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紅イ桜ノ散ル頃ニ

部屋に連れ戻されて数時間経っても隣の部屋からの騒音は止まなかった

『雛姫はどこにいるのか教えてください!雛姫がいないと!はやく教えてください!』

「雛姫…」

聞いたことのある名前

トントンとドアがノックされ、看護婦が二人分の食事を持って入ってきた

看護婦『食事を持ってきました、私と食べましょう』

看護婦は窓際の椅子に座っていた私の前のテーブルに食事を起き向かいの椅子に座った

看護婦『なにか思い出されましたか?』

「姫雛って名前、聞いた事あります」

看護婦は目を見開き聞き直した

看護婦『本当ですか!?』

「えぇ本当です、あと隣の人の声も聞いた事ある気がします」

看護婦『やはり貴女は天才です!明後日とはいわずきっと明日には全て思い出せます!』

看護婦はササッとchartに書き医者を呼びに行った

数分後複数の看護婦と医者を連れて帰ってきた

医者『本当に姫雛という名前と隣の声に覚えがあるのだね!?』

「はい、でも詳しい事は覚えてません…聞き覚えがあるだけです」

医者『それでも貴女はすごい!こんなにはやく記憶の欠片が出てくるだなんて!』

医者も看護婦もあまりに褒めるものだからもっと記憶の欠片を思い出そうと思った

「隣の人とは会えないのですか」

医者『記憶を全て回復する事が出来ましたら会えますよ』

「では姿を一目見るだけでいいのです、きっと見ることができたら記憶の欠片が出てきます」

医者と看護婦は長く話し合ったあと

医者『絶対に相手に気付かれてはいけません遠くから見るのなら許可しましょう』

と言った

遠くからだとしても見れるに越したことはない

「わかりました」


その日の夜11時、向かいの病棟に看護婦の監視の元向かった

向かいの病棟の4階の窓から双眼鏡で隣の部屋を覗いた

暴れて乱れた茶色の髪、泣き腫らした切れ長の一重瞼、少し笑みを含んだ唇、全て知っていた

「看護婦さん、私、あの人知ってます、写真で見たからじゃなくて…」

看護婦『嗚呼本当に、本当に貴女はすごい!』

看護婦は泣きながら私を強く抱き締めた

甘い香りに包まれ、少し心地が良かった

「看護婦さん、私もっと近くで見たい」

看護婦『他の看護婦や医者には内緒ですよ、貴女の為なら私頑張ります!』

「ありがとう」

看護婦『私の名前、雪花っていうんです』

看護婦『雪花って呼んでください』

頬を赤らめる看護婦に好感を覚えた気がする

12時に隣の部屋に行こうということで、12時になるまで部屋に戻り二人で話した

雪花ちゃんは19才だそうで、肩程の髪を二つに分け三つ編みしている

私の担当看護婦で、昔から私を知っていたそう

私の記憶に雪花ちゃんはいるのだろうか

雪花『このリボン、貴女がくれたんですよ』

ポケットから赤いリボンを取り出して嬉しそうに言った

「覚えてないけど、そんなに喜んでくれてるのなら嬉しい」

雪花ちゃんは大切そうにリボンを握った
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