白煙と黄金

ババババ…

エゾホル「(……☆ι)」プラーン…
スモーカー「…………」

一路海上を疾走するビローアバイク…
しっかりとエゾホルを掴みつつ、身体の一部は煙に変え、器用に運転するスモーカー。

ンギーッ!#
エゾホル「…Σ#何でシッポ持ったままモキャ!?俺は逃げねぇモキャよッ!☆」ガァ!

スモ「フン…隙見て脱走するかもしれねぇだろ。」
エゾホル「(Σギクッι)…ιそ、そんな事はしねぇモキャ!…ιそれに、持つにしたってもう少しマシな持ち方があるでしょッ!?優しく抱っこするとか~!☆」

スモ「(……)…こうか?」ヒョイ…(首根っこ)

エゾホル「…Σιそれ抱っこ違うッ!
そこで持たれたら何か屈辱感が凄いんスけどー!?☆」プラーン…

首根っこを持たれるのは、動物がまだ歩けない我が子を運ぶ時の手段…

スモ「…ιいちいちうるっせぇんだよ。
…おら、もうグラン・テゾーロに着くぞ?正面口から入れば良いのか?」

エゾホル「Σιあ~っ!ちょっと待つモキャ!☆
テゾーロさまの部屋に一番近い『秘密の入り口』があるから、そっちの方に回って欲しいモキャ☆…船正面から向かって左側に~…船とギガントタートルの間に入ってくモキャよ!☆」

スモ「…?ι」…グイ……ババババ…


ιそんな大事な入り口を他人にホイホイ教えて良いものなのか?…まぁいちいち聞くのも面倒だ。とっととエゾホルをテゾーロの元に置いて帰ろう。
スモーカーはハンドルを切り、ギガントタートルが生み出す大波を器用に越えて船の側面に回り込んでゆく。


エゾホル「…ここら辺でストップ~!
…はい、ここらでおいとまさせてもらうモキャ☆んじゃ、ここまで送っもらって悪かったモキャね~!気を付けて帰ってね~?♪」バイバーイ♪

スモ「(……)…ふぅん…あそこが『入り口』か…?」グイ…


…スモーカー達が停泊した辺りから上に向かって、足掛かりになりそうな小さな窪みが続いている。そして、その終点に1メーター四方で微妙に壁の色が違う場所があった。あの壁が秘密の入り口なのだろう。

エゾホル「ιあの…ちょっと…??
…何で離してくれないモキャっ?☆」ギュムゥ…
スモ「(……)…遠慮するな。ちゃんとテゾーロに直に引き渡してやるよ。…逃げねぇようにな。」ギロ

エゾホル「………ΣιⅢアア゛ーッ!離せ~!」ジタバタ…!

スモ「ιこの期に及んで暴れんじゃねぇ!…しっかりテゾーロに説教して貰え…」モクモク…
エゾホル「Σι#鬼ーッッ!!」ギィー!#

……………………………………

モクモク…
スモ「ほう?こりゃ中々便利だな…」

エゾホル「ここは緊急時の避難通路モキャ~☆
…テゾーロさまの黄金も使われてるから、もし悪者が侵入しても、速やかに攻撃できて排除可能で便利モキャよ☆
…ここで攻撃されないって事は、俺達は大丈夫認定されてるモキャね~☆」

スモ「(…ι俺もなのか?)」

煙に姿を変えた状態で、狭く曲がりくねった長い通路を一気に進む…

……………………………

…ズズ……ゴトン…!…

エゾホル「…ιああ~…到着しちゃった…☆Ⅲ」
スモ「もう諦めろ…」プカァ…

行き止まりに辿り着いた、さてどうしたものかと思った時、ゆっくりと目の前の壁が左右に割れる…
そこは、黄金で彩られた荘厳で派手やかな部屋だった。この部屋の主の権力を象徴する様な美しい調度品がセンス良く並んでいる。
…部屋の中には大きな天蓋付きのベットがあった。上の布団は乱れたままで、人の姿は無い。だが、そのベットの傍らには……


テゾーロ「……ιっ……Ⅲ」ガタガタ…


スモ「…Σιどうしたッ!?」
エゾホル「Σιモキャ?テゾーロさまっ!?☆」

何故かベットではなく、床の上で縮こまる様に蹲るテゾーロの姿があった。ナイトガウン姿で、自身を強く必死に抱き締め震えている。きつく目を閉じ、顔色は悪い…


テゾ「…ιⅢ怖い……助けて…!…」ガタガタ…

エゾホル「ιⅢオロオロ…大丈夫!?テゾーロさまっ!☆…ちょっとスモやん、テゾーロさま見てて!今オシボリと水持ってくるモキャ!☆ι」ペモペモ…!
スモ「…Σιああ?…おい!…ι見てろって……」

テゾーロの面倒を一時スモーカーに任せ、エゾホルは慌てて寝室から出て行った。


テゾ「……ιⅢ……誰か…」
スモ「…ιおい…しっかりしろ…」ス


ろくに声も届かない様だ。仕方無い…
テゾーロの手を、上からそっと包み握る。
冷たい手に、スモーカーの熱い体温が伝わってゆく…

スモ「(……)…ι変な男に絡まれていたせいか…?…」

そうだとしても、この怯え方は異常だ。

だが、この異常なトラウマの様子は、どこかスモーカーは見覚えがあった。
…それは、天竜人に棄てられた奴隷の、今際いまわきわの時の姿だった。
痩せ細るまでこき使われ、ろくな世話もされず…極限の中で弱り果てたあの無念そうな最後の姿だ…

どうせ奴隷は、少しの粗相が天竜人の逆鱗に触れ、その場で理不尽に殺されるか、こき使われた挙げ句に野垂れ死にするか…
人間以下…いや、虫ケラかゴミ並みの扱いだ。


…あのしょっぴいた男の話は本当だろうか。
テゾーロが、あの天竜人の奴隷であったと…


テゾ「…ιⅢ死にたく……ない……」スル…
スモ「!…」

テゾーロのナイトガウンがするりとはだけ、その白い背中が露になる。
…そこには、奴隷の印である『天駆ける竜の蹄』は無かった。だが、肩から背中が痛々しい大きな星型のケロイドに覆われていた。
…まさか…これは、印を消した跡なのか…?

テゾ「ιⅢっ…怖い……」ガタガタ…

スモ「(……)怖くはない…安心しろ…俺が居る。」ギュッ…
テゾ「………ι…え…Ⅲ…」??…

スモ「…落ち着くんだテゾーロ…
何も怖いものはない……お前をおびやかすものはなにも居ないから……」ギュウ…
テゾ「………??…」ポヤ…

スモ「(…力が抜けてきたな…よし……)
…怖いならずっと付いていてやる…安心して寝ろ……」ポンポン…

テゾ「……。。。」ウト……スゥ…
スモ「…よしよし……」ポンポン…

しっかりと抱き締めると、あれだけ強張っていたテゾーロの身体から、徐々に力が抜けてゆく。優しく背中を叩いてやると、その内テゾーロからは安らかな寝息が聴こえ始めた…

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