鰐の話

………………………………………

さて、3日以上経ったが未だクロコダイルが屋敷に帰ってくる気配は無い。
まぁ前だって下手をすれば1ヶ月以上帰って来ない事もあったし、別に珍しい事でもないだろう。新聞紙面に不穏なニュースも出ていないし…


ロッサ『…フシュー!』∑バクッ!…∑ザパーン…
ダズ「(…よし、今日も全部キレイに食べたな…)」

今日も温室でバナナワニに餌を与えているダズ。

ブツ切りにされた新鮮な生魚が主な餌だが、たまに様子を見ながら、鳥肉や馬肉なんかも食べさせている。
外は冬の冷たい北風が吹いているが、この温室の中は少し暑い程。
今日もロッサは元気だ。バケツ5杯分の生魚をペロリと平らげてしまった。
主のクロコダイルが居なくても、特に食欲が落ちたり寂しがる様子は無い。爬虫類とはこんなものなのだろうか?


ダズ「(…子猫にもそろそろ離乳食だな)」ゴシゴシ…

生臭くなったバケツは丁寧に洗い清める…
万一バケツに汚れやバイ菌が残っていてロッサに腹痛でも起こされたら、それこそ診てくれる獣医等居ないのだ。

ワニの次は、子猫の餌に思案しているダズ。
獣医に子猫を診て貰った時に、ミルクの与え方やこれからの餌についても色々聞いてきたのだ。
…それにしても、ダズはいつから殺し屋から動物の飼育員になったのだろう。

…………………………………

ダズ「…ほら、どうだ?」
子猫『…ピャ…??……ピャア♪…』ハムハム…!

ダズ「!…よし、食べるな♪」

キャットフードを猫用ミルクでふやかして、なめらかなピューレ状にした簡単な離乳食だが、子猫は嬉しそうに食べ始めた。こちらも中々食欲旺盛な様だ。
体が小さく風邪もひいたりしたが、しっかりと餌を食べれる様になればしめたものだ。


子猫『ケフー♪』←満腹
ダズ「…よしよし、大分食べれたな。」ナデナデ…♪

子猫『ピャー…♪』スリスリ…
ダズ「っ!///…(…ιカワイイ…!)」ジーン…

ダズの大きな手を目掛けて、嬉しそうに目一杯甘えて擦り寄る黒い子猫。
まさか親と思っているのだろうか?…子猫の毛は柔らかく、触り心地が良い…♪


子猫『………プスス…。。。』
ダズ「ιもう寝た…やっぱりまだ子猫だな。」ソ…

満腹のせいか、子猫はあっと言う間にダズの手の中で眠ってしまった…
またそっと段ボール箱の中に戻してやる。
しかし、動き回るのも段々と活発になってきた。そろそろ小さな箱の中では限界かもしれない。そうとなれば…


ダズ「(……)…ケージでも作るか。」ヨシ…!

幸い屋敷の修繕用に、大工道具や板角材類もあれこれと揃っている。
さて、子猫が自由に動き回れて、且つその可愛い様子もしっかり観察出来るケージを作るにはどうすれば…?♪


血なまぐさい事件も、ヒリつく様な戦いからも無縁な平和なこの島にやって来た…
心身も鈍ってしまうのではと思っていたが、蓋を開けてみれば、毎日の掃除洗濯料理にクロコダイルの世話、バナナワニの世話に子猫の世話…正直溜息をつく暇も無い程とは。

ダズは、かつて無い程に心身をフル回転させていた…



8/8ページ
スキ