記憶(骸夢)
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「僕が死ぬ筈だったのに!」
そう、僕がこの姿になる筈だった。
なのに。
それなのに。
『おいで、骸。』
「……」
彼女に近付くと、彼女は僕を抱きしめた。
いつもより、強く。
『生きていてくれて、ありがとう。』
あぁ、
あぁ、
何を言っているんだ彼女は。
生かしたのは貴女なのに。
「ナマエは…僕の実験内容を知っていたんですね…っ」
『たまたま、聞いちゃってね。でも私が受ける筈だった実験も…危なかったみたいだね。』
「いいえ。この実験は、成功です。」
右目のガーゼを剥がした。
一瞬驚いた表情のナマエだったが、その後は優しく笑う。
『綺麗…』
「きっと貴女の方が似合った。」
『ふふ、そんなこと…ないよ…』
彼女の体が、どんどん冷たくなっていく。
目も虚ろだ。
「ナマエ!死なないで!!」
『最後に、骸との約束…守れて……良かっ……た』
約束。
それは、さっき僕が言った…
“また、抱きしめてください。”
「っ、違う!僕はこれからも、ずっと、僕たちが貴女のもとへ帰る度に…ずっと…そういう意味で……」
『そっ…か』
「約束を破らないで!!ずっと、ずっと僕たちと一緒に…っ!!」
『骸』
僕の右目にナマエが手を伸ばすと、僕の涙を指で拭いてくれた。
『生きて』
―どさっ―
「…ナマエ?」
力無く落ちたナマエの腕。
彼女は死んだのだ。
どんなに名前を呼んでも、抱きしめても、もう笑ってはくれない。
僕の頬にも、
服にも、
体にも、
床にも、
沢山沢山ナマエの血がついている。
血まみれだ。
「ナマエ…僕は、生きます。これからも。」
そして、潰してやる。
僕たちをこんなにも苦しめたマフィア共を。
マフィアさえ居なければ、貴女はこんな死を迎える事は無かった。
「精一杯生きて、僕が死んだら…また、抱きしめてください。」
彼女は僕たちの光だった。
いつも暖かくて、僕たちよりもお姉さんで。
貴女が居たから、この汚い世界でも生きていけた。
貴女が授かる筈だったこの力。
この力で、僕は必ず…
―――…
「骸様?」
「…おや、どうしました?クローム。」
「何だか…悲しそうだったから…」
今は情けなくも、脱獄に失敗した僕はクロームという少女意識の中で会話する程度の事しかできない。
「今の僕の力が、過去にもあれば良かったんですけどねぇ…」
「?」
クロームのように、彼女を幻覚で助ける事も出来たのに。
あの時はこの目の力も分からなかった。
でももし使えても、彼女が拒んだだろう。
「クローム。」
「はい」
「少し1人にして下さい。」
「…はい。」
意識の中から消えたクローム。
最近は1人だからか、彼女の事をよく思い出す。
「ナマエ…」
僕は今、後悔してない。
それくらい精一杯生きています。
もし今死んでも、僕は約束を守りましたよね?
だから、早く迎えに来て。
(早く、また抱きしめて下さい。)