このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

紅イ桜ノ散ル頃ニ

此処は、何処だろう

知らない真っ白な部屋

何故私は此処にいるの?

辺りを見渡しても此処がどこだかわからない

戸惑い考えているとトントンとドアがノックされ看護婦のような人が入ってきた

看護婦『お目覚めになられたのですね、此処が何処だかわかりますか?』

「いいえ、全くわかりません」

看護婦『では、御自分の御名前は…?』

名前?私の…名前…

「……ごめんなさい、わかりません」

看護婦は私の答えを聞くと優しく微笑んでくれた

看護婦『一時的に記憶が混乱してるのでしょう』

看護婦『でもきっと明後日にはよくなっていると思います』

看護婦が出て行ってからも考えた

私の名前は?私は誰?

なにも、思い出せない

ぐるぐると何時間も考えて考えて考えて…

それでも思い出せない

そこでまたコンコンとドアがノックされ先程の看護婦と医者が入ってきた

医者『御自分の御名前は思い出せましたか?』

「思い出せません、教えてください、私の名前」

看護婦『貴女の御名前は…』

医者『まて、自分で思い出さなければ意味が無いだろう?』

いったいこの医者は何を言っているのだろう

’’自分で’’思い出さなければ意味が無いだなんて

「どういう事ですか?はやく教えてください私の名前、私は誰なんですか?如何して自分で思い出さなければ意味が無いのですか?それに如何して私が…」

看護婦『落ち着いてください』

看護婦『大丈夫ですから、明後日にはきっと全部思い出せます』

「なにが大丈夫なの?如何してそんなに平気でいられるの?」

医者『…では、少しヒントをあげましょうか』

そういうと医者は一枚の写真を取り出した

その写真には恋人同士であろう男女が写っていた

医者『見覚えはありませんか?』

これは…

「あります、でも、誰だかはわからない」

医者『この写真はお返しいたしますので、よく見て思い出してください』

’’お返しいたします’’つまり、これは私の持っていた写真?

医者『鏡もお渡ししますね、この鏡で御自分の顔を映してみてください』

言われたとおりの渡された鏡で顔を映してみた

「あ…」

鏡に映った顔は写真の女の子と同じだった

この女の子は私?

「あの、この女の子って私ですか?」

医者『気付きましたか、そうですよ、じゃああ隣にいるのは誰だかわかりますか?』

やっぱり、私なんだ

「隣にいる人は今何してるんですか」

私の質問には全て答えていた医者も黙ったまま俯いた

何か、言えない事情でもあるのだろか

「ねぇなんで答えてくれないんですか?」

なかなか答えない医者にイラつき聞き直した

医者『覚えてないんですか』

「覚えてません」

医者はchartのような紙に何かを書いて出て行った

看護婦『本当に、覚えてないんですね?』

「覚えてないです」

看護婦も部屋を出て行った

いったい、何なのだろう

そして私の名前は…?

この人だって覚えていない

わからない事が多すぎる

少しでも情報を集めようと窓を開け外を見た

大きな紅い桜の木が見えた

綺麗だとうっとり見つめていると隣の部屋から大きな声が聞こえた

???『雛姫は何処ですか!?雛姫は!ねぇ何処にいるんですか!!』

看護婦『落ち着いてください!落ち着いてください!』

かなり暴れているのか花瓶の割れる音や本の落ちるような音がした

気になって見に行こうとドアを開けた

廊下には何十人もの看護婦がいた

『雛姫は!雛姫はどこに!』

部屋にいた時よりもはっきりと聞こえた

そして、聞いた事のあるような声、名前

思い出しかけた時に看護婦に気付かれ部屋に連れ戻された

思い出しかけていた記憶の欠片はサイダーの泡のようにパチンと消えた
1/2ページ
スキ