなのか…。
正直、どっちも微妙なんだけど…イタリアより日本にいたいので、雲雀さんにしよう!そう決意して…トンファーを持ったままの雲雀さんの右手首を掴んで高く上げる。
「こっちにします!」
「…じゃ、もらってくよ」
私の宣言?に一瞬驚いた表情をした雲雀さんだったが、薄く笑って逆に私の腕を取って引き寄せて…抱え上げた。
まさかの展開に驚いていると、デーチモがヒバリさん何やってんのー!と私気持ちを代弁するように叫んでくれたが、煩い。と一蹴されている。
「…あの、雲雀さん?」
「君は僕を選んだ。
…だから君は僕のものだ、文句なんて言わせない」
私を抱えたまま歩き出した雲雀さんに勇気を振り絞り、声をかけてみると…私物発言をされた。
でも、そういった雲雀さんの耳が赤くて。…え、もしかして?いやいや、そんな馬鹿な。と、1人頭を振っていると…
「君には特別に名前で呼ばせてあげる」
顔を赤く染めた雲雀さんが、私から顔を背けながらそんなことを言った。…雲雀さんの特別になるのも、悪くないかもしれない。