黄金と白煙


テゾーロ「(………)」

世界5つ星のホテル・レオーロの最上階にある眺めの良い執務室から、眼下の海を見下ろしているテゾーロ。

…ああ、軍艦が彼方へ遠退いてゆく。

スモーカー中将ともこれきりなんだろうか…?もっと話をしたかったな…

テゾ「(……話…
…何を話すんだ?…『私の過去』でも…?…☆)」


…多分無理だ…
それを打ち明けた所で何を得る事があるのか…
それに、最初から私をいぶかしんで警戒していたスモーカーが話なんて聞いてくれるものか。


あの人に会ってから…あの眼差しに見詰められてから、ずっと何かがソワソワしている。
この感情の名は…もどかしい?いや…辛い…寂しい…恋しい?…自分にもよく分からない。

…それにしても、私は今どうしてあんな武骨な海兵に惹かれているんだろう。ファーストコンタクトから最悪だったというのに。
スモーカー中将は、好みとは全然違うタイプの人じゃないか。

私は、遊び慣れていて話が上手で、センスがあって上品な人が好みだ。…そして何より『あっちの方』が上手なら尚更最高で…♪

とにかく、今まで遊びでお付き合いした人で『ワイルドで逞しい』タイプは、掃いて捨てる程居た筈だが、スモーカー中将はどこか違う…あの人には、粗野な言動の中にも、優しさと熱さを秘めた心がある。

…出来る事なら、あの熱い眼差しで見詰められながら、この冷たく燻った私の心の感情を全部吐き出してしまいたい…そうすれば、きっとこの悩ましい感情の名にもようやく答えが……


テゾ「(……)…でも…私の『心』の行方なんて……
…あの人には何の関係も無いよな……☆」ポツリ


虚しい……


ゴソモソ…
エゾホル「…テゾーロさま、今何か言ったモキャ~?☆」スポン

執務室の隅にある飼育小屋からエゾホルが顔を出した。片手に赤丸印を付けた競馬新聞を持っている…

テゾ「…いや、別に?…ただの独り言だよ☆」

エゾホル「そっスか☆
…んじゃ、俺そろそろナイター競馬しに行ってくるモキャね~☆」イソイソ♪

テゾ「ιそれは良いけど…何時に戻るの?
…私疲れたから早めに休みたいんだけど…☆」

エゾホル「うーん?…今日はじっくり最終レースまで観たいから遅くなるかもな~☆…」
テゾ「Σιええー?早く帰ってきてよー!私眠れないよ~!☆」

エゾホル「ιいや…赤ん坊じゃあるまいに、俺の代わりに抱っこするものなんて他にぬいぐるみでも良いでしょうが~☆」(・ω・`)モウ…
テゾ「ぬいぐるみは温かくないもん…☆ι」

エゾホル「ぬいぐるみに湯湯婆ゆたんぽでも突っ込んどけや…ι
Σおっとぉ!早く行かないと第1レース出走しちゃうモキャ!パドックから見たいのに…!ι…んじゃ、行ってきま~す!☆」ヒュン!


テゾ「…ιも~…本当競馬に目が無いんだから…取り敢えず、お風呂入ろっと…☆…」ノロノロ…


モフモフのエゾホルをベッドの中で眠る直前まで抱っこする習慣がついてしまったテゾーロ。
感情がどこかささくれていると感じた時は、特に必要なのに。

……もし抱っこしないと……

…ιとにかく、ぬるい風呂にゆっくり浸かったら、多少はリラックス出来るかも…

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