黄金と白煙


爽やかな青空をバックに、燦然さんぜんと輝くどこまでも続く黄金の街並み…
ここは、まるで島程の大きさを誇るカジノ船、グラン・テゾーロ。
更にその最奥にある執務室では…


タナカ「…テゾーロ様?こちらが今月グラン・テゾーロ内で起きた主な問題や事件の内容でございます。どうぞ目をお通し下さい…」ドサリ

テゾーロ「…ああ、ご苦労☆」

分厚いファイル数冊がテゾーロの前に置かれた。
内容は、客同士の喧嘩や窃盗…カジノでのイカサマ、施設等破壊行為…それらの発生から解決に至る迄の経緯をこと細かく纏めたものだ。
ここグラン・テゾーロは、世界政府にも認められた自由な独立国家。あらゆる種族、市民、海賊海軍貴族…来るもの拒まずのこの国には、時に「善からぬ者達」も来場してしまう…
パラパラとページを捲りながら目を通すテゾーロ。時折その内容に捲る手を停め、微かに眉間に皺を寄せる。


テゾーロ「(……)…うーん?…お客様への警備サービスはしっかりしているけど、カジノ従業員達への迷惑行為が頻発しているみたいだなぁ☆ι」パラリ…

タナカ「ιええ。勝負に負けたらディーラーに絡んできたり、案内所の受付に理不尽な文句を言ったり…特に今月は、ショーキャスト達への怪しからぬ行為が横行しておりまして…」

ピク
テゾーロ「……それはつまり?☆」
タナカ「…ι許可を得ずに盗撮したり、ショー終わりのダンサーにしつこく付きまとったり…酷い時には痴漢行為もあるという報告が……ι我々も映像を見張ったり、見廻り警備も強化しているのですが~…」

テゾーロ「全く…一番下衆で卑劣な行為だな☆
映像電伝虫の設置を増やせ。そして、もしそんな犯罪者を捕えたら、躊躇せずその場で『落とせ』…いいな?☆」

タナカ「はい、了解いたしました。」ビシ☆

独立国家のグラン・テゾーロには、国内の犯罪に対して独自の罰則が設けられている。目に余る行為を犯した者は船底にある『黄金の煉獄』に落とされるらしいのだが…


テゾーロ「(……)ふむ…まだ足りないかなぁ?☆
よし、女性キャストや希望者には小型防犯ブザーを配布しよう!☆あとは、来場者への警告用CMや街頭掲示板も作らないとね☆」

タナカ「では、その様にも手配いたしますね。」テキパキ

テゾーロ「(……)…でもブザーを鳴らしたとしても、タナカみたいな能力者じゃないとそこまで早く現場に駆け付けられないよなぁ…☆」
タナカ「ιだからと言って警備員を大勢配置し過ぎても、華やかなカジノ内がちょっと物々しくなりますしねぇ…」
テゾーロ「ιやっぱりそうだよね~☆…」ウーン…

ゴソモソ…
エゾホル「いやいや…一番大事な事は、被害に遇う前にそういうヤバい輩からさっさと逃げる事でしょ?☆
警備員が来るのを悠長に待ってるなんて、危ないモキャよ~☆ι」スポン!

執務室の片隅にある小屋の中からエゾホルが顔を出した。2人の話を中で聴いていた様だ…

テゾーロ「ιえ?でもそんな早く逃げるって言っても…
急に男に腕とか掴まれたり、抱き付かれでもしたら、怖くて咄嗟になんて逃げられないかも~…☆」エー?ι
タナカ「ιそうですねえ…それが、凶暴な海賊やギャングだったら余計に怖いですし~…」ネェ…ι

エゾホル「…ι何でやられる側の発言?
ιも~、しょうがねぇモキャね~!☆咄嗟の時の護身術とか教えてくれるヒトは、この船に乗ってないモキャ~?☆」
テゾーロ「ιじゃあエゾホルは護身術知ってるの?☆」

エゾホル「(……)えーと…先ずはキ●タマを潰してですね…☆」
テゾーロ「ΣιⅢどうして急所攻撃前提なのっ!?☆」

タナカ「…ιあの…テゾーロ様?
一度きちんとした講師の方をお呼びして、護身術の講習会を開催する…というのはどうでしょうか?」

テゾーロ「!…それだな…!☆♪」パチン☆

エゾホル「俺の急所攻撃講座はダメモキャ…?☆」エー?
タナカ「ιⅢ有効かもしれませんが、危険ですし下品なので却下です…」

…………………………………………
……………………

ここは、グラン・テゾーロから少し離れた洋上…

甲板上の一部に、葉巻の煙がもくもくと留まり続けている。強い海風が吹き抜ける筈の甲板に何故?


隊員1「Σ見えてきたぜぇ?!スモや~ん!♪」
隊員2「すッげぇな~!全部金ピカだ!♪」
隊員3「///なぁなぁスモやーん!ちょっとはカジノに遊びに行っても良いんだよなぁ!?♪」ワクワク♪


スモーカー「Σ浮かれてんじゃねぇ!バカ野郎ッッ!!…」
一堂『ΣιⅢひぃぃ~~ッ!?』ビクゥゥ!ι

甲板上にビリビリと響くスモーカーの雷…
あれだけ野猿の様に騒がしかった隊員達は、皆水を打った様に静まり返った。


スモ「……よく聞けテメェら…!
あの国の国王…ギルド・テゾーロは、得体の知れねぇ『元海賊』…しかも『能力者』なんだ。
それに、グラン・テゾーロは世界政府公認の独立国…
国内では、俺達海軍の権限なんざ一切効かねぇ…!
…俺たちゃわざわざそんな危険な国に行かにゃならねぇんだぞ…?」

たしぎ「……ιですけど、そんな国王から我々海軍に直々の『お願い』が来るなんて…
一体何事なんでしょうか、スモーカーさん…」

スモ「(……)……知らねぇよ……」…モクモク…


隊員1「Σいや、そんなん決まってんだろ、たしぎチャン!♪きっと王様から俺達への粋なプレゼントだぜ~!?♪」
隊員2「///カジノで遊び放題だ~!イェーイ♪」
たしぎ「Σそんな訳無いでしょう!?皆はしゃがないで下さいっ!」
隊員3「たしぎちゃんも一緒にポーカーやろうな♡わからねぇなら俺達が優しく教えてあげっからさぁ!♪」
たしぎ「Σι私はそんな事はしませんっ!ι」


スモ「…ιハァ…」

…先が思いやられる…

しかしそんな思いを余所に、一行を乗せた軍艦は、グラン・テゾーロの大きな港への入口に、飲み込まれる様に消えていった…

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